ナタリー PowerPush - 高橋優
新たな“原点”がここに「僕らの平成ロックンロール(2)」
僕はやっぱり悪い人間じゃないと思うんです
──大人の事情にうまく折り合いをつけて進んで行くこともできるし、決してそれが間違いとも言い切れないですよね。でもそうはなれない?
なりたくない。やりたいことをやっていたい。ありがたいことに、今はやらせてもらっているし、何がやりたいかちゃんとわかってる。それを追求することがいろいろな人たちの期待を裏切ることになったとしても、そこは譲れないです。「高橋は何したいのかわからなくなってきたな」って言う人もいると思います。でも僕はそこにちゃんと背いて、喜んでくれる人、面白がってくれる人たちに正直な気持ちを伝えたいって、改めて感じたんです。
──それで冒頭におっしゃっていた「初心を思い出したい」ってことなんですね。
はい、より自分らしくいようって気持ちです。1曲目を「ボーリング」にしたのも、そういう自分の意図が一番表れていると思ったからなんです。
──「面倒臭いけど生きていこう」とは言わず、「面倒臭ぇ!」でいいと。
そう、そのまんま。無理しない自分っていうか。
──ただ自分の気持ちを投げてみたいというか、素直に伝えてみたい?
伝えたいわけでもないのかなと思います。僕は人間関係の根底にあるのは、いろんな共通項だと思うんです。みんな喉が渇いたら水を飲みたいし、サヨナラって言われたら悲しいじゃないですか。そこに目を向けている部分はいつもあって。今回は超個人的なものを作ったけど、その中でもつながって通じ合える言葉があったらいいなって願いはあります。だからあえて、曲を作る意味を考えないでみたりとか。
──今までは逆に、意味をすごく考えていた?
考えなきゃいけないと思ってたんです。そのへんの力が抜けましたね。例えばシングルの「陽はまた昇る」は主題歌になる映画や原作に触れて、そのテーマに向かって考え抜いて完成させたけど、それとは真逆。今回はただの衝動で、答えを見つけようとかメッセージを届けたいではなくて、わかんないものはわかんないでいいやって。だから思い切って「I LOVE YOU」って歌うこともできたし。
──今まで使ってなかったですよね、「I LOVE YOU」って言葉。
好きじゃなかったんですよ。偏見なんだけど、男性ソロシンガーがラブソング歌うのなんて埃かぶってる気がして恥ずかしかった。でも僕から歩み寄るって意味では、誰もが歌っているラブソングをあえて避ける必要もないのかなと。なんか、そういうところあるんですよね。
──ちょっとひねくれているというか、世間と逆行したいみたいな?
mixiとかTwitterとか流行りものにはみんな飛びついて始めるけど、僕は「何がいいの?」って思っちゃう人で。でももう、そういうのやめてみようかなって。「想像しよう」って言葉もそうだし、「君ならどう思う?」 もそうで、誰もが使っている言葉に向き合ってみて、自分なりに歌ってみようかなと。
──でも「I LOVE YOU」は本当にいい歌で、結婚式の定番ソングになればいいのにって思いましたよ。
結婚式で歌ってもらえたら最高ですよね。一生思い出に残るし。じゃあ「てんとう虫のサンバ」を目指してがんばります(笑)。まだそこまで普遍的な愛は歌えていない気もするけど、向かい合っていたいですね。僕、カップル見るのが好きだし。
──そうなんですか?
手をつないで歩いてる人が大好きなんですよ。「なんだよアイツらイチャつきやがって!」みたいな妬みはないから、僕はやっぱり悪い人間じゃないと思うんです。
──わかってますよ!(笑)
カップルを見てると温かい気持ちになって応援したくなるし、彼らがカラオケで歌える曲も作りたい。子供も好きだから、家族で歌える曲も作りたい。牙剥いて怒ってるだけじゃないんですよ。
「なんだこいつ?」って疑問形で見られていたい
──ジャケットを“自我像”にしたのはなぜだったんですか?
これはプロデューサーの箭内さんの意見ですね。アルバムの制作前に長い時間話し合ったことがあって、もっとヒリヒリしたもの、作り込まれていないものがやりたいよねって意見が一致したんです。……今の話で思い出したんですけど、写真撮ってもいいですか? さっき箭内さんから連絡があって、「発明品」のPVを作るから、今日1日たくさん写真を撮っておけって言われたんです。
──全然いいですよ!
(iPhoneを取り出してスタッフやカメラマンの写真を撮り始める)……よし、いっぱい撮れました。ありがとうございます。これ、PVで使いますね。
──こちらこそありがとうございます。なんか手作り感あって楽しそうですね。
楽しいですね! 元々自主制作をやっていたし、そのほうがより高橋優らしいよねと。せっかく大手の事務所に入れてもらって、メジャーのレコード会社からリリースさせてもらっているのに「自主制作のように」なんて、すげえ恩知らずな話なんですけどね。じゃあ1人でやってろって言われちゃいますよ。
──冒頭の話にもつながりますけど、やっぱりその頃の感覚を取り戻したいというのがあって、だからこそタイトルもインディーズ時代のものに「2」を付けたと。
そうですね。どんなに恩知らずでも、高橋優らしさみたいなものは出していかないと危険だと思ったんですよ。「○○さんのようになりたい」ってみんなよく言うけど、僕はずっと「なんだこいつ?」って疑問形で見られていたい。そうじゃないとダメだっていう危機感がすごくある。だから自我像を頼まれたときも、鏡を見て書くのは普通だから、あえて何も見ないで書いたんです。そうすれば、「こういう自分になりたい」って気持ちも「ここが嫌い」って思いも絵に全部出るかなと思って。
- ミニアルバム「僕らの平成ロックンロール(2)」 / 2012年12月26日発売 / unBORDE
- 「僕らの平成ロックンロール(2)」
- 「僕らの平成ロックンロール(2)」初回限定盤[CD+DVD] 2415円 WPZL-30492~3
- 通常盤[CD] 2100円 / WPCL-11273
CD収録曲
- ボーリング
- 夜明けを待っている
- 今、君に会いにいく
- 昨日の涙と、今日のハミング
- 微笑みのリズム
- 発明品
- I LOVE YOU
初回限定盤DVD収録内容
- ボーリング(MUSIC VIDEO)
- 夜明けを待っている(MUSIC VIDEO)
- 発明品(MUSIC VIDEO)
- MVメイキング+マル秘映像
高橋優(たかはしゆう)
1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始める。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月に初の全国流通盤「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でデビュー。2011年4月にリリースされたメジャー1stアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」はロングヒットを記録する。その後もコンスタントにシングルを発表し、2012年12月には7曲入りアルバム「僕らの平成ロックンロール(2)」とライブDVD「高橋優LIVE TOUR~この声って誰? 高橋優じゃなぁい? 2012 at 渋谷公会堂2012.7.1」を同時リリース。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声で、支持を集めている。