音楽ナタリー PowerPush - 高橋洋子

名曲、レア曲、セルフカバー、自身とデュエット 盛りだくさんのカバー盤を全曲解説

高橋洋子のカバーアルバム「20th century Boys & Girls II」がリリースされた。

前作から5年ぶりとなる「20th century Boys & Girls II」で高橋はアレンジャーに笹路正徳を起用。笹路とともに小坂明子「あなた」など誰もが知る名曲や、子供向けバラエティ番組「カリキュラマシーン」のテーマ曲「3はキライ!」のような知る人ぞ知る楽曲を高橋バージョンに生まれ変わらせている。さらに彼女は「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」という自らのキラーチューンをセルフカバー。そして児童合唱団在籍時代に歌った「ふしぎなメルモ」のオープニング主題歌では、当時の自身の歌声に今の自身の声を重ねるデュエットにもチャレンジしている。

なお「20th century Boys & Girls」はタイトル通り「20世紀の少年少女達へ」とのコンセプトのもと制作される高橋のカバーアルバムシリーズ。彼女は今作を通じて当時の子供たち、そして今の若者たちに何を伝えたかったのか? その真意と各曲にまつわる思い出を彼女に聞いた。

取材・文 / 大山くまお

20世紀に少年少女だった人たちに向けたカバーアルバム

──「20th century Boys & Girls II」は、2010年にリリースされた「20th century Boys & Girls」から数えると5年ぶりのカバーアルバムとなります。今回はどのような気持ちで臨まれましたか?

前作を作ったとき、「II」を作る話はなかったのですが、「できたらいいな」とは思っていたんですね。もし「II」ができたら、こんなことしたい、あんなことをしたいと考えていたことを詰め込んだ感じです。

──5年間考えてきたアイデアを全部詰め込んだという感じですか?

いえ、最初から小出しにして「III」も出したいな、と思っていたんです(笑)。

──なるほど(笑)。前作を踏襲したタイトルになっていますが、改めて「20th century Boys & Girls」のコンセプトを教えていただけますか?

20世紀に少年少女だった人たちに向けた、聴きやすいカバーアルバムがあってもいいよね、というところからこの企画はスタートしています。20世紀といっても、基本的には私と同世代、1960年代、70年代生まれの人たちを意識しています。選曲には(プロデューサーの)大月(俊倫)さんがいいアイデアをたくさん出してくれました。私が「これは外せない」とプッシュした曲と、大月さんからのアイデアの曲がそれぞれ入っているんですよ。

──前作は「炎のたからもの」(「ルパン三世 カリオストロの城」主題歌)や「愛はブーメラン」(「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」主題歌)など、いわゆるアニソンの定番曲が入っていましたが、今回はかなりユニークというかマニアックな選曲だと感じました。

前作は初めてのカバーアルバムでもあったので、選曲も古すぎず、新しすぎず、結果的に聴きやすいものになりましたが、今回はちょっとディープな作りにしてみました。もう「原曲を知らない人がいてもいいんじゃないか」というぐらいの感じで(笑)。

──今回のアルバムは全曲、ユニコーンやスピッツなどを手がけたアレンジャーの笹路正徳さんによるプロデュースです。笹路さんは前作「20th century Boys & Girls」に参加されていたり、最新シングル「真実の黙示録」のカップリング「新しい星」のアレンジを担当されていたりと、高橋さんとはお付き合いが長いですね(参照:高橋洋子「真実の黙示録」インタビュー)。

前作は5人のアレンジャーの方にお願いして、とても華やかなアルバムになったのですが、今回は1人の方に全曲お願いして1つのスタイルを作っていこうと思ったんですね。そこで満場一致で笹路さんにお願いすることにしたんです。

──では、さっそくですが1曲ずつ伺っていきたいと思います。

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残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子(1995年)
「新世紀エヴァンゲリオン」オープニングテーマ

──これは大胆なアレンジでしたね。

もうコーラスとか入れずに、1人で歌ってみようかな、と。まさに「ディープにいこう」というアプローチですね。実はこれ、仮歌一発録りをそのまま出したものなんです。やっぱり、そのほうがライブ感があっていいんですよね。少し荒削りですが、アナログ感があっていいかな、と。テーマが「20世紀」ですからね(笑)。

──スパニッシュギターのバッキングで聴く「残酷な天使のテーゼ」はとても新鮮でした。

「残酷な天使のテーゼ」と「魂のルフラン」は本当にたくさんの方にカバーされていて、アレンジもすごく多いんです。だからアレンジを頼まれるのがイヤな方が多いみたいなんです(笑)。それだけカバーが多いなら、もう高橋自身があえてセルフカバーしなくてもいいのでは?という声もあるのかもしれませんけど、逆に私としては「こうなったら一生歌うよ!」という気持ち(笑)。そういう気持ちなんですって笹路さんにお話したら、「やりたい、やりたい」とおっしゃっていただいて。

──ギターだけとはいえ、大変躍動感がある熱いアレンジです。

ぜひ、ライブで歌ってみたいアレンジですね。

カバーアルバム「20th century Boys & Girls II」2015年4月22日発売 / 3240円 / スターチャイルド / KICM-3187 / Amazon.co.jp
「20th century Boys & Girls II」
収録曲
  1. 残酷な天使のテーゼ
    [作詞:及川眠子 / 作曲:佐藤英俊]
    オリジナル歌唱:高橋洋子(1995年)
    テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」オープニングテーマ
  2. カリキュラマシーンのテーマ
    [作詞・作曲:宮川泰]
    オリジナル歌唱:西六郷少年少女合唱(1974年)
    教育番組「カリキュラマシーン」主題歌
  3. ひこうき雲
    [作詞・作曲:荒井由実]
    オリジナル歌唱:荒井由実(1973年)
    映画「風立ちぬ」主題歌
  4. 真赤なスカーフ
    [作詞:阿久悠 / 作曲:宮川泰]
    オリジナル歌唱:ささきいさお(1977年)
    テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」エンディングテーマ
  5. あなた
    [作詞・作曲:小坂明子]
    オリジナル歌唱:小坂明子(1973年)
  6. ははうえさま
    [作詞:山元護久 / 作・編曲:宇野誠一郎]
    オリジナル歌唱:藤田淑子(1975年)
    テレビアニメ「一休さん」エンディングテーマ
  7. ふしぎなメルモ
    [作詞:岩谷時子 / 作曲:宇野誠一郎]
    オリジナル歌唱:出原千花子、ヤングフレッシュ(1971年)
    テレビアニメ「ふしぎなメルモ」オープニングテーマ
  8. 愛のバラード
    [作詞:山口洋子 / 作曲:大野雄二]
    オリジナル歌唱:金子由香利(1976年)
    映画「犬神家の一族」オープニングテーマ
  9. 夜明けのマイウェイ
    [作詞・作曲:荒木一郎]
    オリジナル歌唱:PAL(1979年)
    テレビドラマ「ちょっとマイウェイ」主題歌
  10. 魂のルフラン
    [作詞:及川眠子 / 作曲:大森俊之]
    オリジナル歌唱:高橋洋子(1997年)
    映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air / まごころを、君に」主題歌
高橋洋子(タカハシヨウコ)

高橋洋子8月28日生まれ、東京都出身の歌手。2歳からピアノを習い始め、8歳で少年少女合唱団に入団するなど、幼い頃から音楽に囲まれた環境に育つ。1987年には久保田利伸のコンサートツアーのサポートメンバーとしてステージに立ち、その後松任谷由実をはじめとする数々のアーティストのコンサートツアーやレコーディングに参加。CMソングのボーカリストなど活躍の場を広げ、1991年にはソロデビューシングル「P.S. I miss you」で日本レコード大賞新人賞ほか多数の新人賞を受賞。1995年にはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマ「残酷な天使のテーゼ」を歌い脚光を集めた。その後もさまざまなアニメのテーマ曲やCMソングを担当。コンスタントにオリジナル作品を発表している。2015年1月にはシングル「真実の黙示録」をリリース。4月にはカバーアルバム「20th century Boys & Girls II」を発表した。