Taiki「Taiki THE BEST」インタビュー|5年間の音楽活動を赤裸々に振り返る (2/2)

「終わりの始まり」という宝物を磨く

──パーティ感のあるEDM調の「雑草魂」と、ハードなギターリフが特徴の「ほつれ世界」が同じシングルに入っているのが面白いですよね。

自由にやっちゃいましたね。スマホやパソコンに自分の曲のデータを入れているんですけど、「ほつれ世界」を流していても、ジャケットは「雑草魂」なのが我ながら面白いなと。「それもいいか!」と吹っ切れています(笑)。

──シングルに収録されている「水風船」は、Taikiさんの楽曲の中でも3本の指に入るくらい好きな曲なんです。

「水風船」は僕もすごくお気に入りの楽曲です! 自分らしさを残しつつ、今までやらなかったことをしたいなと思って作ったんです。で、それを自分の力で作れた瞬間は「Taikiの幅を広げられたかも」と成長を感じました。

Taiki

──なんと言っても、色気のあるサビのメロディがいいですよね。

まさに「水風船」を作るうえで大事にしたのが“危険な香り”でした。穏やかで心地いいメロディなんですけど、ふっと消えてしまいそうな繊細さを出すことを一番のテーマに書いた曲だったので、メロディを褒めていただけるのはめちゃくちゃうれしいです。

──最新曲「終わりの始まり」は、Taikiさんが長年憧れていたシドのマオさん、明希さんが書かれた楽曲です。昨年10月に、音楽ナタリーで明希さんと対談された際には目を潤ませながら「宝物のような曲です」と話していましたが(参照:Taiki×明希(シド)インタビュー)、今はどんな思いを持っていますか?

音楽って月日を重ねるごとに、聴く側や歌う側の受け取り方や感じ方が変わっていくと思うんです。「楽曲が育っていく」と言うんですかね。宝物であることは変わりないですが、感じ方はいい意味で変化しているように思います。これからも「終わりの始まり」という曲を通じて得られる感情を噛み締めることができるのが幸せです。宝物だからこそ、さらに磨いていきたいと思います。

Taiki

──「終わりの始まり」が完成したからこそ、ベストアルバムとして1つの区切りを付けられたのではないかと感じました。

間違いないです。しかも、僕の新しいソロプロジェクト「眠りにつくまで付き合って」の始動を発表する前のタイミングに、マオさんが「終わりの始まり」という歌詞を書いてくださった。そこに運命というかご縁を感じましたね。

──僕は「終わりの始まり」に封入されたブックレットのインタビューで、Taikiさんに初めて密着させてもらいました。Taikiさんを見ていて感じたのは、周囲やファンの期待に応えようとする人だということ。誰よりも現場の空気をよくしようと気を使っているし、休憩中の雑談でもTaikiさんがみんなに話を振っている。この人は「絵に描いたような好青年」を自ら引き受けているんだな、と思ったんですね。でも、交流を深めていく中で根っこにダークな一面も持っているのがわかった。それが「vivid sky」以降の、ご自身で作詞作曲された曲でも表現されていったと思います。Taikiさんは音楽活動を始めたことで、何が変わったと思いますか?

最初に楽曲をリリースしたときは、どうしても自分の内面を見せることを避けていました。正直、心の内側を見せることに抵抗があったんですよ。ただ、活動をする中でいろんな人に受け入れてもらえたことが自信になっていった。それによって、曲の中で自分自身をさらけ出せるようになってきた。この変化は活動を続けてきたおかげだなと強く思います。

Taiki

ロジカルを超えた感動を

──5年間を振り返って、一番のターニングポイントはどこでしょう?

「雑草魂」も自分を大きく変えてくれた曲の1つではありますけど、やっぱり「終わりの始まり」を初めてライブで歌わせていただいたときは、より変われたと思いました。完成した音源を聴いたときも、マオさんと明希さんから“ロジカル”以上の思いを感じて、そういうものを自分も追い求めたいと思ったんですよね。

──どういう意味でしょう?

「このメロディが」「この歌詞が」という理屈を超えた感動を届けていきたいと思ったんです。自分も誰かにそういった感情を与えられるアーティストになりたい、と言いますか。

──昨年、ライブで「終わりの始まり」を初披露された際には、歌いながら涙を流していましたよね。それこそ、説明のつかない感情が出てきたのかなと。

そうですね。楽曲制作の思い出も込み上げてきましたし、自分の大切な宝物であるあの曲をステージで歌っている、という事実そのものにも感情が高ぶりました。

──お芝居をしていても、無意識に泣けてくることってあるんですか?

ありますね。でも、それは僕の涙ではないです。自分がその役に入り込んでいて、思いもよらないところで涙腺にくるときはありますね。

Taiki

──ステージの上で役として生きていたからこそ、涙が出てくることがある。

そうですね。

──初めて「終わりの始まり」のデモを聴いたときにも、涙を流してましたよね。あの涙にはどのような思いがあったんですか。

自分がずっと憧れていた人たちに曲を書いてもらって、歌わせてもらって、さらに曲の中から浮かび上がる優しさを感じたことで泣けてきちゃったんです。ある意味、勝手に労われた気持ちになったと言いますか。「がんばったね」と言ってもらえてるような気持ちになったんですよ。なんか……音楽って自分の都合よく解釈できるツールだと思うんですよ。例えば「100円玉を落とした」という歌詞があったら、100円玉を落とした人しか共感することができない。そういう歌詞はもったいないというか、自らターゲットを狭めていることになるんですよね。それなら「小銭落とした」、あるいは「財布を落とした」でもいいかもしれない。ターゲットをなるべく広くして、でも「あなただけにしゃべりかけてるんだ」と投げかけるのが一番いいと思うんです。「終わりの始まり」を聴いたときにも、この曲は自分だけに訴えかけてくれている!と思えたんです。僕が目指す一番の理想はいかにして“あなたのための曲”にできるのか、です。そのためには、音楽に対して心血を注いで全力以上を出さなくちゃいけない。

──最初は戸惑いながら始まった音楽活動でしたが、いつしか自身の生き様を変えて、涙を流すほどの大切なものになるとは、Taikiさん自身が一番想像していなかったのかなと。

本当にそう! 趣味として楽しんでいた音楽が、作る側になったことでこんなにも自分にとって大切なものになるとは思ってもいなかったです。5年間の音楽活動を経て確信を持って言えるのは、音楽ができて幸せだということです。

Taiki

プロフィール

Taiki(タイキ)

1995年10月3日生まれ、静岡県出身。第23回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で審査員特別賞を受賞。2011年より俳優としての活動をスタート。2017年には「宇宙戦隊キュウレンジャー」メインキャストを務めた。2018年からは俳優業と並行してアーティスト活動を開始。楽曲制作やライブ活動など精力的に行い、2022年夏には“形にとらわれない音楽を自由に表現する”ことを掲げたソロプロジェクト「眠りにつくまで付き合って」をスタートさせる。同年10月にシドのマオと明希が制作に参加した4thシングル「終わりの始まり」、2023年7月、自身初のベストアルバム「Taiki THE BEST」をリリースした。