ナタリー PowerPush - taffy
気が付けばUKメディア大絶賛 日本人インディーバンドの不思議な道程
「どうせダメでしょう、私たちは」っていう感じがあった
──メンバーが決まってすぐに最初の音源制作に入ったんですか?
アイリス いや、そのときも、とりあえずメンバーが決まったから作ろうかっていうよりは、今この曲があるからこれを録ろうみたいな感じというか、とにかく溜まっているものをどんどん音源化していきたいっていうのがまずあって……。
マネージャー ちょうどその頃から僕が入って。特にリリースの予定は決まってなかったんですけど、とりあえず録らせてみたんですよね。っていうのは、音源を作って、それを聴いてもらえれば、きっと海外で受け入れられる音だと思ったというか、最初に聴いたときから、これはもう絶対海外でウケる音だと思ったので、とにかく録らせて、向こうに送ってみようと。
──アイリスさんは、多くの人に聴いてもらえたらいいなっていう願望はなかったんですか?
アイリス うーん……そういう願望は、さすがにだんだん芽生えてきましたけど、その頃は「CDを出して、どうするの?」みたいな思いがあって。ライブもそれと同じ感覚だったのかもしれないですね。ライブを意欲的にやって、「で、どうしよう?」みたいな。
マネージャー 当時から、けっこうシーンで浮いていたんですよね。いわゆる下北沢とか三軒茶屋とかのバンドシーンの中で、「どうせダメでしょう、私たちは」っていう感じがあったというか。
アイリス 「どうせ好かれないでしょ?」っていう感じは、すごいあったんですよね。あんまりワイワイしている感じでもないし、そもそも歌詞が全部英語だし……ただ、不思議だったのは、けっこう英語で歌われている日本人の方っているじゃないですか。その方たちはOKなのに、どうして私たちはダメなんだろうとか……私の中では、疑問がいっぱいあったんですけど。
──アイリスさんが書く歌詞は、どうして全曲英語なんですか?
アイリス 私は、幼少期からインターナショナルスクールとかに通っていて英語で育っているから、歌になると英語のほうが出やすいんですよね。しゃべるぶんには、今は日本語のほうが楽ですけど、カラオケで日本語の曲を歌うと、変なところにイントネーションがついちゃったりして、すごい歌いづらいんですよね。だから、自分の曲を自分で歌うってなったときに、日本語で歌うっていう発想がまったくなくて……それで全部英語になっているんですけど。
海外で盛り上がってても、日本で騒がれないのでピンときてない
──で、そこから最初の音源を録って、そのマスタリングをスティーブン・マーカソンが担当しているあたりから、ちょっと話が大きくなっていくんですけど。
アイリス ははは(笑)。そうですね。
マネージャー それこそ、音源を録ろうってなったとき、彼らはそういう部分は別にどうでもいいよみたいな感じだったんですけど、僕としてはやっぱりこれは絶対世界に通用するから、世界レベルの音で録ろうよって言って。で、ロスのマーカセン・スタジオに、「日本のtaffyっていうバンドだけど、マスタリングしてくれるか?」って聞いたら、OKっていう返事が来たんですよね。The Rolling StonesとかR.E.M.とかのマスタリングをやっているすごい人なんですけど、メジャーとかインディーズとかまったく気にせずやってくれて。
──そうやって完成した1stアルバム「Caramel Sunset」が、去年の5月にイギリスでリリースされて、現地でけっこう注目されるようになったと。
アイリス そうですね。ただ、私たちは現地にいないので、その熱がイマイチ伝わらないっていうのはありましたけど(笑)。
マネージャー その反応を最初にダイレクトに感じたのは、イギリスで初めてライブをしたときですね。「Caramel Sunset」を作って、マーカソンにマスタリングを頼んだときには、まだそれをどうするか決まってなかったんですけど、それをイギリスの「Club AC30」っていうレーベルのオーナーが気に入ってくれて、そこから出してもらえることになったんですよ。で、そのリリース前に、レーベルのパーティがあるから、1回そこでライブをやってみないかっていう話になって……。それで一昨年のクリスマスに、初めて4人でイギリスに行って。最初は、東洋人4人でこのジャンルだからやっぱり厳しくて、ちょっとトイレタイムみたいになっちゃったんですけど、曲を始めたらわっとみんな戻ってきて、最終的にはすごい盛り上がって……。トリのバンドが終わった後も、お客さんが次々メンバーに声を掛けて来てくれるような感じだったんですよね。
粕谷 お客さんが、ドカーッとやって来て、「お前、最高だったよ」って、いきなりハグされたりとか(笑)。それって、日本ではあんまりない反応というか、「あ、こういうものなんだ」と思って。あのとき初めて、自分たちの音楽に対するイギリス人の反応をダイレクトに感じたんですよね。
浅野 まあ、その後、リリースタイミングの話になると、また海の向こうの話になっちゃうので、僕らは「へー」っていう感じだったんですけど(笑)。
アイリス 向こうの記事を見ながら、「これ、私たちだって」みたいな(笑)。
マネージャー 日本でそれらのことがまったく報道されないので、僕たちとしてもあまりピンとこなかったんですよね。
アイリス まあ、私的には、日本ではそんな感じだよね、みたいな感じというか、それが通常運転と思っていて。ただ、そこでまた疑問が生まれてきて……日本人って、海外で売れていますみたいなものを、けっこう受け入れたりするじゃないですか。それと同じようなことだと思うんだけど、別に騒がれないねっていう。その温度差を、すごい不思議に思っていて。で、そんな感じのまま、今回日本でもリリースされることになった2ndアルバム「Lixiviate」の制作に入っていくんですよね。
収録曲
- Sweet Violet
- Tumbling
- Snowberry
- Boys Don't Cry
- Stewert and a Yellow Bicycle
- When Is Forever
- Dawn Red
- Train
- Maple Art
- No Endings but only the Beginnings
ライブ情報
- THREE THUMBS UP!
- 2013年12月13日(金)
東京都 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
<出演者>
taffy / Merpeoples / noodles
- BOOKMARK's vol.0
- 2014年1月17日(金)
東京都 下北沢ERA
<出演者>
taffy / BALLOON88 / THIS IS JAPAN / and more
taffy(たふぃー)
アイリス(Vo, G) と小泉将希(B)で結成後メンバーチェンジを経て浅野芳孝(G)と粕谷謙介(Dr)が加入し、現在の編成に至る。2012年に1stアルバム「Caramel Sunset」をイギリスでリリースすると、これが現地で評判に。大手一般新聞「ガーディアン」などさまざまなメディアで絶賛され、音楽雑誌「NME」では日本人の新人アーティストとして初めて巻頭特集が組まれた。2013年には2ndアルバム「Lixiviate」発売後、3カ月のスパンで2度のUKツアーを実施。同年12月には満を持して、初の日本発売となるアルバム「Lixiviate」をリリースした。