田所あずさ|「バキ」の世界に“愛”をぶつけるッッ

刃牙の彼女は大変そう(笑)

──歌詞は主人公・範馬刃牙の恋人である(松本)梢江の視点で書かれています。

歌詞をもらう前は「『バキ』のエンディングテーマを女性の私が歌っていいんだろうか?」って葛藤があったんです。“男の物語”にどうやって入り込んでいいか悩んで。でも唐沢(美帆)さんが梢江ちゃん視点の詞を書いてくれて、それがすごく共感できたんです。「あ、こうやって男の物語を応援すればいいんだ」って。

田所あずさ

──「RESOLVE」という曲を田所さんはどう解釈したんですか?

言ってしまえば「愛の歌」だと思うんです。でも「包み込むような愛」ではなく、「相手にぶつけるくらいの勢いがある愛」を感じさせるんですよね。劇中の梢江ちゃんのように一緒に立ち向かっていくような気概を感じさせる「戦う愛」が「RESOLVE」では描かれていると思っています。優しすぎないところが、また「バキ」らしいんですよね。

──田所さんは劇中での刃牙と梢江の関係についてどう感じていますか?

いやあ、刃牙の彼女は大変そう(笑)。だって好きな人にはなるべく怪我をしないでほしいものじゃないですか。できれば普通の生活がいいなって思っちゃいます。だって、ある日彼氏が戦いから帰ってきたら頬が爆発してたりするわけですよ?

──本来であれば命に関わる大怪我ですからね。

ただ劇中の梢江ちゃんはすごく“男前”なんですよね。刃牙と一緒に戦うようなスタンスでいるところはすごく愛おしいと思います。刃牙も戦い一筋な人間のようでいて、意外と梢江ちゃんのことも気にしているし、梢江ちゃんのおかげで刃牙が息を吹き返すシーンもあるので、そういう戦い以外の描写も「バキ」の魅力だと思います。「バキ」は「愛」も重要なキーワードになっているから、愛をテーマにしたエンディングを歌えたのはすごく光栄ですね。

格闘家が戦うMV

──「RESOLVE」のミュージックビデオは「バキ」の作品に寄せて、2人の格闘家が戦う内容になっています。

実際の格闘技を生で観たことがなかったので、圧巻でした。「人間ってこんなことができるのか!」って。もちろん撮影中は2人共流れを決めて打ち合ってるわけですけど、お互いのリズムが合わないと怪我をしちゃうくらい、勢いよくパンチとかを繰り出すんですよ。それがすごくハラハラして。

田所あずさ「RESOLVE」ミュージックビデオ撮影の様子。

──田所さんからすれば、リップシンクのシーンを撮っている目の前ですさまじい攻防が繰り広げられているわけですからね(笑)。

「こんなすごいことをやってもらっているんだから、私がNGを出すわけにはいかない!」って感じで。すごく緊張しました。MVだからっていうのもありますけど、決して痛々しい感じの格闘ではないんですよね。むしろ優雅な感じと言うか。ついつい見入っちゃうような美しさを感じました。

──「So What?」(2017年10月発売の3rdアルバム)の特集の中でご自身の方向性について「ロックに的を絞った」とおっしゃっていました(参照:田所あずさ「So What?」発売記念特集 田所あずさ×堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)対談)。今回のMVの田所さんは、カッコよさに振り切った姿なのが印象的でした。

田所あずさ「RESOLVE」ミュージックビデオ撮影の様子。

ちゃんとカッコよく映ってたならよかったです(笑)。ライブをがむしゃらにやってきた経験とかがすごく生きたのかなって思いました。最初は全然動けなくて、ライブでも撮影でも棒立ちだったんですけど、最近は徐々に体を動かしながら歌えるようになってきて。ただいきなりできるようになったわけではなくて、バンドメンバーさんの動きを真似してみたり、鏡を観て練習してみたり、ホントに地道な積み重ねの結果なのかなと思っています。

──こうやって話しているときの田所さんと、MVでのカッコいい田所さんの印象って全然違うんですよね。何か自分の中でのスイッチみたいなものはあるんですか?

曲が助けてくれると言うか、曲がかかると楽しくなって自然と体も動くようになるんです。逆に言えば曲がかかってなかったら絶対できないと思います(笑)。