音楽ナタリー PowerPush - 田所あずさ

“明るく元気にうしろ向き”から理想の自分へ

明るく元気に後ろ向き

──田所さんがグランプリを受賞したオーディションは「次世代声優アーティストオーディション」という名目で、声優としての仕事と並行して歌手活動をすることもすでに決まっているものでした。そもそも音楽には小さい頃から興味があったんですか?

昔から歌うのは好きでした。ただたくさん歌うようになったのは学生のときで。カラオケくらいしか行くところがなかったのもあり、友達と何度も通ってるうちに歌うことがもっと好きになって。

──カラオケでよく歌っていた曲ってなんでしたか?

やっぱりアニソンをよく歌ってました。「涼宮ハルヒの憂鬱」のオープニングテーマとか、劇中歌とか。

──なるほど。「次世代声優アーティストオーディション」は、声優に興味があって歌うのが好きな田所さんにとってはまさに望み通りのものだったわけですね。

2014年7月にリリースされたデビューミニアルバム「Beyond Myself!」ジャケット。

そうですね。ただ声優になりたかったのは本当だし、オーディションでグランプリを受賞したのもすごくうれしかったんですけど、自分が思っているよりも先に結果が出てしまったことが最初は怖くて。夢見てたけど、想像してなかったところに一気に来てしまって、いつもおびえてました(笑)。

──グランプリを獲ったのにおびえてたんですか(笑)。

私、身体的には健康なんですけどメンタル的にはちょっと弱い部分があって(笑)。テニスの試合とかも精神面で負けてしまうことが多いんですよ。リラックスすれば勝てるのに、緊張して変なところに力が入っちゃったりして。歌うのは好きなんですけど、人前で歌うのがそこまで得意じゃなかったり……。

──それでも声優であると同時に歌手への憧れも、もちろん田所さんにはあるわけですよね?

人のライブを観ると、やっぱりステージに立ちたいなって思うんです。でも、いざ自分のライブ前になると帰りたくなるみたいな(笑)。プレッシャーがホント苦手で。

──だんだん田所さんのネガティブな一面が出てきましたね(笑)。田所さんのブログのタイトルは「不安でしょうがないっ!」というものですけど、一体何がそんなに不安なんですか?

この先の人生とかがもう不安で不安で(笑)。

──でも子供の頃に誰とでも話している性格だったとおっしゃったように、こうやって話していると田所さんに暗い印象はないんですよね。むしろ明るい性格だと思います。

私のキャッチコピーが「明るく元気にうしろ向き」っていうものなんですけど、友達と一緒のときとか、人前では明るいんですよ。ただ、根が暗いのかなあ。別にどっちかの自分が嘘でもないんですけど、人にはいろんな面があるってことだと思ってます。

ステージではカッコよくありたい

──今回のシングル曲「DREAM LINE」は、田所さんのそういうネガティブな面がありながらも前に進んでいく、というメッセージが込められた歌に仕上がっています。

歌詞を書いていただいたyozuca*さんには、「私っていつもこんな感じのポンコツなんですけど、歌うときくらいはカッコいいって言ってもらえるようになりたいんです」って相談して。そうしたら、私の悩みとかを歌詞にしていただいた上に、それを前向きに書いていただいたんです。最初に歌詞を読んだときは、心が痛くなりましたけど(笑)。

──田所さんは、カッコいいアーティストを目標としているんですね。

私、LiSAさんが大好きなんですよ。ライブでバリバリお客さんを盛り上げるようなシンガーになりたいですね。

──今回のシングルはビジュアル面でも“カッコいい田所あずさ”をイメージしてますよね。昨年7月にリリースされた1stアルバム「Beyond Myself!」のジャケットは、田所さんの活発な一面をフィーチャーしたものだと思いますが、今回のアートワークはガラリと雰囲気が変わっています。

前回があって少し成長した姿がジャケットでも見せられたかなって思ってます。なんだか少しだけ自分が理想とするアーティスト像に近づけたような感じがしています。

──カップリング曲「POSITIVE SHAKING」は、タイトルの通りポジティブで前向きな曲ですが、根が後ろ向きな田所さんは歌ってみてどうでしたか?

私にないところを押し出していただいた曲です(笑)。どちらかというと、キャラソンを歌う感じでレコーディングしたんですけど、自分の最大限の元気さで歌っても物足りない感じがして。全部録り終わったあとに聴いてみたら「なんかつまらないなあ」って思っちゃったんですよ。そうしたらスタッフの方も理解してくれて、今度は全部絞り出した上に歌詞とかメロディとかをあんまり気にしないくらい必死に歌ったら、やっと曲にふさわしいテンションになったんです。

──田所さんはキャラクターソングも何曲か出していますが、キャラソンを歌うときと田所あずさとしての曲を歌うときって、どういう違いがありますか?

キャラソンを歌うのはメチャメチャ楽しいんですよ。やっぱり演技と一緒でその子になりきって歌うわけですから。自分の歌のときは責任感もありますし、自分として歌うっていうことに悩みながら録ってる感じですね。

──またシングルにはビジュアル盤にバラードソング「セツナレター」、イラスト盤にアニソンテイストなアッパーチューン「DEPARTURE」が収録されています。アーティスト・田所あずさのいろんな一面を見せたシングルになりましたね。

はい。いろんな歌に挑戦できて新鮮で面白かったですし、もしかしたら皆さんに見せていない面があるかもしれないので、全部聴いてほしいですね。個人的には自分が歌いたかったカッコいい曲を歌えたのがよかったんです。

──いろんな歌をやりつつも、あくまで追求していきたいのはカッコいい一面なんですね。

そうですね。ライブでの私と素の私が違ってもいいんです。ラジオではさっき言われたような犬っぽい私で和んでもらって。でもライブで歌うときはそれとはまた別で、しっかりしたステージを見せてカッコいいって言われたいんですよね。

1stシングル「DREAM LINE」2015年4月22日発売 / Lantis
ビジュアル盤 / 1404円 / LACM-14336 / Amazon.co.jp
イラスト盤 / 1404円 / LACM-14337 / Amazon.co.jp
収録曲
  1. DREAM LINE
    [作詞:yozuca* / 作曲:俊龍 / 編曲:加藤大祐]
  2. POSITIVE SHAKING
    [作詞:松井洋平 / 作曲:俊龍 / 編曲:EFFY]
  3. セツナレター(※ビジュアル盤にのみ収録)
    [作詞:rino / 作曲:田中一志 / 作曲:下川佳代]
  4. DEPARTURE(※イラスト盤にのみ収録)
    [作詞:yozuca* / 作曲・編曲:鈴木Daichi秀行]
田所あずさ(タドコロアズサ)

2011年に行われた声優オーディション「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン~次世代声優アーティストオーディション~」でグランプリを受賞した。アニメ「アイカツ!」の霧矢あおい役や、ゲーム「アイドルマスターミリオンライブ!」の最上静香役などの声優として活動するかたわら、2013年12月に1stソロライブを開催。2014年7月にはデビューアルバム「Beyond Myself!」をリリースし、同年12月には東京と大阪の2都市でライブツアーを実施した。さらに2015年4月、1stシングル「DREAM LINE」を発表した。