音楽ナタリー Power Push - Tokyo 7th シスターズ
茂木総監督 & kz(livetune)が“レジェンド”セブンスシスターズに託したナナシスの未来
アイドルを育成、プロデュースするiOS / Android用ゲームアプリ「Tokyo 7th シスターズ」(通称ナナシス)から、物語内でレジェンドとして語り継がれているグループ・セブンスシスターズのシングル「SEVENTH HAVEN」がリリースされた。
セブンスシスターズは、2030年にデビューし一世を風靡するも、2年後に突如解散したという設定のグループ。今回リリースされる楽曲は、彼女たちのデビュー当時の曲をリマスターしたというものだ。作詞、作曲、アレンジを担当したのは、これまでにもナナシスの楽曲を手がけてきたkz(livetune)。EDMを基調とした攻めのサウンドメイキングからは、レジェンドと呼ばれるにふさわしいセブンスシスターズの存在感がにじみ出ている。
そんな作品のリリースを記念し、音楽ナタリーではナナシス3度目の特集として総監督&総合音楽プロデューサーである茂木伸太郎とkzの対談を実施。セブンスシスターズの声優陣からのコメントとあわせて「SEVENTH HAVEN」の魅力を立体的に探っていく。
取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 西槇太一
「やったー!」っていう気持ちだけ
──「Tokyo 7th シスターズ」というプロジェクトは、kzさんが手がけたセブンスシスターズの楽曲「Star☆Glitter」から始まったと言えると思います。まずは、kzさんがナナシスに関わることになった経緯から聞かせていただけますか?
茂木伸太郎 僕はプロジェクトを始動させる段階から、とにかく自分のやりたいことをやる作品を作ろうと思っていて。だから自分の好きな音楽、自分がグッとくる音楽を作ってる人に楽曲をオーダーするのが自然の流れで。で、それがkzさんだったという。要は単純にファンでした(笑)。でも、僕らは名前も知られてない会社だし、よく引き受けてくれたなって思いますけど。
kz 当時の僕はアイドルというか、女の子グループの曲をやりたい気持ちがすごく強かったんですよ。ただ、例えば声優さんがまとまって動く企画なんかは大がかりなものになりがちなので、そういう機会はなかなかなくって。なのでナナシスのお話が来たときはもう「やったー!」っていう気持ちだけでしたよ(笑)。やりたいことができる喜びしかなかったというか。
茂木 へえ。じゃタイミングがちょうどよかったんだ。
kz ですね。しかも、ナナシスの設定が近未来っていうところも自分の音楽性にぴったりだったというか。今のアイドルソングはどちらかというとロックなバンドサウンドのイメージが強いから、そこに対しては自分のサウンドの方向性とは若干のズレがあると思っていて。でも未来のアイドルサウンドということであれば、自分の色をしっかり打ち出せるなって思ったんです。だから「Star☆Glitter」にはシンセをたっぷり入れましたし。そういう部分でもすごく楽しかったんですよね。
茂木 「Star☆Glitter」はね、仮歌のデモを聴いた瞬間に家で1人で大号泣しましたからね。純粋に自分の心に刺さってしまったというか。そのときに、ナナシスにとっての強い味方ができたと思えたし、プロジェクトを進めていくための大きな勇気をもらえたんですよね。
kz ありがとうございます。
茂木 で、今回の「SEVENTH HAVEN」はナナシスの今年1年を占うくらいの楽曲になってて。2016年のテーマソングになるということもうたってますし。そういう意味でもkzさんが最重要人物なのはもう当たり前というか。関わっていただくのは年1ペースですけど。
kz そうですね。僕も年1の恒例行事になったらいいなと思いながらやってます(笑)。
セブンスの曲は魂削って作らないといけない
──どんどん拡大していくナナシスの世界について、kzさんはどのように感じていますか?
kz 昨年5月に1stライブを観たときに、ナナシスは成長の物語だなってすごく思ったんですよ。キャラクターはもちろん、それを演じる声優さんたちも物語と連動してどんどん成長していく。初期から関わってると、そういうエモい部分にグッときてしまうんですよね。ライブのときは僕も「スタグリ(Star☆Glitter)」で号泣しましたから(笑)。
茂木 作曲家やアーティストの方は皆さんそういう思いで関わってくれてますよね。それがうれしいんですけど。
kz ただ、僕は物語の中でレジェンドとして君臨しているセブンスシスターズの楽曲を担当してるじゃないですか。そのハードルはかなり高いんですよ。だってレジェンドの曲が、レジェンドっぽくなかったら全然ダメなわけなので。正直しんどいっす(笑)。
茂木 あははは(笑)。確かにそうですよね。しかも今回の「SEVENTH HAVEN」に関しては、僕がいろいろイメージをお伝えしたこともあって特にハードルが高くなるだろうなって思いました。
kz 今回はマジでしんどかったですよ。ティザー映像でも煽りに煽りまくってたじゃないですか。その段階で曲はもう完成してたけど、「大丈夫かな」ってちょっと不安になりましたからね(笑)。
茂木 いやいや、「SEVENTH HAVEN」のデモを聴いた段階でバッチリだったんで、これはもう煽るしかないと思ったんですよね。ティザー映像に関しても、当初に思い描いていたビジュアルの方向性を、楽曲を聴いたことでちょっと尖らせたりもしましたから。これは挑戦的な煽りをしても大丈夫だなと思ったんで。
kz 茂木さんにはそう言っていただけたんで安心はしたんですけど、まあとにかくセブンスの曲は魂削って作らないといけないので大変ではあります。
──最初に「Star☆Glitter」を手がけたときから、そういったプレッシャーは感じていたんですか?
kz 最初は全然そういう思いはなかったです。でも物語が進んでいくとセブンスがどんどん神格化していったし、ファンの方にもその認識が植え付けられていったと思うので、これはもう下手なものは作れないなって思うようになっていったというか。ただ、今回「SEVENTH HAVEN」を作れたことで、次はもうちょっとやりやすくなるはずだっていう感覚はありました。いろんなイメージをバランスよく盛り込む配分が自分なりに身に付いたと思うので。
──それは、これまで3曲を作ってみてセブンスシスターズというユニットのことがより鮮明になってきたということでもありますか?
kz いや、そこはね、かえってわかんなくなったかも(笑)。茂木さん……というかセブンスはどんどんユーザーを裏切ってくる存在だと思うんで、これはわかった気にならないほうがいいぞっていう。
──なるほど。
kz ナナシス自体に対しても「ナナシスってこういうコンテンツですよね?」って決め付けるのではなく、単純に「この作品、好きっす」っていうファンのスタンスでいたほうがいいのかなって思うんですよね。
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- セブンスシスターズ ニューシングル「SEVENTH HAVEN」 / 2016年2月24日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+グッズ] 1944円 / VIZL-934
- 通常盤 [CD] 1296円 / VICL-37143
収録曲
- SEVENTH HAVEN
- FALLING DOWN
- SEVENTH HAVEN -OFF VOCAL-
- FALLING DOWN -OFF VOCAL-
- What is truly 2030??(ドラマトラック)
Tokyo 7th シスターズ 2nd Live 16’→30’→34’「INTO THE 2ND GEAR」
2016年8月21日(日)
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
kz(livetune)(ケーゼット)
アニメソング、ゲーム音楽、J-POPなど幅広いジャンルの楽曲制作および編曲を手がける音楽プロデューサー。DJとしても活躍し「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「ULTRA JAPAN」「ニコニコ超会議」などさまざまなフェスやイベントに出演している。ワーナーミュージック・ジャパンとASOBISYSTEMが手がけるイベント「YYY」では、中田ヤスタカ、tofubeats、banvoxらとともにレジデントDJを務める。ソロプロジェクトのlivetune名義では「Google Chrome-初音ミク篇-」のCM曲「Tell Your World」や初音ミク関連のイベント「マジカルミライ2015」のテーマソング「Hand in Hand」などVOCALOID楽曲を発表しているほか、SEKAI NO OWARIのFukase、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔といったボーカリストとのコラボ曲もリリースしている。また2015年10月には、ボーカリストにやのあんなを迎えた新ユニットlivetune+を始動させた。
茂木伸太郎(モテギシンタロウ)
株式会社Donutsに在籍するクリエイター。「Tokyo 7th シスターズ」の総監督兼総合音楽プロデューサーとして同作品のビジュアル、脚本、楽曲の企画や制作、ライブ制作に携わっている。