集団行動|気付いたら、僕ら4人の関係は“バンド”になっていた

いつまで経っても終わらなかった「SUPER MUSIC」ブーム

──「SUPER MUSIC」をアルバムのタイトル曲にした理由は?

真部 さっき「ツアー中に車内での会話が増えた」という話がありましたけど、だいたい僕が1人でしゃべってるんです(笑)。楽曲のアイデアを話しても「あ、面白いね」で終わり。だからバンの中で生まれてそのまま消えていくアイデアがたくさんあったんですよ。そんな中で「自分のイニシャルの曲を書きたい。“脩一真部”だから『SUPER MUSIC』って面白くないですか?」って話して、いつも通り「面白い! 次いこう!」ってなったあとに、僕が思い付きでサビのワンフレーズを鼻歌で歌ったんです。普段なら小笑いが起こって終わるところだったのに、西浦さんがボイスレコーダーを取り出して「それ、録音しとこうや」って。

西浦 「SUPER MUSIC」っていう人を食ったようなタイトルも個人的にドンピシャだったし、サビのメロディもたまらんぞと思いまして。

真部 「これ完成させようや!」って異様に盛り上がったんですよ。でも僕は「ちょっと待ってください」と。「これは今面白いだけかもしれない」って言ったんです。

西浦 だいぶ深夜だったからね(笑)。

真部 深夜3時くらいってなんでも面白いじゃないですか。だから寝かせて判断しましょうってことにしたんですけど、それから1カ月半、ずっと面白かったんですよ。

ミッチー バンド名もSUPER MUSICに変えようって話になりましたしね。みんなの名前も“齋藤ミュージック”、“真部ミュージック”、“西浦ミュージック”、“スーパーミッチー”にしようって。

真部 サウンドチェックのときに「西浦ミュージックのドラムをスーパー上げてください」って言ったり(笑)。

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西浦 で、そうやって男連中が盛り上がってると齋藤さんが冷たい目で見てるんですよ。

齋藤 そんなことないですよ!(笑) 何がそんなに面白いのかわかんなかっただけです。あのとき眠すぎて全然話を聞いてなかったから「なんでこの人たちこんなに盛り上がってるんだろう?」って。

真部 ははは(笑)。これが2ndアルバムまでだったら、僕は「面白さを共有できないなんてこのバンドはダメだ」と思ってたはずなんです。でも今回は「それでいい。齋藤さんはそういう感じだし」と思えるようになってました。気付いたら僕らの関係は“バンド”になってたんです。

──本当にそうですね。

真部 ただ、バンドになるために今までいろんな手札を駆使してきたんですけど、どれが功を奏したのか全然わかんないんです。僕はバンドを作るためのレシピを作ろうとしてたのに、気付いたら食べる側に回ってたんですよ。結局レシピがまったくわからないまま(笑)。

真部さんがきれいに包んだオブラートを全部溶かすのはよくない

──齋藤さんは先ほど「1999」を歌うのが難しかったと話していましたが、逆に歌ってみて気に入った曲はありますか?

齋藤 もちろん「乗り越えた」っていう意味で「1999」には思い入れが強いんですけど、それを考えずに単純に歌ってて気持ちいいのは「スープのひみつ」です。

西浦 へー! 意外。

齋藤里菜(Vo)

齋藤 この曲は自分の声とマッチしてる気がして、歌っててすごく楽しいです。「この曲を歌うのが私でよかったな」という気持ちになれるんです。

真部 ほかの歌手にはこの味は出せないぞと。

齋藤 いや、そこまでは言ってないですけど(笑)……まあそういうようなことです。

真部 「ザ・クレーター」はどう? 僕はこの曲は齋藤さん以外にはハマりづらい曲なんじゃないかと思ってるんだけど。

齋藤 むしろ「ザ・クレーター」は私から遠いのかなってちょっと思ってました。私は声に感情を乗せるのが苦手で、でもそんな私の声について「あんまり癖のないところがいい」って言ってくれる方が多かったので、「ザ・クレーター」のように感情を爆発させる曲は、私が表現するのにあまり向いてないのかもなって。レコーディングのときに「もっと感情を乗せて」って言われ続けてたからそう思ってるのかもしれないですけど。

西浦 いやー、完全に真部のせいですよ(笑)。

真部 だいたいのことは僕が悪者なんで(笑)。

齋藤 だから今回「どうやったら感情を乗せられるんだろう」って試行錯誤しながらアルバムを作ってたんですけど、その途中で「テクニックを使って感情を出すことができる」っていうことがわかったんです。テクニックがあるから出せる感情表現もあるんだって。その意味で、「ザ・クレーター」を歌えるようになったのは自分にとって大きな成果だなと思います。

真部 齋藤さんはあんまり曲に感情移入して歌わないですよね?

齋藤 そうですね。真部さんの歌詞ってストレートに感情を表現する言葉が少ないから、聴いた人が1人ひとり感じることはたぶん違うと思うんですよ。それを私が全部咀嚼して、1つの解釈にして聴かせるのはしないほうがいい気がしてて。私は、真部さんがきれいに包んだオブラートを全部溶かしてお客さんにあげるのはよくないと思ってるんです。オブラートを剥がさずにお客さんに渡して、聴いた人が自分で溶かしていくほうがいいんじゃないかって。

西浦 うわ、何それ。めっちゃいいこと言ってるじゃないですか。

ミッチー びっくりしましたよ! ちょっと感動しちゃった!

齋藤 いえいえ(笑)。だから私は、別に自分のことを皇居ランナーだと思いながら「皇居ランナー」を歌ってはいないです。皇居の周りを走る人たちが本当に左回りなのかは確認しに行きましたけど。

西浦 わざわざ確認しに行ったんだ。めっちゃ面白いな(笑)。

“自分が理想としている普通”を見つけることができた1曲

真部 齋藤さんが挙げた曲をみんなが意外がっているのを見てわかると思うんですけど、たぶん今作はみんな好きな曲がバラバラなんですよ。

西浦 今の段階では僕は「チグリス・リバー」が段違いで好きですね。本気なのか冗談なのかよくわからない壮大さがすごく面白いし、齋藤さんの声も曲にすごく合ってる。僕は前作みたいなコンセプチュアルなアルバムを美しいと感じるんですけど、今回みたいにいろんな曲を詰め合わせたビュッフェスタイルのアルバムに、ラストの「チグリス・リバー」が力技で無理やり統一感を与えてるのが面白いなと。

ミッチー 僕は「ザ・クレーター」ですね。見ての通り僕ってロマンチストで。

西浦謙助(Dr)

西浦 知らないですよ。

ミッチー プレイしているときも、イメージを掻き立てて涙腺を刺激するわけですよ。ご存じのように僕は泣き上戸なところがあるじゃないですか。

西浦 だから知らないです。

ミッチー さっき齋藤ちゃんが言ったように、リスナーさんは曲を聴いたときにそれぞれのイメージを思い浮かべるものですけど、この曲は特にいろんな解釈ができると思うんですよ。歌詞だけを見たら「何それ?」って内容なのに、歌になるとなぜかすごく感情を揺さぶる。

真部 この曲は今までだったら世に出せなかったと思いますね。昔やっていたことの劣化コピーになりかねなかったので。

──“集団行動の曲”にできる自信があったから今回は作った、ということですか?

真部 そうですね。あと、自分がうまくなっていくことで失われていくものに対して敏感になっていたのもあります。初期衝動も込みでよかったものを焼き直しても、前よりいいものにはなりませんので。ただ今はバンドというブラックボックスができたので、その中に落とし込めばなんとかなるのかもと思ってます。

──真部さんはどの曲が好きですか?

真部 「1999」ですね。この曲だけリファレンスがないんですよ。僕はメロディ先行型で、メロディを作ったあとでうまくハマりそうな音楽をリファレンスとして探すんですけど、「1999」はサビのメロディを書いたときに「どこかで聴いたことがある」と思いながら、いつまで探しても似た曲が見つからなかった。たぶん、“自分の頭の中に鳴っているJ-POP像”ががそのまま出せたのが「1999」だったんですよ。「自分が理想としている普通」「世間の王道にハマる集団行動の王道」をついに見つけることができたというか。

──今日いろいろお話を聞いて、今はバンドがとてもいい状況だということがよくわかりました。

西浦 やってて楽しいですね。もちろん課題もいろいろあるんですけど。

真部 こういう言い方は照れくさいんですが、家族に近い感覚があります。あるいは、放課後の教室の感じとか。

──2年前のインタビューで齋藤さんが、今後の目標として「真部さんと謙助さんの青春をもう1回やり直したい」と話していましたが(参照:集団行動「集団行動」インタビュー P3)、それが実現したってことですね。

齋藤 いやホントに。めちゃくちゃ楽しいです今。いろいろとお騒がせしましたけど(笑)。

──ちなみにまだメンバーを増やそうという気持ちはあるんですか?

真部 寝しなに思うことはあります(笑)。ただ、それをやるとしたらこの体制をもうちょっと盤石にしてからですね。今はバンドの最小単位としてすごくきれいにハマっている気がするので。

西浦 増やすのはいいんですけど減らさないでほしいです(笑)。

公演情報

SUPER MUSIC TOUR -MUSIC編-
  • 2019年4月18日(木)愛知県 CLUB UPSET
  • 2019年4月19日(金)大阪府 Music Club JANUS
  • 2019年4月28日(日)東京都 WWW X
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