鈴木このみが4枚目のオリジナルフルアルバム「Shake Up!」を11月6日にリリースした。
2011年開催「全日本アニソングランプリ」の第5回大会で優勝し、2012年4月にシングル「CHOIR JAIL」でデビューした鈴木。これまで数々のアニメ主題歌を担当してきた中、昨年は自身が主題歌を歌うテレビアニメ「LOST SONG」で初めて主演声優を務めた。
「最近チャレンジすることがすごく楽しくなっている」と語る彼女がこのたび発表したニューアルバムの裏テーマは“自分への果たし状”。鈴木が今まで見せたことのない新しい表情を見せるべく完成させたバラエティ豊かな今作について、音楽ナタリーでは新曲を中心に話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 星野耕作
予想以上にぶっ飛んだ歌詞が返ってきた
──「Shake Up!」は鈴木さんにとって4枚目のオリジナルフルアルバムになりますが、今作をご自身の中でどのように位置付けていますか?
今回はアルバムを作る前から自分の中で裏コンセプトみたいなものが決まっていて、最近チャレンジすることがすごく楽しくなっているんですよ。アルバムって、自分のよりパーソナルな部分を出せる場でもあるので、そこで今まで見せたことのない新しい表情を見せることに挑戦したくて。だから「次のアルバムの裏コンセプトは“果たし状”にしよう」と密かに考えてたんです。
──誰に対する果たし状ですか?
自分自身に対してですね。今年でデビュー8年目になりますけど、守りに入るのはまだ早いし、私自身いろいろやってみたいことがある。だから自分に対して「もっとできるでしょ?」と、果たし状を突きつけました。
──アルバムタイトルにはどのような意味を込められたんですか?
このアルバムの収録曲はかなり振り幅が大きいと思うので、そういういろんな表情を持った曲たちを“振って混ぜる”という意味があります。それに「shake up」には“大改革”とか“ハッとさせる”という意味もあったので「これだ!」と決めました。
──アルバムはリード曲の「シアワセスパイス」で始まりますが、このようなラウドなロックナンバーに鈴木さんの歌声はよく映えますね。
ありがとうございます。最初にデモを聴いたときは「ボーカルが負けちゃいそう」と思ったくらいパワー系の楽曲で。しかも歌詞もぶっ飛んでるというか、ぶっ飛んだ歌詞をお願いしてはいたんですけど、予想以上にぶっ飛んだものが返ってきました。
──具体的にどのようなオーダーを?
歌詞は「ぱっと見は意味がわからないようにしてください」とお願いました。例えば1行目から「この星の救世主 報酬はビービーキュー」とか、そこだけ取り出すと「どういうこと?」ってなりますよね。そういうふうに単体だと意味不明な言葉をたくさん並べて、でも俯瞰で見ると「おお、そういうことか」ってちゃんと意味が通るような歌詞にしたかったんです。みんながいっぱい考えられるように。
──カタコトの外国語をしゃべっているような、妙な多国籍感があります。
確かに(笑)。語感やリズムを重視していただきつつ、かなり好き放題に書いてもらいました。
──楽曲についてのオーダーは?
もともと私の曲には勢いのある曲が多いんですけど、中でも「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」(2013年8月発売4thシングル表題曲)というひときわゴリゴリの曲があるんです。それをアップデートしたような「ライブで絶対に盛り上がる曲」という感じでオーダーしました。でもこのゴリゴリの曲にシリアスな歌詞を乗せると重くなりすぎちゃうかもしれないと思ったので、歌詞はあえてポップにしています。そのギャップも楽しんでほしいですね。
──実際、ライブ映えしそうですよね。
すでにファンクラブイベントで初披露していて、今やっているアジアツアーでも10月12日の上海公演で歌ってきたばかりなんですよ(※本インタビューは10月中旬に実施)。どちらもすごく盛り上がったので「この曲、めっちゃライブで化けるな!」と思いました。コールも多いし、きっとライブを重ねていくたびに熱量が増していくんじゃないかなあ。
やったろうやないか!
──「シアワセスパイス」のレコーディングはいかがでしたか?
この曲は何も考えずに感覚に任せて歌うのが正解だと思ったので、あえて丁寧に録らずに勢いで録りましたね。もちろん、さっきも言ったように一見すると意味不明な歌詞でも、特に最後のサビの部分とか、伝えたいメッセージはちゃんとあるのでそれも意識しつつ。
──先ほど「ボーカルが負けちゃいそう」な曲だとおっしゃっていましたが、レコーディングではそういう心配はなかった?
正直、歌詞に関してはあまりにも斜め上すぎていたので、レコーディング前日に「大丈夫ですかね?」とスタッフさんに相談しました。でも今回のアルバムは裏コンセプトが“果たし状”なので、私も振り切ろうと腹をくくって挑みました。確かに最初は「負けちゃいそう」と思ったんですけど、次の瞬間「いや、負けてなるものか」「やったろうやないか!」と逆に燃えましたね(笑)。だからレコーディングのときはまったく不安はありませんでした。
──「シアワセスパイス」のようなノンタイアップ曲を歌うときと、アニメのタイアップ曲を歌うときではどういう違いがありますか?
タイアップ曲の場合、やっぱりアニメの主題歌であっても自分の曲ではあるので、その作品にリンクさせることを第一に考えたうえで、何割かは自分のことも歌っていて。楽曲制作の段階から作品と自分の共通点を探して、両方に当てはまる曲を作ろうといつも心がけているんです。一方、ノンタイアップの場合は10割自分の歌なわけなんですけど、私としてはこちらのほうがプレッシャーが大きいなって思います。
──それはなぜ?
例えばアニメの主題歌なら、作品に助けられる部分もありますよね。アニメが話題になったぶんだけ主題歌を知ってもらえる確率が高まったり。でもノンタイアップの場合は鈴木このみ単体として、アニメの力なしでそれ以上のパワーを出さないといけない。だからよりがんばらないといけないなといつも感じます。
──歌い方そのものは変わりますか?
歌い方はあまり大きく変えていないですね。もちろんアニメの世界観によっては多少の足し算、引き算はしますし、その作品の背景だったりキャラクターの気持ちだったりをすごく背負っている感覚があるんですけど、あくまでも歌っているのは自分なので。
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