PIZZA OF DEATH RECORDSに所属する気鋭のロックバンド・Suspended 4thが、7月20日に1stフルアルバム「TRAVEL THE GALAXY」をリリースした。
「TRAVEL THE GALAXY」は、録り下ろしの新曲に加え、2014年のバンド結成以来、ライブハウスや路上で演奏してきた楽曲の再録バージョン、さらにDeep Purple「Burn」のインストカバーなど全14曲を収めた作品。2枚組盤に同梱されるDISC 2「Parallel The Galaxy」には、アルバムのインスト音源が収められ、彼らのアレンジ能力や、演奏スキルを存分に楽しめる痛快な内容となっている。
音楽ナタリーではアルバムのリリースを記念して、メンバー全員にインタビュー。今年4月に発表された1stシングル「KARMA」リリース後の反響や、PIZZA OF DEATH主催ライブイベント「SATANIC CARNIVAL 2022」出演時の手応え、そして充実作となったアルバムのこだわりを収録曲の制作エピソードを交えて語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 塚原孝顕
名刺代わりのアルバム完成
──「KARMA」リリース後の反響はいかがですか? この曲はツアーや「SATANIC CARNIVAL 2022」でも披露していましたね。
Kazuki Washiyama(G, Vo) 「KARMA」はライブだと予想通りの反応になっているかな。この曲をやる前まで、俺はステージの端っこにいたんですけど、最近はステージの真ん中に立つようになったりと、曲とともにバンドが見せたい姿を体現できている感じがします。
Seiya Sawada(G) リリース前にライブで披露したときは、お客さんからちょっと戸惑いと期待が入り混じった、今までにない感じが伝わってきたんですが、リリース後は「来た!」ってリアクションをしてくれて、そういう変化は感じますね。
Washiyama あと、「KARMA」はけっこうカロリーが高いというか。さらっとやれない感じはあるよね。
Hiromu Fukuda(B) そうだね。
Washiyama まだ体に馴染んでいないというのもあるんですけど、勢いでやれる今までの楽曲とはちょっと違うんだなというのは、ライブをやっていて感じます。
──それによって、ライブの進行にも変化が生じた?
Washiyama そうですね。今までみたいにジャムがメインというよりは、ちゃんとセットリストを決め込んで、その中で「KARMA」をどこに配置するか、どう聴かせたいかという悩みは、なんとなくあったりします。
──そういう意味では、バンドとしてワンステップ上に進むための転換期に入っているんでしょうか。
Washiyama そうかもしれない。それこそ、夏フェスに向けてゲネを進めていく中で、かなり作り込んだものをステージで見せていくというか、最近はそっちの方向をがんばっているところです。
──このアプローチがいい方向に作用すれば、それこそ「SATANIC CARNIVAL 2022」当日のMCでおっしゃっていた“真ん中のステージ”、つまりメインステージにもたどり着けるんじゃないかと。
Washiyama そこはこのアルバムの売れ行き次第ですね(笑)。
──このアルバム「Travel The Galaxy」はその大きなステージでバンドが通用するための、いろんな武器がそろった内容に仕上がったと思いますよ。
Washiyama 確かにそうですね。どういうシチュエーションでも、ある程度のボトムラインが出せるというか。特に今回は再録曲も多いですし、以前出した音源ともまた違った研ぎ澄まされた部分がちゃんと表れていて。それに通ずる新曲もありますし、サスフォーのことをよく知らない人たちにも、このアルバムを通じてどういうバンドかが見せられたと思います。
挑戦的な新曲はライブで再現できるのか?
──コロナ禍以降、「KARMA」前後に制作した新曲からこのアルバムのようなモードが始まっていると思うので、既存の曲も同じテンションでそろえる必要があったのかなと、聴き手側として想像しました。
Washiyama そういう意味では、既存曲のほうが楽しくできたかもしれないね。
Dennis Lwabu(Dr) 既存曲のほうが僕のジャズ的なバックグラウンドを生かせる曲が多いけど、新曲は今まで叩いたことがないくらい速い曲があったりして、挑戦するという点ではとても面白かったです。
──「Shaky」あたりはすごく細かいフレーズが凝縮されていますものね。
Dennis はい。レコーディングの最中、自分の体の動きにびっくりする瞬間もあったくらいです(笑)。
Fukuda 「俺、こんなに速く叩けるんだ!」とか言ってたね(笑)。僕も既存曲は体に馴染んでいるので、Dennisと2人で一緒に録ったりしてすごく楽しくやれたけど、「Shaky」は本当に苦労しました。あの曲はたぶん、メンバーみんな一番大変だったんじゃないかな。
Washiyama だってあれは、いまだにFukudaくん以外やりたくないって言ってるもんね。
Fukuda 本当にあれをライブで再現できるのかという問題がすごくありますし。
Sawada 全員、椅子に座って弾かせてもらったらできるよね(笑)。
Washiyama Sawada氏は叫びながらね。
Sawada 叫びっていうか、弾くのが大変すぎて奇声を上げながらレコーディングしていました(笑)。最初に「Shaky」のデモが上がってきたときは、サスフォーっぽくないなと思っていたんですけど、4人で演奏したらちゃんとサスフォーの曲になった気がして。そこが個人的には一番、デモからの変化を感じましたね。
Washiyama 「Shaky」は俺が2016年に書いた曲で、もとのアレンジは全然違う感じだったんですけど、これをサスフォーでやったら面白いんじゃないかなと思って。
Fukuda フレーズとか、当時のバージョンと比べるとだいぶ変わったよね。
Washiyama 最初のバージョンはドラムもツインペダルじゃないと絶対叩けないようなメタルフレーズが入っていたりと、ちょっとサスフォーらしからぬ感じで。それをサスフォーぽくやってみようと思ったら、こうなりました。
──「Shaky」は初めて聴いたとき、全体的なイメージとしてサスフォーらしさを感じるものの、細部まで聴き込むと個々でやっていることがめちゃくちゃですよね(笑)。
Washiyama ですね。特にベースとドラムは、誰にも真似できない感じですし。
Fukuda 「弾けるものなら弾いてみろ!」と思う曲ですね。
Washiyama まず、俺らがライブで弾けるようにならないと。次のツアーでやると思いますけど、果たしてそれまでに弾けるようになるのか、見ものですよね(笑)。
Sawada 単純に速いからね。
Washiyama 練習のたびに、1回ため息ついてからやるからね。だから、新曲はカロリーが高くてしんどいものが多いです(笑)。
“アホっぽい”ほど突き抜けたタイトルに至った理由
──一方、オープニングの「トラベル・ザ・ギャラクシー」は歌詞、サウンド含めすごくアンセム感が強くて、本当に1曲目にふさわしいと思いました。
Washiyama ありがとうございます。タイトルがアホっぽいのもいいですよね(笑)。
Sawada アルバムの表題曲なんですけど、実は最後にできたんだよね。
Washiyama そう。タイトルも最初は「トラベル・ザ・ギャラクシー」じゃなかったし。ていうか、そもそもこの曲なしでどういうアルバムタイトルを付けます?って感じですよね。
Dennis 確かに。
Washiyama っていうぐらい、このアルバムをまとめるために必要な曲だなと思って。
Sawada 本当にデッドラインぎりぎりに上げてくれて、メンバーもPIZZA OF DEATHのスタッフも満場一致で「いいね!」ということで、最後に録ったんです。
──Washiyamaさんがおっしゃるように、この曲がなかったらもうちょっと焦点がぼやけたアルバムになったかもしれませんし。
Washiyama そうそう。
Sawada アイデアとしてあったのは、サスフォーの歴史を総括したコレクションという意味で「Historic Collection」という仮タイトル。コンセプトとしてアーリーベスト的なものを目指したところもあって、「INVERSION」の再録や「ストラトキャスター・シーサイド」の再々録バージョンが入っていたりと、サスフォーのポートフォリオ的なものになったので、やっと面接に行けるところまで来たなと(笑)。ここからやっと始まる感じがあったんです。
Washiyama でも、最終的にそのアイデアを全部ぶち壊す1曲が生まれたと。
Sawada 「それよりも銀河!」ということで、なぜだかしっくりきました。
──確かに「トラベル・ザ・ギャラクシー」というタイトルは秀逸ですよね。
Washiyama 最高ですよ。こういう突き抜けた感じのタイトルって、最近なかなか見かけないし。それこそこの曲なら、俺らがKissみたいなメイクをするのもありですものね。
Dennis やればよかったなあ(笑)。
Washiyama ガチガチに衣装をキメて、ちょっと付け爪もしたりして。ただ、「トラベル・ザ・ギャラクシー」というワード自体は、もともとは古いバージョンの歌詞のBメロに出てくるだけのフレーズだったんです。それが、誰かは忘れたけど「『トラベル・ザ・ギャラクシー』ってフレーズ、ヤバいね?」と言い始めて。メインに持ってくるには恥ずかしいなと思って、Bメロに逃していたんですけど、見つけられちゃって、気が付いたらサビの頭にも入ってアルバムのタイトルにもなっていたという(笑)。
次のページ »
RECではギター / ドラムのパートチェンジも