「KARMA」は自信作だけど？

──一方、表題曲の「KARMA」は新たに書き下ろされた1曲です。

Washiyama　去年の10月ぐらいに曲の断片ができた瞬間「めちゃめちゃヤバい曲できた！」と思って。メンバーに聴かせたらみんなもめっちゃいいっていうから……いい曲だと思えなくなっちゃって。

Sawada　ひねくれてんなあ（笑）。

Washiyama　いつものパターンとして、バンド側が盛り上がっていてもお客さんに伝わらないことが怖くて。だから、PIZZAのスタッフにも聴いてもらったんですけど、そこでも「いいよ」と言われて余計に心配になっちゃって。曲書きとしては、何か指摘があったほうが安心するんですよね。別に粗を見抜いてほしいわけではないんですけど、素直じゃない人たちから素直にいいと言われるとすげえ気持ち悪いんです（笑）。加えてひさしぶりのフィジカル作品ってこともあり、俺的にはすごくプレッシャーを感じたシングルでもあって。演奏も手数で攻めていなくて、俺ら的にはこれまでと真逆じゃないですか。今まで武器にしてきたものをできる限り削ぎ落として、残ったものだけで成立させる絶妙なバランスというイメージなんですけど、そのバランスで本当に聴いた人がみんな満足してくれるのかという不安もいまだにあります。

Dennis　でも、僕はこういう暗くてヌメヌメした曲が大好きなので。

Sawada　確かにダークヒーロー感があるというか。何より、ボーカルが主役なのがいいですよ。

Dennis　うん。だからこそ、ドラムは手数が少なければ少ないほどカッコよくなる。

Dennis Lwabu（Dr）

Sawada　ギターも弾いてなければ弾いていないほどカッコいいというのが、この曲にはありますね。Washiyamaがさっき言っていたけど、いらないところを削ぎ落としてソリッドにしていく作業がいい方向に作用し、どこが聴きどころなのかもわかりやすくデザインされているから、僕はかなり好きなんですよ。

Dennis　一概には言えないですけど、曲がよければいいほどドラマーががんばる必要がなくなるから、自然と手数が減るんです。この曲はドラム以外のパートがしっかりしているから、何もしなくてもいいなという妙な安心感が完成する前からあったので、これはいけるんじゃないかと確信していました。

Fukuda　Sawadaが言うように歌メインという、今までのサスフォーにはないタイプの曲。これまでは演奏にフォーカスした楽曲が多かったので、そういった意味でもサスフォーの新たな可能性が垣間見えて、ワンステップ上がった気がしますね。

──僕はこれ、大会場で映える曲だなと思いました。みんなが拳を上げて、なんなら一緒に歌っている。そういう景色が見えてくるというか。

Washiyama　自分も大きな会場に行くための曲を書きたいと思っていたので、そう言ってもらえてめちゃめちゃうれしいです。「KARMA」は歌が映えるし、そういう曲はデカい会場に合うんだろうなって、完成させた今は手応えを感じているところです。だから、デカい会場で一緒に歌えるといいですね。ただ、本当にリスナーにもそう思ってもらえるのか……俺、不安なんですよ（笑）。

──これは、今まで届いていなかった層にもアピールできる、サスフォーというバンドにある一定のイメージを持っていた人たちの予想をいい意味で裏切ってくれる、切り札になる曲にもなりうるんじゃないかと。

Washiyama　そう言っていただけると安心します（笑）。周りの人がそう言ってくれるので、出そうという覚悟が決まったんですけど。

──あと、これまでのインタビューでは演奏面がフィーチャーされることの多いバンドでしたが、「KARMA」は歌詞も印象に強く残りました。

Washiyama　今までは歌詞で言いたいことがそんなになかったんですけど、この「KARMA」に関してはすごく広い意味で団結しているというか。2020、21年ってみんなやれることがあまりなかったじゃないですか。でも、最近はやれることが増えてきて、なんとなく音も出せるようになってきて、個人的にこの現状に対して団結を感じるんです。なので、そういうことを歌詞で書けたらいいなと考えたのがこの曲。これまではメッセンジャーになりうる歌詞は避けてきたんですけど、「歌いたい」とか「担いたい」っていう思いが最近は芽生えてきて。でも、いろんな経験を経て、本当に言いたいことが書けたのはこの曲が初めてかもしれないです。

シングルに無垢で尖ったライブ音源も収録

──さらに、本作はフィジカル限定で特典ディスクが付属します。昨年10月7日、今はなきSTUDIO COASTで行ったライブの音源が入るということですが。

Fukuda　これ、めちゃめちゃ尖ってますよね。

Sawada　当日はノーMCで、照明もピンスポオンリーだったので、その雰囲気にみんなが没頭して音楽だけやっている状態が凝縮されている感じですね。

Seiya Sawada（G）

Washiyama　ここ1、2年のライブの中では一番緊張感があった気がします。やっぱり自分たちが立っているステージの雰囲気って大事だなと、それが音に表れていることでより感じます。この音源やほかの共演者の音は僕がミックスしたんですが、ほかのバンドは色が見えやすいところを、このSuspended 4thはずっと無色のまま。音のくすみみたいなものが聴いていて感じられるライブだったなと、ミックスしていてすごく感じました。そもそも特典としてライブ音源を出すということ自体がPIZZAからの提案で、自分たちは出そうと思っていなかったんですけど、「KARMA」ともマッチしていて面白い特典ですよね。

Sawada　絶対に売るぞ！という気合いを感じます。

Dennis　大体ライブ音源をリリースするときって、数日間のライブからいいテイクを選ぶじゃないですか。でも、この音源はCDになることをまったく想定していない、本当の意味でのライブ音源だなと思いますよね。

──スタジオ音源とライブ音源、これさえ聴けば今のサスフォーがダイレクトに伝わると思いますし、「KARMA」1曲だけでも次のアクション、次の作品が楽しみになります。

Sawada　それは一番うれしいですね。次が控えているので。

Fukuda　絶賛取りかかっているところです。

──2022年、ここから先の活動が本当に楽しみになりました。

Washiyama　何か起こりそうな予感をひしひしと感じているんですけど、それをこじ開けられるのが「KARMA」だと思うんです。再生回数や売り上げ枚数を気にするよりもまず、新たな人に刺さってほしい。それだけです。

Suspended 4th