Suspended 4th|路上ライブ発のタフで自由なロックバンド、PIZZA OF DEATHから初の全国流通盤リリース

Suspended 4thが7月24日にPIZZA OF DEATH RECORDSから1stミニアルバム「GIANTSTAMP」をリリースする。愛知県名古屋市栄でのストリートライブを中心に活動してきた彼らが、今作をもって晴れて全国デビューを飾る。

音楽ナタリーでは、ミニアルバムのリリースを記念して、Kazuki Washiyama(G, Vo)、Seiya Sawada(G)、Hiromu Fukuda(B)、Dennis Lwabu(Dr)にインタビュー。路上ライブで培った感性を武器に活動の場を大きく広げつつある彼らの実像に迫った。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 後藤倫人

サスフォーとPIZZA OF DEATHをつないだもの

──今作はPIZZA OF DEATHから全国流通されるんですね。PIZZA OF DEATHに関してはどんなイメージが?

Suspended 4th

Kazuki Washiyama(G, Vo) 彼(Sawada)がめちゃめちゃ好きなんです。

Seiya Sawada(G) はい。メロディックパンクのレーベルというイメージです。

──一般的にはそうですよね。

Washiyama PIZZA OF DEATHとはマインド的な部分がけっこう合ったというか。それまでいろんなところから話が来ていたんですけど、全然しっくりこなくて。自分らはストリート(路上ライブ)をやってるんで、お金の話はそこでどうにかなっちゃう部分がかなりあるんです。レコーディングするのも自分たちでやってるし、ミュージックビデオを作るチームも身近にいて。だからレーベルや事務所と手を組むメリットがあんまりなくて。そう思ってたんですけど、ある日PIZZAの人が急に現れて、サシで話す機会があったんです。そのときに「SATANIC CARNIVAL」(PIZZA OF DEATH主催のライブイベント)についていろいろ聞きました。自分らは去年の夏に「STREET MUSICIAN SUMMIT」というイベントをDIYでやったんですけど、運営の仕方とかDIY感とか「サタニック」と通ずるものがあるなあと勝手に思っていたので。そういうことをやってるレーベルだったら、けっこう自分らと話が合うかもしれないし、いろいろ面白そうなことできるなと思って、選んだ。決め手はそこですね。

路上ライブで培った経験

──最初のインタビューなので、まず基本的なことからお聞きします。今のメンバーになってどれぐらい?

Hiromu Fukuda(B)

Hiromu Fukuda(B) 3年目。現時点で2年半ぐらいですね。

──バンドとしての音とか個性というのは、いつ頃できあがったんですか?

Washiyama それはDennisが入ったのがきっかけとしてはデカいですね。Dennisが入る前も路上で活動していたんですけど、それまでは普通に歌モノのカバーとか自分たちのオリジナル曲で勝負してた。お客さんの足を止めさせるためというよりも、路上ライブをとりあえずやってる感じ。

Sawada 椎名林檎の「丸の内サディスティック」もやったね。

Washiyama でもDennisが入ってから、流行りの感じを取り入れてやるようになったんです。自分らの曲や歌モノじゃなく、「情熱大陸」のテーマ曲とかをカバーのメインにして。日本人でもわかりやすい曲から、ファンクっぽくてジャムっぽいのをメインにやるようになって。

──お客さんを引き付けるためにオリジナルじゃなくカバーをやるようになった?

Washiyama そうそう。

──そもそもストリートでやり始めた理由は?

Washiyama 自分にはギターの師匠がいるんですけど、その人のやっていたdoosというバンドにサポートギタリストとして入って、そのバンドがストリートライブをやるようになって。それが面白くて、メンバーそろってきたし、サスフォーでもストリートでやれるんじゃね?と考えるようになった。そのタイミングでFukudaくんが入って、そこが発端ですね。単純にライブハウスでしか活動しないのはあんまり面白くないなと思ってて。

──どうして?

Washiyama お客さんの目線が面白くない。ライブハウスだと、自分らを目的に来ている人たちとか友達が多いけど、でも路上だと見ず知らずの通行人が相手になりますよね。

──つまらなければすぐ立ち去るでしょうし。

Washiyama そうそう。だからそこで勝負できるところに惹かれた。

目標を模索しながら進んできた

──PIZZAと契約する前は、バンドをこの先どうしようとか、将来的な目標などは何かあったんですか?

Seiya Sawada(G

Sawada 漠然と音楽を長く続けるにはどうしたらいいのかということしか考えてなかったですね。

──CDを出して、いわゆるプロになって、ツアーで全国を回って大きな会場のステージに立つとか。そういうことを普通は考えますよね。

Sawada その普通って、長続きしない普通だなと思っていて。

Washiyama そう。Queenの映画(「ボヘミアン・ラプソディ」)観たときもすごい思ったよね。

Dennis Lwabu(Dr) 「ボヘミアン・ラプソディ」の中で「アルバムを出して、ツアー回っての繰り返し以外、ミュージシャンはやることないのか、うんざりだぜ」みたいなことを言ってて。それでメンバーが1回ケンカして、もう1回集まったときに、結局ライブをやって、あの映画は終わるでしょ。それを観て絶望した。

──絶望ですか!?(笑)

Washiyama 結局そこが、バンドにとって最大のゴールだと思うと、夢がないなって思っちゃったんですよね。

──せいぜいライブ会場が大きくなるぐらい?

Sawada (大きな会場で)やりたいですけど、そこも通過点でしかない。最終的にどうなるのかわからないけど、目標を探しながらやってる感じですかね。

──将来的にこうなりたいという夢は、まだバンドとしては見つけられていない?

Washiyama 俺が最近言ってるのは、「いい形で活動休止したいね」というのはずっと言ってます。

──辞めることを前提にして、辞め方を考えると。面白いこと考えますね。

Dennis Lwabu(Dr)

Dennis 1回行けるところまで行って、そこから各々がどうなっていくのかをお互いに見られたら面白いなと。

Washiyama そうそう。「もうお金なくなってきたねー」「じゃあやるかー」みたいな。「すいません、じゃあさいたまスーパーアリーナ押さえてください」なんてノリで(笑)。

──マイペースで音楽を続けていければいいな、ぐらいの。

Washiyama というか、消耗せずに実のあることをずっとできたらいいなって感じ。

Sawada アルバムを出してツアーをやって、そのあとまたアルバムを出してを繰り返すというのは、自分たちの音楽生命を削りながらやるということなんですよ。やりたいことはそうじゃないだろうと。

Washiyama そういう意味では、路上をやってるときはめちゃめちゃニュートラルなんで。ツアーを回ってアルバム出すよりも、路上してたほうが生産性がある。

Sawada 一番ピュアな形で音楽ができると思います。

Washiyama ライブハウスだと、お客さんが2000円、3000円のチケット代を払って、俺らにその価値を見い出しに来るじゃないですか。でも路上では全然そういうことがないので俺らが気張ってやる必要もないし。価値がないと思ったら払わなくていいけど、いいなと思ったらCDを買って帰ってくれる。そういう状態が一番ニュートラルだと考えていて。そこからビジネスに向くのか、自分らが楽しい方向に向くのかが、基準としてはずっとあります。