Superflyがニューシングル「Ambitious」をリリースした。
放送中のTBS系 火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」の主題歌となっている表題曲に加え、公開中の劇場アニメーション「プロメア」の主題歌「覚醒」およびエンディング主題歌「氷に閉じこめて」を収録した本作。タイアップをきっかけに、これまで見えていなかった新たな表情が鮮やかに提示されることとなったそれぞれのナンバーは、Superflyの尽きることのないクリエイティビティの奥深さを改めて実感させる仕上がりとなっている。
9年ぶりとなる「FUJI ROCK FESTIVAL '19」への出演、そして9月からはアリーナツアーの開催も決定しているSuperfly=越智志帆に本作についての話を聞いていく。
取材・文 / もりひでゆき
夢と仕事を“=”で結ぶプレッシャーを取っ払いたい
──ここ最近のSuperflyは新たな表情を積極的に詰め込んだ楽曲を次々とリリースされていて。今回のシングル「Ambitious」に収録される3曲もまたすごく新鮮な聴き心地がありました。
ありがとうございます。いろいろなタイアップのお話をいただく中で、その作品のテーマやイメージをヒントにしつつ、そこから自分の思いがグーッと広がって新しいものを作れている実感は確かにありますね。
──新しい表情を提示することに対して気負っているわけでなく、タイアップなどとの出会いを通して自然と表現の幅が広がっている感じ?
そうですね。日々の生活の中で感じていることを、関わらせていただく作品をきっかけに引き出してもらえているというか。私の中の新たな引き出しを開けてもらえているような感覚があります。あと最近は自分で詞曲を書いたり、アレンジにも関わるようになってきているので、今まで以上に自分の色が出やすい環境にもなっているんですよね。そういう部分が昔とはちょっと変わったところかなとは思います。
──デビューから12年を経てもなお志帆さんの中には開けてない引き出しがまだまだあるわけですね。
だと思います。だからもっともっと開けたいし、誰かに開けてほしいです(笑)。
──表題曲「Ambitious」はTVドラマ「わたし、定時で帰ります。」の主題歌として書き下ろされたもの。幅広い世代に響く曲ではありますが、働いている人たちには特にグッとくる内容だと思います。
よかった! ドラマサイドからも「応援歌を作ってください」と言われていたので、聴いてくださる方を励ませる曲になっていたらいいなという願いはありますね。実はこの曲の歌詞、もともとは小学生くらいの子供目線で書いたものだったんですよ。これから大きくなっていく子供たちが夢や希望を抱けるような曲にしたい気持ちがあったので。でも最終的にはもうちょっと視点を変えて、私の等身大に近い雰囲気を入れて仕上げていったんですけど。
──視点が変わったとは言え、夢や希望、憧れというテーマはしっかり残されていますよね。そこがこの曲でもっとも伝えたかったことですか?
そうですね、うん。今回、働くことをテーマにしたドラマ主題歌のお話をいただいたことで、すっごくいろいろ考えたんです。働くこととは、仕事とはなんだろうって。でも私の場合、そもそも働いているという感覚が人よりは薄いと思うんですよ。会社勤めをしているわけでもないし、自分の好きなことをやっている人間なので。だからどういう視点で歌詞を書くかでかなり悩んだんですけど、参考にしようといろんな本なんかを読んだりする中で、最近の10代の学生さんたちにはやりたいことが見つからない、夢を持てない子が多いということを知って。で、それはきっと“夢=仕事”だと思ってるからじゃないかなと思ったんですよ。
──なるほど。確かに若い頃はそう考えがちかもしれません。
夢と仕事を“=”で結んでしまうと、すごくややこしいことになるし、その人にとっては大きなプレッシャーにもなるじゃないですか。だったら、そのプレッシャーを取っ払えるような曲を作りたいと思ったんですよね。同時に、若い世代が何かに憧れたり夢を抱いたりしやすくなるような社会を、我々大人たちが作っていくことが大事なんじゃないかなって。そういう意味も曲に込めたいと考えていました。
あくまでも自分が感動できるかどうか
──大サビの「ゆっくり歩いてゆけばいい / この手になんにもなくたって」というフレーズは、学生さんたちはもちろん、大人たちにとっても温かく、頼もしく響いてくるメッセージだと思います。
夢が見つかっていなくても別に焦る必要はないなと私は思うんです。小さい頃、「あなたの夢はなんですか?」って何度も聞かれた記憶があるけど、それってすごくイヤだったんですよ(笑)。世の中にどんな仕事があるかもよくわからないうちにそんなこと聞かれてもね、プレッシャーになるだけですから。生きていれば自然と何かに憧れて、夢を抱ける瞬間が必ず来るはず。それは大人であっても同じだし、別におじいちゃんになってから夢を抱いたっていいわけですから。
──そんな歌詞に込められた思いは、心をグッとフックしてくる強力なメロディで聴き手へと迫ってくる感じもあって。
ちょっと物申しているような、誰かにしっかりメッセージを放つような性質を持ったメロディではありますよね。だからこの曲はもともと、ロックなアンセム曲にしようっていうイメージが自分の中にはあったんです。ロックなリフを付けてみてもいいかな、とか。でも今回はドラマとのマッチングも考慮して、ポップな雰囲気に落ち着いていった感じではあるんですけどね。
──「Ambitious」のアレンジは島田昌典さんが手がけられていますね。
曲の方向性をポップで美しく、感動的なものにしようと決めた段階で、島田さんにお願いすることに決めました。ご一緒するのは今回が初めてなんですけど、すごく上質なアレンジをされる方だなという印象はずっと抱いていたんですよ。派手なアプローチではないけど、美しくて奥行きのある作品を数多く手がけてらっしゃるので、安心して委ねられたところはありました。最初にこちらからイメージをいくつかポンポンと提示させていただいたところ、ほぼ今の完成形に近いアレンジを上げてきてくださいましたね。で、そこからさらに何度も意見のキャッチボールを繰り返し、調整しながら仕上げてもらった感じです。
──アレンジに関しても一切の妥協なく、アレンジャーさんと共に徹底的に練り上げていく感じなんですね。
最近はそういう感じになっていますね。今まで以上に細かい部分まで気になるようになってきてしまったというか(笑)。私が歌っていない部分に関しても、そこのアレンジはもはや作曲でもあると思うんですよ。例えば、最近はあまりないけどギターソロなんかにしても、ギタリストがただ気持ちよく手癖で弾いているのではなく、もう少し作曲的なアプローチというか、ちゃんとしたメロディラインとして成立していてほしいんです。その感覚は昔からあったものだけど、最近はより強まっているからいろいろ言わせていただいているんですよね。
──たとえ信頼しているアレンジャーさんであっても簡単に丸投げはしないと。
そうですね。今回に関しても、もともとロックなイメージのカラッとしたコード進行を、より儚くて切ない雰囲気に寄せるように変更していただいたりもしましたし。そこはあくまでも自分が感動できるかどうか、切ないと感じるかどうかを大切にして意見をお伝えするようにはしていました。
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