音楽ナタリー PowerPush - Superfly

越智志帆の中に生まれた“変化”

制作体制の変化

──デビュー当初のメンバーであり、愛媛から上京して以来、少なくとも外からは二人三脚でずっと音楽をやってきたように見えていた多保(孝一)さんの参加している曲が、結果的に今回のアルバムでは昨年リリースされたシングル曲「Live」だけです。その理由について詳しく教えてもらいますか?

私と多保くん、それとプロデューサーの蔦谷好位置さん。その少人数のチームというのがこれまでのSuperflyの核にあったわけですけど、その3人って仲間でもあるんですけど、ちょっとライバル関係みたいなところもあったんですよ。

──へえ!

頻繁に3人で飲んでいろんな話をしたりとか、そういう関係ではなくて、作品をリリースするごとにそれぞれの持ち場で自分のやるべきことを完璧にやるっていう、役割がきっちりと分かれてしまっていて。それは、それぞれの環境の変化も含めて仕方がないことだったし、そうすることによってこれまでいい作品を生み出すことができたと思うんです。ただ、これからもっとポジティブでいいオーラを持った曲を1曲でも多く作っていくにはどうしたらいいかって考えたときに、そのやり方が私としてはちょっとギリギリになってきていたんですね。

Superfly

──ギリギリというのは?

新しいものを作ろうと思ったときに、これまでと同じ作り方ではいい変化を起こしにくい気がして、もう一度、どうでもいいようなことを話し合えるような仲間として距離を縮めるか、それとも一度離れるか。そのどっちかしかないと思いました。やっぱり長年続けてきた体制でしたからね。改めて3人の役割を変えることってかなり難しく感じてしまったんです。

──体制を変えられるということは大きな決断ですよね。

多保くんの書いた曲は、今までの私にとってものすごく力強かったんですよ。彼のメロディをこの世界に広めていくことが、私の使命だとも思っていたから。それがあったから、プレッシャーのようなものも感じずにここまでやってこれたというのもあって。だから今回、初めてプレッシャーを感じるようになったんです。この1年間は、「今の自分にできないことはなんなんだろう?」って考えて、その「できないこと」を「できること」に変えていく時間でしたね。

この曲が「今のSuperflyだ!」

──その話を聞いたあとに、改めて「Beautiful」のようなものすごく力強い自己肯定を歌った曲を聴くと、より感慨深いものがありますね。

本当にそうなんですよ! アルバム制作の終盤に、蔦谷好位置さんと一緒に作ったこの曲がもしできていなかったら、このアルバムは完成してなかったと思います。そのくらい自分にとって大きな意味を持つ曲で。

──なにしろ、「世界に一つの 私に幸あれ」ですからね(笑)。

極端ですよね(笑)。でも、この曲が「今のSuperflyだ!」って答えになってくれたんです。そして、その答えに至ったのは、このアルバムの制作でいろんなミュージシャンたちの情熱に触れることができたからで。だから今は、とても晴れやかな気持ちです。

──アルバムの最後を締める「いつか私は歌をうたう」にも、その前向きな気持ちはとてもよく表れていますね。

これはこのアルバムの起点になった曲なんです。

──あ、そうなんですね。

ひさしぶりに蔦谷さんと飲みに行って、そのときに酔っぱらってベロベロになってた私に、「こんな曲、作ってみたんだ」って照れくさそうに渡してくれたのがこの曲で。もちろんそのときは歌詞はなかったんですけど、最初に曲を聴いたときに、「なんて希望があるメロディなんだろう」って思いました。これまで私は「明日は来ない」と思っていて、それで今日だけをがんばって生きてきたんですけど、この曲を聴いて「ああ、明日って来るんだなあ」って思わされて。そこから「Tomorrow never dies」ってフレーズが浮かんだんです。それでようやく私自身の気持ちが先に進むことができたんですよね。

──それまでは「明日は来ない」と思ってたんですか(笑)。自分からすると、もし今日が最後だと思ったら、ただ自堕落になっちゃうだけな気がするんですけど。

(笑)。私の場合、今日を一生懸命がんばったら、そこで初めて明日が来るって思えるんです。ツアー中は特にそうですけど、一生懸命やっている今日が途切れた瞬間に明日が来なくなるから、だから今日をがんばれるっていう。結局は未来を信じているってことだと思いますけど、目の前のことをしっかりやることだけをいつも考えていて。

──小さなことから……。

コツコツと(笑)。

ニューアルバム「WHITE」 / 2015年5月27日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD2枚組] 3888円 / WPCL-12089~90
通常盤 [CD] 3240円 / WPCL-12091
収録曲
  1. White Light
  2. Beautiful
  3. 色を剥がして
  4. On Your Side
  5. A・HA・HA
  6. Woman
  7. 脱獄の季節
  8. リビドーに告ぐ
  9. 愛をからだに吹き込んで
  10. Live
  11. Space
  12. 極彩色ハートビート
  13. You You
  14. いつか私は歌をうたう
初回限定盤付属ミニアルバム収録曲
(カッコ内はオリジナルアーティスト)
  1. Blue ~こんな夜には踊れない(桑田佳祐)
  2. Sweetest Music(竹内まりや)
  3. 帰れない二人(井上陽水)
  4. スローバラード【Live】(RCサクセション)
  5. 楽しい時-Fun Time(佐野元春)
Superfly「WHITE」リリース記念 Free Live

2015年5月30日(土)大阪府 大阪城西の丸庭園
OPEN 16:00 / START 17:00 / END 18:00(予定)

※雨天決行、荒天中止。

Superfly(スーパーフライ)

2004年に結成。越智志帆のパワフルかつソウルフルな歌声、60年代、70年代の洋楽を思わせるブルージーなサウンドが注目を集め、2007年4月にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。その後、多保孝一がコンポーザーとしての活動に注力すべく表舞台から退き、越智のソロユニットとなる。2008年に発表した1stアルバム「Superfly」、2ndアルバム「Box Emotions」がともにチャートで1位を記録。2009年12月には初の日本武道館ライブを成功に収め、その後も多くのヒット曲を連発。2011年には3rdアルバム 「Mind Travel」 でアルバム4作連続1位を達成し、初のアリーナツアーも大成功に収める。2015年5月、2年8カ月ぶりのオリジナルアルバム「WHITE」をリリースした。