SUPER★DRAGON|さよなら2020年 “黒の衝撃”を置き土産に

9人組ミクスチャーユニット・SUPER★DRAGONにとって、2020年は結束と攻めの1年だった。

春に行われるはずだったツアー「九龍領域」が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、ファンとの直接の再会の機会を奪われた9人は、オンラインで実施可能な活動を積極的に展開。毎日インスタライブで発信を行い、配信ライブが実施されるごとにセルフタイトルトラック「SUPER★DRAGON」や「SAMURAI」といった新曲を配信リリースしてきた。

そして結成から5周年を迎えた9月、彼らは一から制作に携わった意欲作「Burning in the nights」を発表する。12月23日にリリースされる新作ミニアルバム「Burn It Black e.p.」は、こういった2020年の活動を総括するような作品で、メンバーの古川毅はミニアルバムを「2020年への“置き土産”」と称した。

リリースに際し、音楽ナタリーではメンバー全員にインタビュー。9人が今抱える思いを詰め込んだ「Burning in the nights」の話題を中心に、今年の活動について振り返ってもらった。

取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 斎藤大嗣

ダンスに重きを置いていた「九龍領域」

──スパドラは今年の3月から4月にかけて、全国ツアー「九龍領域」の開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全公演が中止となってしまいました。皆さんにとって、これはすごく大きな出来事だったんじゃないかなと。

池田彪馬 はい。だって毎日リハーサルやってたよね。

伊藤壮吾 年が明ける前からね。

彪馬 「九龍」では「徹底的にダンスを見せよう」と、ダンスにすごく重きを置いて準備を進めていたんです。僕たちのことを知らないプロのダンサーさんをお呼びしてダンスをチェックしてもらい、1から直してもらったり。そういう時間を大切に、1日1日を重ねていたので……。

志村玲於 ダンスだけ見せる場面も3曲くらいの中に作ってね。定番曲の「Mada' Mada'」なんかもテイストを変えて、1人ひとりが目立つようなダンスパートを準備していたんですけど、見事にやられたよね。

──しっかりと準備を重ねていただけに、中止が決まったときはショックも大きかったのでは?

田中洸希 そうですね。大きかったです。

古川毅 でも、ただうなだれててもしょうがないので、自分たちでいろいろと考えました。「しばらくこういう状況が続きそうだけど、ファンの皆さんと心が離れるのはよくないよね。自分たちからアプローチしてコミュニケーションを取っていかないと」ということで、毎日インスタライブをしたり、毎週末には配信のイベントをするとか、そういう活動を徹底してやれたのはよかったかなと。

──9人が日替わりでインスタライブをしていたのはすごく印象に残っています。毎日スパドラからの発信が何かしらあるので「すごいな」と思っていました。

ジャン海渡 ステイホーム期間中は何よりも、グループについて考える時間をすごく持てましたね。9人それぞれが「どうすればこのSUPER★DRAGONをもっとよくできるか」ということを考える、大切な時間になったと思います。グループのために生かせることを始めたメンバーもいるし、それぞれが成長するための期間でもあったんですよね。

──なるほど。

ジャン 自分もスパドラのあるべき姿や、その中で自分はどういう立ち位置なのかということを考えました。で、ギターの練習を本格的に始めてみたり。和哉もベースを始めたりとかね。

──和哉さんはなぜベースを始めたんですか?

松村和哉 バンドの中でリズムを司る楽器に触れることは、自分がこの先ラップのスキルを磨いていく中、音楽をやっていく中で生きるだろうなと思ったんです。シンプルにカッコいいからやってみたかったというのもありますけどね、今も飽きずにやっていますよ。あと自分が思ったのは、自粛明けにひさびさにリハをやったとき、玲於くんの踊り方がすごい変わってた。研究したんだろうなって。

玲於 時間だけは本当にあったからね。「知識を広げていこう」と思って、海外の方のダンス動画を見漁ってました。今海外ではどういうノリが来ているんだろうということを知りたかったんですけど、調べているうちにそもそもダンスってなんだろう?と。ダンスって振り付けや型どうこうじゃなく、カルチャーじゃないですか。今、海外のヒップホップのダンスカルチャーはどうなっているのかという部分も、イチから研究していましたね。自分も見よう見まねで部屋で踊ってみたり。そんなことばっかりやっていました。

これからのことも俺らはちゃんと考えているよ

──そして、6月には119日ぶりのライブが生配信され、そこで新曲「SUPER★DRAGON」が初披露されました。セルフタイトルの曲というのは、そのグループにとって特別な意味を持つ曲だと思いますが、なぜこのタイミングで出すことになったんですか?

 「これが自分たちだ!」という意思表示を、このタイミングでするべきだと思ったんです。家の中で時間を過ごす人が大多数という状況ですし、まだスパドラを知らない人たちに見つけてもらえる可能性も高くなっていると思えたので。“入り口”を1つ用意したような感覚です。「今はこういう状況だけど、自分たちは全然絶望してないよ」という思いを見せるのにもふさわしい曲になったと思いますし。

和哉 このコロナ禍がいつ終わるのか誰もわからないけれど、そこで俺たちが「時代を変える」という前向きな意思表示をすれば、今の困難を乗り越えたいという思いだけじゃなく「その先を見ているよ」ということも伝えられますし、ファンの方も安心できるかなと思ったんです。「これからのことも俺らはちゃんと考えているよ」ということを伝えたかったですね。

柴崎楽 今回のミニアルバムの中でも特に明るいパワーを持っている曲だと思います。ダンスも9人が集まってから一気に広がったり、前に進む感じを表していて。9人組だからこその動きもすごく特徴なんです。フォーメーションダンスは僕たちの強みの1つだけど、それがすごく生かされている感じがします。

洸希 落ちサビでは、みんなでガッガッと力強く動いたりね。9人が一体になって踊る曲だなと僕は思っています。

飯島颯 9人のユニゾンの動きなんですけど、目の前の壁に立ち向かっているようなイメージで。両手で4と5を表現して、それを重ねたポーズで“破壊”していくんです。本当に強い気持ちを表現しているから、表情なんかも力強さを意識して踊っていますね。

 2019年は感情をテーマにした「2nd Emotion」というアルバムのリリースから始まって、個々のアイデンティティをテーマに掲げた「3rd Identity」というアルバムを作って、最後は(グループ内ユニットの)ファイヤードラゴン、サンダードラゴンそれぞれの「TRIANGLE」というミニアルバムで終わるっていう……9人の個々の可能性とか、ユニットで2つに分かれたときの個性や色を試した、すごく実験的な年だったなって思うんです。そこから2020年になって、じゃあ今度は「九龍領域」に向けて……チームとしての力を上げるためにがんばろうぜと。ツアーはなくなってしまったけど、次の動きとして発表する曲が「SUPER★DRAGON」だったので、ダンスでもチーム力を見せたかった。9人でまとまったときの強さみたいなものが、頭から爪先までしっかりと見せられる内容になっていると思います。曲が終わり、音が鳴り終わったあとも全員で呼吸を合わせて動く振りがあるんですけど、そういうのも初めてだよね?

彪馬 そうだね。

 そういう呼吸の使い方で、僕らは9人で生きている……“SUPER★DRAGONが生きている”ような動きが表現できているんじゃないかなって思います。

配信ライブだからこそ普段使えないロケーションで

──「SUPER★DRAGON」が配信リリースされ、7月には廃工場を舞台にした「SECRET BASE」、9月には結成5周年を記念した「5th anniversary ONLINE LIVE」と、生配信ライブが2回開催されました。どちらもすごく作り込まれた見応えのある内容で、入念に準備を重ねてきたんだなと感じられて。皆さんの熱意がしっかりと画面の向こうに伝わるものになっていたと思います。まず「SECRET BASE」について聞かせてもらえますか?

壮吾 普通にライブをやっただけでは飽きられてしまうよなという思いもありますし、オンラインという制限がある中でスパドラの色をどうやって出すか考えたとき、僕らの原点とも言える廃工場でライブをやろうとなりました。廃工場にファンのみんなを入れることはできないから、今だからこそできるシチュエーションなのかなと。工場全体を使ってパフォーマンスしたのは初経験だったので、やれてよかったなと思います。

──2階建ての工場の中をダイナミックに使っていましたよね。この日のライブは、皆さんのパフォーマンスに熱気がみなぎっていたのがすごく印象に残っています。

和哉 「配信ライブだからファンのみんなに会えない」という捉え方をしたらすごくネガティブだと思うんですけど、配信ライブだからこそ普段使えないロケーションでいろんなことができるんだと意識すれば、それだけで自分の中のマインドがポジティブな方向に切り替わるから。そういう思いが、ライブをしている自分たちに出ていたのかなと思います。

洸希 ただ、廃工場ならではの見せ方やカメラワーク、「BADASS」でやったワンカメショーとかは正直初めての体験だったので、1つひとつへの意識をめちゃくちゃ高めて、リハから何から本気でやっていましたね。1つミスったら構成が崩れてしまうので。

玲於 リハーサル、過去イチ長くやったよね。「BADASS」は、わけわかんなくなりました。方向感覚が(笑)。

 僕たちも大変なんですけど、たぶんカメラマンさんが一番大変(笑)。

彪馬 あれは本当に感謝だよね……。