ナタリー PowerPush - supercell
似た者同士の濃厚音楽談義
海外の流行に追従したモノが日本でも3年遅れで出てくる
──さっき中野さんがおっしゃってたような、1枚作品を作り終わると、世の中のトレンドも含めて自分の中で新たなハードルが出てくるっていう感覚は、ryoさんにもありますか?
ryo そうですね。例えば今度、THE STROKESの新譜が出たりするじゃないですか。そうやって海外の大御所が新作を出してくると、その流行に追従したモノが日本でも3年遅れで出てくるって言うじゃないですか。そういうのは考えたりはしますね。
中野 え、3年遅れなの?
──そう言われてますよね。例えば2000年代半ばにUKで盛り上がったニューレイヴが、日本では2009年くらいからシーンとして生まれてきたり。わりと的を射た言説だと思う。
ryo 最近だとMUMFORD & SONSがグラミー賞を獲ったじゃないですか。あれってクリックがない音楽なんですよね。ボーカルの人がサブキックみたいなのでドーン、ドーン、ドーン、ドーンって四つ打ちを踏みながら歌うんですけど、クリックじゃなくてボーカルの人のタイム感でリズムができていて。それがすごく新しいなあとは思ったりしてますね。あと構成が面白い。A、B、サビって行ったあとでAメロに戻ってきたりしない歌モノが増えてて。
中野 へえ。
ryo そういうのはチェックしてますね。
──やっぱり海外のポップだったりロックの流れはちゃんとアンテナ張ってるんですね。
ryo まあ好きなジャンルとそうじゃないものはありますけどね。そこに日本的なテイストを加えると、どういうエモーショナルさが出るのかな?とか。そういう中でも違うジャンルみたいなものを目指していけたら面白いかなと思ってます。
全部を自分1人ではできないから、誰かと一緒に音楽を作る
──ちなみにryoさんは、自分で歌いたいとかバンドをやりたいっていう欲求はあるんですか?
ryo バンドやりたいっていうのは思いますよ。でもできない。もし自分が歌がうまかったら、1人でやってると思うんですよ。だから自分では、やっぱり自分はシンガーソングライターのできそこないだっていう感覚があって。
中野 でもそれはみんな一緒だと思うよ。俺だってもし自分で歌えたら、川島くんと一緒にやってなかったかもしれない。逆に川島くんも、俺が一緒にやらなければ音楽が形にならない人だったりするわけで。それが魅力なんだと思う。全部を自分1人ではできないから、誰かと一緒に音楽を作るっていうさ。だから俺もryoくんも、ある意味同じ。俺が川島くんを選んだのと同じように、ryoくんは最初はVOCALOIDってものをパートナーに選んだし、今はほかのシンガーを選んでるっていうことなんじゃないかと思うけど。だからそんなに卑下した言い方しなくていいと思うよ。
ryo そう思えるといいんですけどね………なかなか自分に自信は持てないし、健全だなって思えないんですよ(笑)。ただ、もちろん自分が作ってる音楽に対しては、絶対に嘘をついてないから。それを人がどう受け取ろうかっていうのは、あまり考えてないというか。
中野 でもそれって、まったく不健全じゃないよ。だって思い描いた通りの人生を手に入れる人なんて、本当に少ないと思うから。むしろそういうフラストレーションをちゃんと音楽っていう表現にぶつけられるっていうのは、すごく健全だと思う。
ryo 確かにそうですね。
1曲1曲ちゃんと作っていくってことにカタルシスを感じる
──1つ聞きたいんですけど、そういうryoさんが今、supercellとEGOISTをやっていて一番カタルシスや喜びを感じる瞬間っていつなんですか?
ryo それはやっぱり、楽曲ですね。1曲1曲ちゃんと作っていくってことに関しては、すごくカタルシスを感じてますし。そこには全部の執念を詰め込んでるので、本当に1ミリも諦めず、妥協せずに作ってると自信を持って言えるので。
中野 それってすごくカッコいいじゃん。
ryo そう思ってもらえるとうれしいですけど(笑)。ただアーティストとしての在り方みたいなことを考えると、自分がやってることって甘いなって思っちゃうんですよね。
──なるほど………中野さん、やっぱり似てますね(笑)。
中野 そうですね、まるで昔の自分を見ているような気がします(笑)。
ryo いやいや(笑)。
──私みたいな音楽ライターが1つ言えるのは、そういうことを言うアーティストこそ、素晴らしい音楽を作るケースが多いってことですね。
中野&ryo あははは(笑)。
──今日はなかなか聞けない話が満載で、面白かったです、ありがとうございました。
中野 本当だよね。これってどんな記事になるんだろう……(笑)。
ryo 楽しみにしてます(笑)。
- EGOIST ニューシングル「All Alone With You」/ 2013年3月6日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8238~9
- 通常盤 [CD] 1223円 / SRCL-8240
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CD収録曲
- All Alone With You
- elbadaernU
- All Alone With You (TV Edit)
- All Alone With You -Instrumental-
- elbadaernU -Instrumental-
- All Alone With You (TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤DVD 収録内容
- 「All Alone With You」Music Video
- 「PSYCHO-PASS サイコパス」Ending ノンクレジットムービー
- supercell ニューシングル「The Bravery」/ 2013年月日発売 /
- 初回限定盤A [CD+Blu-ray] 1890円 / SRCL-8241~2
- 初回限定盤B [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8243~4
- 通常盤 [CD] 1223円 / SRCL-8245
-
CD収録曲
- The Bravery
- She is my senior
- 青空
- The Bravery (TV Edit)
- The Bravery -Instrumental-
- 青空 -Instrumental-
- The Bravery (TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤DVD / Blu-ray 収録内容
- 「The Bravery」Music Video
- BOOM BOOM SATELLITES アルバム「EMBRACE」/ 2013年1月19日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+USB] 4750円 / SRCL-8162~4
- 初回限定盤 [CD+DVD+USB] 4750円 / SRCL-8162~4
- 通常盤 [CD] 3059円 / SRCL-8165
supercell(すーぱーせる)
コンポーザーのryoと複数のイラストレーター、デザイナーによって構成されたユニット。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。その人気はインターネットを通じて爆発的に広がり、2009年3月に待望のメジャーデビューを果たす。1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、翌年の「第24回日本ゴールドディスク大賞」にて「ザ・ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞した。続く1stシングル「君の知らない物語」からはゲストボーカルにnagiを迎える。「君の知らない物語」はアニメ「化物語」の主題歌に起用され、こちらも大ヒットした。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリースし、オリコン週間ランキングで3位を獲得。その後、新ボーカリストを募集するオーディションを敢行し、2000人を超える応募者の中から福岡県出身のこゑだを選出。2012年12月にアニメ映画「ねらわれた学園」のオープニングテーマとなるシングル「銀色飛行船」をリリース。2013年3月にテレビアニメ「マギ」のエンディングテーマを含むニューシングル「The Bravery」を発表した。
BOOM BOOM SATELLITES
(ぶんぶんさてらいつ)
中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表した。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2004年には映画「APPLESEED」の音楽を手がけ、その後もさまざまな映画やアニメに楽曲を提供。デビュー15周年を迎えた2012年6月には約3年ぶりのシングル「BROKEN MIRROR」をリリースした。2013年1月、2年7カ月ぶりのオリジナルフルアルバム「EMBRACE」を発表し、自身の楽曲のパーツを提供して、ニコニコ動画とコラボしたリミックスコンテストを開催するなど型にはまらない活動を展開。しかし同年1月、川島が脳腫瘍治療のためしばらくライブ活動を休止することを発表。そして2月末に、5月3日の日本武道館公演から活動を再開させることを宣言した。