ナタリー PowerPush - supercell×中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)

似た者同士の濃厚音楽談義

「何を使ってるんだろ?」って調べて同じシンセを買った

──今のクラブシーンも、基本的にその価値観の中でどう進化と発明を図るかっていう流れの中にありますよね。

中野雅之

中野 うん。音楽上は何も起きないんだけど、聴いてる人の中で何かが起きるってすごく素敵なことだなと、僕は思うんですよね。でも、今の若いリスナーはそれとは真逆なものを求めている子が多い。特にryoくんのファンはそういう人が多いと思うから、彼らにも僕みたいな音楽の面白さをわかってほしいなと思って、(リミックスは)2曲ともがんばってみたんですけど………どうでした?(笑)

ryo 最高でした、本当に。自分も高校くらいのときは普通の歌モノを聴いてたんですけど、そこにBOOM BOOM SATELLITESが入ってきて「すごくカッコいい!」って思えたんで。ということは、自分の音楽を好きな人たちもきっとそう感じてくれるはずだと思うから、触れてほしいなと思って……だからリミックスしていただけて本当にうれしかったんです。

──基本的にryoさんの楽曲は、約3分間という非常にコンパクトな形の中でポップスとして効果的に設計を施されたものが多いと思うんですけど、それがリミックスを通して別の形を提示されたときに、どんなことを感じましたか?

ryo 単純に感動したのもありますし、あとすごくテクニカルな部分に目がいって。「このシンセ、何を使ってるんだろ?」って調べて、すぐに同じシンセを買って研究したり(笑)。だから今、かなりPREDATOR(ROB PAPENのシンセソフト)使い、うまくなってると思います。

中野 もはや俺よりもうまそうだよね(笑)。

ryo いやいや(笑)。でもリミックスにかかわらず、BOOM BOOM SATELLITESの新譜が出るたびに、かなり細かく音や展開、あと「この曲はどういう思想で作られてるんだろう?」とかも研究してますね。かなり情報収集させてもらってます(笑)。

中野 あははは(笑)。

ryoのリミックスは「『UMBRA』の頃の自分たちっぽいな」

──ちなみに、ryoさんが手がけた「Broken Mirror」のリミックス(リミックスベストアルバム「REMIXED」収録)はどうでした?

中野 「UMBRA」の頃の自分たちっぽいなと思って、そこがryoくんらしいなと思った。ブレイクの扱い方とかディレイとか、懐かしいなと思ったくらい(笑)。

──昔の自分を見ているような?

中野 うん(笑)。

ryo そこまで完成度高くないですけど(笑)。「UMBRA」のときって、ディレイとか音の配置が今とは違った意味で神がかっていて、同じことをやろうとしてもぜんぜんうまくいかなくて。音源を死ぬほど聴き込んだり、機材とか制作手法についてのインタビューを読んで研究して実践してみたんですけど、なかなか(笑)。それでも、今できる自分の最大限な方法でああいう形になったという感じですね。

──ryoさんは、そうやってBOOM BOOM SATELLITESの音楽から細かくいろんなものを吸収していきながら、ご自分が作る音楽は非常にポップス然とした佇まいになっていく。ここにはどういうメカニズムが働いてるんですか?

ryo 自分でもよくわからないんですけど、ブンブンの音楽をカッコいいなと思うのと同じ嗜好で歌だけにフォーカスしていくと、リズムを立たせてはいけないというか、リズムよりもシンコペーションやコードの感じで持っていく方向になっていくんですよね。

中野 へえ、なるほど。

ryo だから自分の作り方としては、ブンブンを聴いたときの「こういうときはこうしたらカッコいいんだ」っていう感覚のまま、それをコードや展開に持っていって見つけていくという感じ。そうするとまあだいたい2、3回は失敗するんですけど、最終的にうまくいくんですよね。

もともと歌モノがぜんぜんわからなかった

──私はこれまでもお2人それぞれにインタビューしてるんですが、ryoさんにインタビューしたときにクリエイターの性質として中野さんと非常に近いなと思ったことがあって。それは、「ひとつのメロディに対してあらゆることを試す。その上で完成に至る」っておっしゃってたことなんですよ。

ryo はい、そうですね。

中野 確かに、メロディに当てていく和声とかテンションとか、相当試してるよね? それはリミックスのときにバラで素材をもらったときにすごく思った(※リミックスの際はたいてい歌、ギター、リズムなどすべてのトラックが分かれた音源データがリミキサーに渡される)。

ryo でもそれも単純に、中野さんにすごく影響されてるからなんですよね(笑)。そのこだわりを、自分の音楽を好きな人が少しでもわかってくれるとうれしいなと思うんですけど。

中野 でもさ、普通こういうコード感豊かでメロディアスなポップスを作ってる人って、「師匠は山下達郎さんです」とか「実はSTEELY DANが一番好きなんです」って言う人も多いじゃない? ryoくんはそういうのはないの?

ryo 自分は、もともとはそういう歌モノっていうのがぜんぜんわからない人だったんですよ。THE BEATLESを初めて聴いたときも「なんてつまらない音楽なんだ」と思ったくらいですし(笑)。歌モノよりもリズムが立ってるものが好きで、コードとかなくていいと思ってたくらい。だからコード進行が豊かとか、3秒に1回何かが起こるみたいなJ-POP的な展開も、昔の自分にとってはむしろ邪悪な存在だったんです(笑)。それがなぜ、今こうなってるのかは自分でも謎なんですけど。

中野 ほんと謎だよ!

EGOIST ニューシングル「All Alone With You」/ 2013年3月6日発売 / Sony Music Records
初回限定盤 [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8238~9
通常盤 [CD] 1223円 / SRCL-8240
CD収録曲
  1. All Alone With You
  2. elbadaernU
  3. All Alone With You (TV Edit)
  4. All Alone With You -Instrumental-
  5. elbadaernU -Instrumental-
  6. All Alone With You (TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤DVD 収録内容
  • 「All Alone With You」Music Video
  • 「PSYCHO-PASS サイコパス」Ending ノンクレジットムービー
supercell ニューシングル「The Bravery」/ 2013年月日発売 /
初回限定盤A [CD+Blu-ray] 1890円 / SRCL-8241~2
初回限定盤B [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8243~4
通常盤 [CD] 1223円 / SRCL-8245
CD収録曲
  1. The Bravery
  2. She is my senior
  3. 青空
  4. The Bravery (TV Edit)
  5. The Bravery -Instrumental-
  6. 青空 -Instrumental-
  7. The Bravery (TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤DVD / Blu-ray 収録内容
  • 「The Bravery」Music Video
BOOM BOOM SATELLITES アルバム「EMBRACE」/ 2013年1月19日発売 / Sony Music Records
初回限定盤 [CD+DVD+USB] 4750円 / SRCL-8162~4
初回限定盤 [CD+DVD+USB] 4750円 / SRCL-8162~4
通常盤 [CD] 3059円 / SRCL-8165
supercell(すーぱーせる)

コンポーザーのryoと複数のイラストレーター、デザイナーによって構成されたユニット。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。その人気はインターネットを通じて爆発的に広がり、2009年3月に待望のメジャーデビューを果たす。1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、翌年の「第24回日本ゴールドディスク大賞」にて「ザ・ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞した。続く1stシングル「君の知らない物語」からはゲストボーカルにnagiを迎える。「君の知らない物語」はアニメ「化物語」の主題歌に起用され、こちらも大ヒットした。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリースし、オリコン週間ランキングで3位を獲得。その後、新ボーカリストを募集するオーディションを敢行し、2000人を超える応募者の中から福岡県出身のこゑだを選出。2012年12月にアニメ映画「ねらわれた学園」のオープニングテーマとなるシングル「銀色飛行船」をリリース。2013年3月にテレビアニメ「マギ」のエンディングテーマを含むニューシングル「The Bravery」を発表した。

BOOM BOOM SATELLITES
(ぶんぶんさてらいつ)

中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表した。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2004年には映画「APPLESEED」の音楽を手がけ、その後もさまざまな映画やアニメに楽曲を提供。デビュー15周年を迎えた2012年6月には約3年ぶりのシングル「BROKEN MIRROR」をリリースした。2013年1月、2年7カ月ぶりのオリジナルフルアルバム「EMBRACE」を発表し、自身の楽曲のパーツを提供して、ニコニコ動画とコラボしたリミックスコンテストを開催するなど型にはまらない活動を展開。しかし同年1月、川島が脳腫瘍治療のためしばらくライブ活動を休止することを発表。そして2月末に、5月3日の日本武道館公演から活動を再開させることを宣言した。