ナタリー PowerPush - supercell
常に進化を続けるサウンド コンポーザー・ryoインタビュー
ボーカリスト・chellyの特色とは
──EGOISTで歌っているchellyさんは、supercellの現在のゲストボーカリストこゑださんが選ばれたオーディションで一緒に選出されたんですよね。結果的に、ほぼ同時に選んだ2人の声を使って楽曲を作っていますが、声質の違いなどは意識しますか?
音楽的な部分で言うと、こゑだちゃんって発声がすごくて、隣で小さい声で喋ってるだけでも、すごく“うるさい”んですよね(笑)。喉の使い方のせいなんでしょうけど、マイクの近くにいるとマイクが割れるくらいなんで、意識して「離れて」って言わなきゃいけないんです(笑)。でも小さく歌っていい部分でもすごく声が抜けてくるので、必然的に洋楽っぽくオケが作れるんですね。それに対してchellyちゃんは、マイクにかなり近い位置で歌ってるんです。隣接効果というか、近くにいると低音が出やすいみたいなところがある。そうすると広がりを感じられる、面が大きい歌い方になるんで、それに伴ってオケの作り方が変わっていって、必然的に柔らかいサウンドが求められていくんです。
──でもいわゆるトランスだったらもっとリバーブ感のある、奥にこもった声にする場合もありますけど、そういう作り方とも違うんですよね。
やっぱり歌ものだと、奥に声がいきすぎると「何言ってんだろう」ってなるじゃないですか(笑)。
──そこはポップスであることを意識するんですね。ダンスミュージックではなく。
そうですね。ポップスとして成立させるっていうのを前提としてやっています。
新曲ジャケットもアルバムの布石に
──supercellとしてのニューシングル「告白 / 僕らのあしあと」のほうは、EGOISTと違って次のアルバムを見据えた曲ということになりますよね。
そうなりますね。「告白」のほうはsupercellらしさをシンプルに出すっていうのを基調に作っていた感じです。こういうアッパーな曲調は比較的得意なんだけれど最近やってなかったんで、久しぶりに作った感じではありますけれども。元々これも「『ギルティクラウン』のラストシーンってどんな感じなんですか?」って監督に訊いたときに教えてもらった映像をイメージして作ってみた曲なんですけどね。
──確かに「さよならメモリーズ」くらいのころの曲調に近い気がしますね。ジャケットは、前回のシングルに引き続いてあまりキャラクターを前面に出さないものになっていますね。
「初回生産限定盤A」がしる(redjuice)さんで、「初回生産限定盤B」がhukeくんの絵ですね。やはりキャラなしで、もしくはキャラを薄くして、雰囲気を表現してもらいました。曲を聴いてもらって、そのイメージで描いてもらったんです。今回は「展覧会に飾ってある絵で『僕らのあしあと』っていうタイトルの絵があったとして、それを描いてください」っていうお願いの仕方でしたね。hukeくんには「キャラなしって今までやったことないからすごく難しかったです」って言われましたけど(笑)。しるさんもギリギリになっちゃいましたし。
──前のアルバム発売時にコミックナタリーで三輪士郎さんにお聞きしたときもそうだったんですけど、supercellはみんな、常に本当にギリギリ限界まで粘って作業するんですね(笑)。
三輪さんも、ステッカーのイラストを今朝上げたところなんです。「マジで三輪さん、今日送ってくれないと落とすよ」って僕に言われて(笑)。どうしてもみんな、それぞれの領分の中でやれる限界ギリギリまでがんばろうって感じになっちゃうんですよね。(デザイナーの)wooserさんが一番大変ですよ。全員が無茶苦茶やって、締め切りは守らない、ゲラも出ないみたいな状態なのを、最終的にうまくまとめてデザインしてくれるので(笑)。
15歳の女の子だから歌える曲
──前回ryoさんにお話をお伺いしたときに、シングル「My Dearest」以降の曲はアルバム全体の物語をちょっとずつ表していく感じになっている、と聞きましたが。
まあ、一応自分ではアルバムまでの流れを組み立てているつもりです。徐々に全貌が明らかになっていくふうに作っていけたらいいですね。でも全然まだ行き当たりばったり感があるので、これをどうまとめていくかっていうのは、もうちょっとしないとわからないですね。自分でもまず曲を作ってみて、それぞれの曲同士のつながりに気づくようなところがあるんですよ。
──どんな物語なのか、まだ全貌はわかりませんけど、男性目線の歌が出てきたのが特徴的ですよね。これは今までのsupercellからすると珍しいように思いました。
そうですね。「告白」は男の子の目線から歌った曲です。今まではそういうのはやらなかったんですけど、こゑだちゃんって男の子的な声も出せるので。より自分に近いというか、自分の素の状態で書いた歌詞をこゑだちゃんが歌ってくれてる感じです。どっちかっていうと1stアルバムを作ってた頃の感覚に近いですね。自分は歌わないけれど、ボーカロイドで自分の気持ちを歌ってる。そのときの感覚にすごく近いと思います。
──そこはやっぱり、こゑださんという新しいボーカリストの特性がそういう曲を引き寄せている感じなんですかね。
そうだと思います。もっとかわいらしい声だと男性的なものは想像できないですし、逆に男性的すぎる感じだと、女の子っぽい歌詞も出てこないですし。そういう意味で、こゑだちゃんは15歳、中3ってこともあって、女の子から大人になる直前的な感じっていうところもありつつ、少年っぽい側面も残ってるんですよね。男の子目線でも女の子目線でも、どっちもいけるんです。これが高2とか高3ぐらいになってくると、もっと女っぽくなっちゃうような気がするので、今だからこそできる感じだなって思いますね。
初回限定盤A・通常盤A CD収録曲
- 告白
- 僕らのあしあと
- カレ
- 告白(TV Edit)
- 告白 -Instrumental-
- カレ -Instrumental-
- 告白(TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤B・通常盤B CD収録曲
- 僕らのあしあと
- 告白
- カレ
- 僕らのあしあと(TV Edit)
- 僕らのあしあと -Instrumental-
- カレ -Instrumental-
- 僕らのあしあと(TV Edit) -Instrumental-
supercell(すーぱーせる)
コンポーザーのryoと複数のイラストレーター、デザイナーによって構成されたユニット。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。その人気はインターネットを通じて爆発的に広がり、2009年3月に待望のメジャーデビューを果たす。1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、翌年の「第24回日本ゴールドディスク大賞」にて「ザ・ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞した。続く1stシングル「君の知らない物語」からはゲストボーカルにnagiを迎える。「君の知らない物語」はアニメ「化物語」の主題歌に起用され、こちらも大ヒットした。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリースし、オリコンウィークリーチャートで3位を獲得。その後、新ボーカリストを募集するオーディションを敢行し、2000人を超える応募者の中から福岡県出身の15歳、こゑだを選出。同年11月に彼女がボーカルを務めたシングル「My Dearest」を発売し、2012年3月7日に両A面シングル「告白 / 僕らのあしあと」をリリースする。