ryoさんのディレクションは鋭い
──アルバムに並んでいる楽曲を見ると、結構バンドっぽいアプローチを重視した曲の多いアルバムだと思うんですが、そういう部分をご自身で意識されたりryoさんから言われることはありましたか?
それはすごいありましたね。「夜が明けるよ」みたいにアコギ1本でコーラスやる曲とかもありましたし。特にあの曲は歌との兼ね合いとかで、強くてもダメだし弱くともダメみたいな微妙なタッチが求められて、そういう意味ではあの曲が一番難しかったかなと思います。弾いているときも、例えば1コーラス目だけを直せばいいかっていうとそうでもなくて、1コーラス目がOKになって次に2コーラス目まで弾いたらまた1コーラス目も直したくなったりしましたね。1曲としての物語っていうか、流れが大事な曲でもあったので。この曲のryoさんのディレクションの仕方もすごいよかったです。
──どんなふうに言われたんですか?
「こんなイメージで」っていう参考の曲があって、それを聴いたりしましたね。でも実際に弾くのとは違う曲なんで(笑)、まあそれを自分なりに解釈するっていう感じです。まあ、あとはこっちを強くしたらまたこっちが物足りないとか、逆もあったりとか。でもやった後はすごい達成感があって、家でよく聴いてますけどね(笑)。
──微妙なところを何度もやり直すんですね。
あとは、例えばエンディングのリタルダンド(だんだんゆっくりになっていくこと)の加減とかは「これでいいんじゃないのかな」と思って弾いても「これはここからもっと遅くしてください!」みたいなディレクションがありましたね。もうエンディングのリタルダンドばかり10回くらいやりました(笑)。もっと後からリタルダンドしてとか、もっとゆっくりにして、とか。徐々にゆっくり演奏しながら終わっていくところなので、クリック(リズムを刻むカウント)がもうなくなってるんですよ。だからガイドにするテンポがもうない中で、自分の感性次第でやるんです。自分の感性プラス、ryoさんの感性を汲み取ってやるみたいな感じですよね。
──シングルで最初に参加されたときから、そういう厳しいディレクションをされましたか?
そうですね、もう一緒でした(笑)。でも厳しいっていうか、鋭いんですよ。細かい部分にちゃんと突っ込んでいきますね。そのへんは、相当こだわってましたね。「これでいいんじゃないのかな?」って思っても「もっと!」って。すごく面白かったです。弾いてるときはよくわからないんですが、あとあと聴いてみると「ああ、なるほど」って思うんですよね。そういうことは多かったです。「復讐」っていう曲も、音色にこだわりがあったりして時間が掛かりましたね。最初SGで弾いたんですけど、全部弾き終わってから「やっぱりなんか違うような気がする」って、もう1回ファイヤーバードに変えて弾き直したりとか。
──そのへんの曲が印象に残っているものになるのでしょうか。
そうですね。まあでも「夜が明けるよ」や「復讐」もそうですけど、こうやってけっこう1曲1曲並べてみると、どれもすごい記憶に残ってますね(笑)。
supercellは音楽の良さがあってこそ
──ところで、西川さんのさまざまな楽曲でのギターをニコニコ動画やYouTubeで弾いてる人もいますよね。ああいうのはどういうふうにご覧になっていますか?
いや、まったく新しい文化だなと思いますね(笑)。この間もニコニコ生放送に出演したんですけど、面白いですよね。すごい。「ここまでできるんだったらこんなこともできるんじゃないか」みたいな発想も広がりますよね。
──あとは、楽曲にイラストレーションが付いているのも新しいですよね。
ね! それ面白いですよね。でも、これバンドですよね。こういう形の。
──このイラストの作家陣も含めてのバンドということですか?
そうそう。これってそういうことですよね、きっと。ちょっと面白いなっていうか、新しいですよね。「こんなのありなんだ!」みたいな気持ちがありますね。
──なるほど。従来の発想だと「音楽に絵を付けてる」ってなると思うんですけど、そうではなくて、音を作ってる人、絵を描いてる人、デザインしてる人も含めて全部でバンド、っていう考え方は面白いですね。
最初に見たときはなんかびっくりしましたよ。「わぁ、こんなことしてる人がいるんだ!」みたいな。
──CDが売れないと言われる時代で、音楽の楽しみ方がそういうものに変わっていると思いますか?
うーん、難しいところですね。まあCDが売れないと言われているのにもいろんな問題があると思うんですけど、ただ売れない売れないって言ってるけど、やっぱりいいものは売れてるような気もするんですよね。supercellもインターネットから出てきたみたいな売り文句もあると思うんですけど、聴いてるとやっぱりすごく心に響く音楽なので、それがあってこそじゃないかなって気がするんですよ。最終的にあるのはそこなんじゃないかなって。そこがなかったら、たぶんこんなに広がってはいないと思うんですよね。
CD収録曲
- 終わりへ向かう始まりの歌
- 君の知らない物語
- ヒーロー
- Perfect Day
- 復讐
- ロックンロールなんですの
- LOVE & ROLL
- Feel so good
- 星が瞬くこんな夜に
- うたかた花火
- 夜が明けるよ
- さよならメモリーズ
- 私へ
DVD収録内容
- 「君の知らない物語」×アニメ「化物語」コラボCM
- アニメ映画「センコロール」トレーラー映像
- PCゲーム「魔法使いの夜」トレーラー映像
- 「ヤングジャンプ」新増刊雑誌「アオハル」トレーラー映像
- 新曲「Perfect Day」Music Clip
初回生産限定特典
- supercellオリジナル全36Pフルカラーイラストブックレット封入
- supercellオリジナルデザインピック封入
- supercellオリジナルデザインケース仕様(illustrated by redjuice)
- 新曲ビデオクリップなどが収録されたDVD付き
初回限定盤イラストブックレット 参加イラストレーター
三輪士郎 / redjuice / huke / 宇木敦哉 / コザキユースケ / 優 / こやまひろかず / 粉冬ユキヒロ / なぎみそ / マクー / スガ
supercell(すーぱーせる)
コンポーザーのryoと複数のイラストレーター・デザイナーによって構成。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。2009年3月に発表したメジャー1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、ゴールドディスクに認定された。続く1stシングル「君の知らない物語」もアニメ「化物語」の主題歌に起用され大ヒット。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリース。