ナタリー PowerPush - supercell

次世代音楽シーンの新たな象徴 2ndアルバムは生ボーカル起用

優れた楽曲と美麗なイラストがコラボし、ネットを中心に爆発的な人気を誇るsupercell。音楽の柱になっているのは言うまでもなくサウンドコンポーザーのryoだが、ニューアルバム「Today Is A Beautiful Day」には多くの一流ミュージシャンが参加し、その完成度の高さに貢献している。

中でもギタリストの西川進は、supercellのメジャーデビューシングル以降、多くの曲でryoの楽曲を弾いてきた人物だ。彼自身も超絶技巧かつ人間味あふれるプレイスタイルによって高い人気を誇っており、ニコニコ動画やYouTubeのユーザーにはその演奏をカバーする者も多い。

過去に数多くの有名ミュージシャンと共に仕事をしてきた西川に、いまだ理解されていない部分も多いsupercellの楽曲作りやryoという人物、そして現在のネットを中心とした音楽の盛り上がりを語ってもらった。

取材・文／さやわか

supercellのレコーディングとは

──supercellの曲を最初に聴いたときの印象はどうでしたか？

デモ自体がすごく完成されていました。だから正直「もうこれでいいじゃない！」みたいな（笑）。それに対して自分はグルーヴであったりノイズの部分を加えて、それを上回るものをやらなきゃいけないわけで、やりがいはありました。

──デモの完成度はそんなに高かったのですか？

相当なもんですね。しかも、当時はデモだけでなくてバンドスコアがもうすでにあったんですよね。どういう経緯で用意してもらえたのかわからないですけど、レコーディングのときにそれを見ながら弾いたりしたのも新しかったです。初めての体験という感じで（笑）。すごい楽しかったですね。

──歌詞などもすでに決まっているのでしょうか？

ほとんど決まってますよ。なのでイメージがわきやすいと言えばわきやすいですね。

──デモを聴き込んでからスタジオに入るんですか？

そうですね。ていうか、そうじゃないと結構難しいなあっていう（笑）。しっかり構築された音楽なので。だから家でちょっとコピーして、フレーズをちゃんと弾けるようにしとかないと。

──西川さんから見ても難しいと感じるのでしょうか？

フレーズ自体が難しいのは難しいですけど、ryoさんは普通にやるだけじゃなくて、それ以上にそのフレーズのニュアンスを追求するんですよ。細かいニュアンスのイメージが自分の中にあるみたいですね。

──そのニュアンスはどういうところで判断するんでしょうか？リズムの取り方など？

それもありますし、音符の長さみたいな結構細かい部分ですね。でも、たまにこっちが変わったプレイをすると「そっちのほうがいいです」みたいな感じになったりもしますけど（笑）。

──ある意味完成されたものを弾く際に、どうやってより質の高いものにしていくのですか？

自分的には、完成されているからこそ崩したくないという意志もあるんですよね。ちゃんと作られているところはそのままやろうというような気持ちもある。でも節々で、ノイズだとか偶然性を必要とするようなところがあるんですよね。そういうのはやっぱり命賭けるっていうか、ryoさんもそういうプレイには着目してて「あ、今のいいです！」みたいな感じで言ってくれました（笑）。「運命のノイズ」みたいな、偶然性をすごく重視してくれて、結構自分のものを活かしてくれることがありますね。

ryoさんの曲は胸キュンだけどひねくれている

──録音はバンドスタイルではなくて、ギターのみで録ったんですよね。

そうですね。自分がちょっと忙しくてリズム録りのときに行けなかったんですよ。本当はリズムを録ってから、その日のうちにダビングするっていうのが普通なんですけど。それができなくて後日ギターだけを録るっていう感じでしたね。

──スタジオに入ったら、とりあえず録ってみる？

そうですね、とりあえずやってみようみたいな。

──そこで、わりとすんなり「ああ、じゃあそんな感じで」みたいに終わることもあるんですか？

うーん、そういうこともありますけどね。でもまず、そもそも音作りから始まるんですよ。使うギターはこれでいいのか？っていうところから始まって、マイクはこれでいいのか、マイクの距離はどうか、みたいな。ただまあ、想像している音があるので、そこに向かっていけばいいんですけどね。

──ryoさんと西川さんの間で、イメージにすり合わせが必要なこととかズレてしまっていることはありますか？

もちろん、あるときもあると思うんですけど、でもなんとなくはわかる感じですよ。付き合いがそんなに長いわけではないですけど、デモの完成度も高いし、これまでにも何曲か一緒にやってるので。だから「あ、きっとこんなこと思ってるのかな」っていうのはわかりますね。

──supercellの音楽は、楽曲的にはどういう特徴があると思いましたか？

まずコード進行にすごくハッとしましたね。「今までにないな」と。結構、深く聞き込むといろんな要素があるんですよ。ただのロックかと思うとコード進行の中にジャズ寄りなコード進行があったりとか。それがすごい不思議で、しかも心にスッと入ってくるじゃないですか。

──ryoさん本人は、supercellの曲はスタンダードだと言われがちだと言っていましたが。

うーん、僕はわりとけっこうひねってる感じがしますね。クセはすごくあると思います。ま、それはryoさんがひねくれてるのかもしれないですね（笑）。

──どんなことをイメージして弾くことが多いですか？

そうですねえ。わりといろんな楽曲がありますけど、統一されているところがあるとしたら、けっこう胸キュンなところですよね。すごくクるっていうか。青春時代を思い出すようなね。しかも、それがまた不思議な感情にさせられる音楽と言うか、単純に懐かしいとか悲しいとかじゃなくて、ちょっとひねくれてる。だから何か面白い感情になるっていう感じですね。

CD収録曲

DVD収録内容

「君の知らない物語」×アニメ「化物語」コラボCM
アニメ映画「センコロール」トレーラー映像
PCゲーム「魔法使いの夜」トレーラー映像
「ヤングジャンプ」新増刊雑誌「アオハル」トレーラー映像
新曲「Perfect Day」Music Clip

初回生産限定特典

supercellオリジナル全36Pフルカラーイラストブックレット封入
supercellオリジナルデザインピック封入
supercellオリジナルデザインケース仕様（illustrated by redjuice）
新曲ビデオクリップなどが収録されたDVD付き

初回限定盤イラストブックレット参加イラストレーター

三輪士郎 / redjuice / huke / 宇木敦哉 / コザキユースケ / 優 / こやまひろかず / 粉冬ユキヒロ / なぎみそ / マクー / スガ

supercell（すーぱーせる）

コンポーザーのryoと複数のイラストレーター・デザイナーによって構成。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。2009年3月に発表したメジャー1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、ゴールドディスクに認定された。続く1stシングル「君の知らない物語」もアニメ「化物語」の主題歌に起用され大ヒット。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリース。

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