ナタリー PowerPush - スーパーカー

今のナカコーが磨き上げたあの頃の楽曲「RE:SUPERCAR 1」

1997年にデビューし、日本のロックの歩みに多大な足跡を残しながら、2005年に惜しまれつつ解散したスーパーカーの最新ベスト盤「RE:SUPERCAR 1 ~redesigned by nakamura koji~」がリリースされた。元メンバーの中村弘二(現iLL)自らがオリジナルテイクにリファインを施した15曲が収められるほか、初回限定盤は残された膨大な量のデモテイクから厳選した未発表音源40曲を収めたDISC 2が付属する。これからスーパーカーを聴く人はもちろん、かつてのファンも興味深く聴けることは間違いない。とりわけデモテイクからは、正規発売音源からはこぼれ落ちたスーパーカーの実にさまざまな可能性を知ることができる。

今回は中村弘二にインタビューを実施したのだが、こうした形でメンバーが、すでに解散したバンドのことを語ることは珍しい。だがそこに、過去をノスタルジックに振り返るだけの感傷じみたものはない。リフレッシュしたスーパーカーの楽曲は、間違いなく現在進行形の音楽であり、今もたまらなく魅力的なのだ。彼の淡々とした話しぶりからは、その自負がうかがえた。

取材・文/小野島大

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何か出すんだったら少しひねったものに

──今回のベスト盤の企画はどういうところから持ち上がったんですか。

まぁそういう企画を振られて、レコード会社から。できるかどうかもわからないけど興味はあるよっていう。で、何か出すんだったら少しひねったものにしようよと。

──あのね、私、某誌でこれのディスクレビューを書いて、ちょうどそのとき中村さん、フルカワミキさん、田渕ひさ子さん、agraphさんの新バンドLAMAの結成の話とベスト盤の話をほぼ同時期に聞いたので、これはスーパーカーは名実共に終わってしまったんだよというメッセージとも受け取れる、というふうに勘ぐっちゃったんですけどね。

うーん……。まぁその意味合いみたいなのは別に意識はしてないですし、もう1個のバンドのほうはこれよりも前にあった話だから。たまたまタイミングがあっただけっていう。でもどう思われても別にそれは自由だと思うし。

──じゃあご自分としては別にそういうニュアンスを込めたもんではないと?

うん、全然。

──でもまぁそう受け取られてもそれはご自由ですよと。

うん、自由です。

聴き返して「やっぱ恥ずかしい」

──で、まず1枚目なんですが、選曲はご自分でやられたんですか。

聴いて、これだったらこうできるかな、とか1曲1曲聴いて考えて。

──普段スーパーカーの曲って聴き返すことあるんですか。

いや家に(CDが)ないから。あははっ(笑)。iLLもないし。

──ええっ、じゃあ家には何があるの?(笑)

家に何もない、自分のものはなんにもない。

──でもパソコンの中に入ってるんじゃないの?

デモは入ってますよ。

──じゃあちゃんと発表した楽曲ってのは手元にないわけ?

うん、ない。まぁキューンが持ってるだろうと。

──じゃあ要するに過去にはあんまり頓着しないっていう感じなんですね、普段は。

うーん、まぁ散々やったから覚えてるっていうのもあって。聴き返したいときにないから困るっちゃ困るんだけど、でも誰か持ってるし(笑)。

──そうですか(笑)。じゃあ改めてこの作品にとりかかるにあたって1曲ずつ聴き返してみて、どういう感想を持たれました?

うーん、やっぱ恥ずかしい。

──それはどういう意味で?

自分が10代、20代前半だった頃の曲だから……うーん、何も知らないでやってることだから、この人こういうことやりたかったんじゃないのかなぁとか思うこともあるし、でもできてないという。

──それはやっぱり技量的な部分?

技量もある。何も知らないから。レコーディングの仕方も知らないし、音もどれ録っていいかわかんないし。

──じゃあ今だったらこういうことはやらないとか、今ではこれはちょっとできないなとか、そういうのもあったりしますか?

うん。まぁ今だったらもうちょっとうまくできるんじゃない?っていう。同じことをやるんだったら。今となっては勘違いから生まれたとしか思えないものもあるし。まぁ今やってることもあと10年ぐらいしたら勘違いと思うかもしれないし(笑)。それはわかんないけど。

「RE:SUPERCAR 2 ~redesigned by nakamura koji~」 / 2011年4月20日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD] / 3360円(税込) / KSCL-1755~1756 / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤[CD] / 3059円(税込) / KSCL-1757 / Amazon.co.jpへ
DISC1 収録曲
  1. Walk Slowly
  2. Sun Rider
  3. I need the sun
  4. DRIVE
  5. Dive
  6. 333
  7. OOYeah!!
  8. Pink Rock
  9. Jump
  10. Lucky
  11. Wonderful World
  12. ONE
  13. Low-down (Live Scene)
  14. TRIP SKY
  15. cream soda
DISC2 収録曲(※初回限定盤のみ)
  1. Cream soda demo
  2. Wonderful World demo
  3. untitle #1
  4. untitle #2
  5. untitle #3
  6. CAT demo
  7. 333 demo
  8. ZEBIUS demo
  9. untitle #4
  10. untitle #5
  11. I wanna stay demo
  12. untitle #6
  13. Hello demo
  14. Drive demo
  15. untitle #7
  16. Fllicker demo
  17. untitle #8
  18. MIAMI BEACH demo
  19. In Hawaii demo
  20. Melancholic Bass demo
  21. Tulip demo
  22. Sun Rider demo
  23. untitle #9
  24. I need the sun demo
  25. Life gose on demo
  26. U demo
  27. Jet Bee Town demo
  28. untitle #10
  29. untitle #11
  30. Holly demo
  31. Skyphone speaker demo
  32. Spider demo
  33. untitle #12
  34. YES demo
  35. Sugar Head demo
  36. Sugar Song demo
  37. Rental Car demo
  38. Noman demo
  39. untitle #13
  40. Summer tune demo
スーパーカー

中村弘二(Vo, G)、いしわたり淳治(G)、フルカワミキ(B, Vo)、田沢公大(Dr)による4ピースバンド。1995年に青森で結成し、1997年9月にシングル「cream soda」でデビュー。初期の作品は繊細な歌詞とアタックの強いギターサウンドを特徴とし、ロックファンを中心に人気を集める。

その後2000年2月発表の8thシングル「FAIRWAY」ではディスコビートを取り入れ、同年10月リリースの10thシングル「WHITE SURF style 5.」では高速フリーフォームロックを聴かせるなど、徐々にその幅広い音楽性を提示。2001年11月発売の11thシングル「YUMEGIWA LAST BOY」では砂原良徳をプロデューサーに迎え、エレクトロニカに接近した側面を見せた。

また音楽とビジュアルの融合にも積極的で、2000年の全国ツアー「SUPERCAR TOUR 2000 "FLOOR EXTRA"」ではVJを宇川直宏が務め、ハイブリッドなステージを展開。2004年の全国ツアー「SUPERCAR TOUR 2004 "ANSWER"」では5thアルバム「ANSWER」のジャケットアートワークを担当した宇川直宏×田名網敬一によるサイケデリックな映像が、アルバムの世界観を再現するのに一役買った。

2005年1月20日に発売された「ROCKIN' ON JAPAN」誌上にて解散を発表。同年2月26日に新木場STUDIO COASTで行われたラストライブにて解散した。