SUPER BEAVER|心のままに、もっとワクワクするほうへ

“すぐに顔が浮かぶような人”のおかげで決まったドラマ主題歌

──シングルの表題曲「予感」は高橋一生さん主演のカンテレ / フジテレビ系ドラマ「僕らは奇跡でできている」の主題歌です。SUPER BEAVERは人とのつながりを大事にしてきたバンドですが、このタイアップもカンテレの方との絆から実現したそうですね(参照:SUPER BEAVER「僕キセ」撮影現場に大興奮、高橋一生らと初対面)。

SUPER BEAVER

渋谷 カンテレの方と出会ったのはとある大阪のイベントだったんですけど、「自分たちの音楽を広めたい」と言ってくださって、ごはんに行ったり仲良くさせていただけるようになりました。やっぱりそういうふうに言ってくださる方と仕事がしたくて……「仕事」と言うとドライに聞こえますけど、仕事をするというのは、自分たちにとっての譲れないものを“何か”に変えることだと思っているので。それだけの信頼関係がないとできないんです。それで、その仕事の機会を作ってくれたのが、今回の主題歌のお話だったわけですけど、すごくいろんな逆境を跳ね除けて、いろんなものを押し切って決めてくださったんだなというのはなんとなくわかっているので。自分たちにとっては喜びの度合いが大きい気がしていますね。

SUPER BEAVER

──ゴールデンタイムの連続ドラマの主題歌ですもんね。

渋谷 そんなドラマの主題歌担当として、僕らのようなインディーズバンドを起用してくださるために、きっと途方もない無茶をしているんだろうなと感じました。でも純粋に、ドラマの中に自分たちの曲を使いたいという気持ちからのことだと思うので、すごくうれしい無茶をしてくれたんだなと。

SUPER BEAVER

柳沢 主題歌に決まったとき、カンテレの方が大阪から東京のスタジオまで、サプライズでお知らせしに来てくださったんです。きっと僕らが驚いて喜ぶんじゃないかなって。“対会社”じゃなくて、1人の人間と人間で関わらせていただけるのは本当にうれしいです。

上杉 普通じゃありえないことだよね。決まったらすげえなって思ってたら、ホントに決まって。俺らにとってはすぐに顔が浮かんでくるような、密にやってくれてるその人がいるから決まったんだなと思うし、もっと楽しいことが大きい規模でできるんじゃないかなと思わせてくれて。自分たちが変わってしまったからもらえたタイアップじゃなくて、自分らが変わらずやっている中で決まったタイアップだから喜びも大きいです。

藤原 ドラマを毎週観てるんですけど、第3話では「予感」をピアノと弦のアレンジバージョンで流していただいて。僕らにとっても、ドラマにとってもお互いの力になればいいなと思って作った楽曲だったので、考えて使っていただけてすごくありがたかったですね。

プレイの部分で新しいことが増えたシングル

──「予感」はどのように制作していった楽曲なんですか?

柳沢 ドラマも“人”というものにフォーカスが当たっているお話だと思うので、SUPER BEAVERが大事にしているものとリンクするところがいっぱいあったんです。作品を拝見して「SUPER BEAVERが言葉にするとしたらどういう言葉なんだろう」と向き合いながら曲を作っていって。だから僕らにとっては単純にSUPER BEAVERの新曲、いい曲できたなって思いますし、それが実際にドラマで流れても「思った通り」と思える主題歌になったと思います。

──疾走感があるサウンドにも、先ほど皆さんが言っていたワクワク感が反映されているなと思いました。

藤原“30才”広明(Dr)

藤原 いわゆる四つ打ちの曲で、単純なビートだとは思うんですけど、転がり続けて前に進んでいくようなイメージでリズムを考えて。裏にスネアを入れたり、複雑にならない程度にキックのタイミングをこだわったり、思いを楽曲にきちんと入れ込めたかなと思いますね。

──ドラムは手数が多めですよね。

藤原 そうですね。楽曲を生かすとき、これまでよくやってたのは勇気を持って一歩下がることだったんです。でも今回は勇気を持って叩いたと言うか……やらないことはやらない、勇気を持って行くときはちゃんと行くっていうのを考えて曲に生かせたと思います。

──ベースフレーズはこれまでの楽曲と比べて速めですよね。

上杉 スタジオでやなぎが「サビは16分の人が欲しい」って言い出して、ギターで試したりドラムで試したりしたんですけど、最終的にベースが任命されて。「俺、そんな速く弾けねえんだけど」って言いつつ、いつも2フィンガーで弾いていたところを、幻の3本目の指を出して練習しました(笑)。なんとかレコーディングに間に合わせて、ライブでも弾けるようになったんですけど、今でもトレーニング中です。ここに来てプレイの部分で新しいことが増えているのは面白いし、自分も成長できた曲かなと思います。

柳沢 今までのSUPER BEAVERのアレンジは、楽器隊がユニゾンすることが多かったんです。でも「予感」ではリーダー(上杉)のベースが16分で速く進んでいくのに対して、ヒロ(藤原)のドラムはもうちょっとゆったりしてて、ギターはその隙間を縫うようにカッティングを入れて。誰か1つが面を作るというよりも、それぞれが楽曲の景色の一部になっていくようなアレンジの仕方をしたんです。カップリングの「まごころ」も、場面ごとにいろんな音が聞こえるようなアレンジになっていて。例えば風景を見ているときに、鳥が飛んだり、風が吹いたり、そういう音がする中で、ちょっと音が静かになったら人の足音が聞こえるみたいな。そういうイメージで、今回のシングル2曲のアレンジをしましたね。聴いてくださる方は無意識でいいんですけど、楽曲にふっと入り込めるような隙間がたくさんあると思います。

イメージを共有した結果、シンプルだけど新しい音像になった

──確かに「まごころ」にはタンバリン、エレキギター、アコースティックギター、ストリングスとさまざまな楽器が入っていますが、それぞれ楽曲の中で聞こえてくる場所が違いますよね。

柳沢亮太(G)

柳沢 僕らは歌が中心にあるバンドだと思うので、その言葉に寄り添いつつ、表情の変化を楽器で付けられたらいいなと思いました。「まごころ」は楽曲が進むにつれて差し込む光が増えていくけど、最後まで青空がすべて広がるわけではない、みたいなイメージをメンバーに話して作りましたね。

──今まではメンバー間の話し合いで、曲のイメージを言葉にしたことはなかったんですか?

柳沢 あったんですけど、今回はそれが如実にあったかな。そういうイメージも含め、音楽的な言葉も使いながらメンバー同士でやりとりしましたね。

──そういった変化が生じたのはなぜだったのでしょうか?

柳沢 なんでですかね……特別そういうふうにしようよ、と話したわけではないんです。なるようにしてなったと言うか、結果新しい音像になったんですよね。シンプルだけど新しいなって。

藤原 うん。パーカッションが入ってるSUPER BEAVERの曲って実は多いんですけど、1曲を通してほかの楽器と一緒に鳴ってると、聴き手はあんまり気付かないんですよ。でも今回はずっと一緒に鳴らしているのではなくて、1番のサビが終わって2番のAメロに入ったときに、ほかの楽器の音は沈むんだけど、タンバリンがそのまま鳴っていたりする。それも「あえてこうしたら面白いんじゃないかな」っていう思い付きからだし、別に変えようと思ってやってるわけではなくて。ふとしたアイデアが新しい感じにつながっているのかな。

──アコースティックギターをフィーチャーした歌い出しも新鮮でした。

柳沢 あれ、実はエレキも入ってるんです。アコギ一本だけじゃなくて、エレキの音も混ぜてみたらすごいよくなって。そういうトライと言うか、好奇心と言うか、そういったものと楽曲がマッチしたのかなと思いますね。