ナタリー PowerPush - SUPER BEAVER
原点回帰の一歩先へ “あなた”に向けた自信作「361°」
SUPER BEAVERが新作アルバム「361°」をリリースした。このアルバムは東京・Shibuya eggmanスタッフのYUMAが発足させたロックレーベル[NOiD]から発表される第1弾作品。「あなたたちに歌ってるんじゃない。あなたに歌ってるんだ」という明確なテーマのもとに制作され、ストレートなメッセージが伝わってくる充実作となった。
今回ナタリーでは、メンバー4人にインタビューを実施。SUPER BEAVERがこれまでに歩んできた道のりを踏まえ、“1周回って始まりに戻ってきた”というバンドの経験値が凝縮されたアルバムについて話を聞いた。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 上山陽介
自分たちの音楽をようやく取り戻せた
──アルバム「361°」では「あなたたちに歌ってるんじゃない。あなたに歌ってるんだ」というテーマが掲げられていますが、これはライブ中に渋谷さんが発した言葉ですよね。
渋谷龍太(Vo) そうですね、ライブのMCでポロっと言ったことを柳沢が拾って。それでアルバムのテーマができたんです。「361°」は自分らにとっての音楽ってものをようやく取り戻せた前向きな作品だと思います。
──さらに今作のタイトルには「1周回って始まりに戻ってきた」というメッセージが込められているそうですが。
柳沢亮太(G) 「361°」というタイトルは、ここからの一歩っていうよりも、いろんな経験を経た上での続きの一歩ってイメージで付けました。自分たちがバンドを結成したときっていうのは、「楽しい」って感情が一番にあって。そのあとにそんなに経験値もないまま勢いでメジャーデビューして、それは当時の僕らにとってはすごい出来事だったんですが、そのあと「作りたいものと違ってきたぞ」ってだんだんなってきて、制作チームとの戦いみたいなものを経験したんです。「この人たちが満足しないと世には出ないんだ。でもそれで世に出たものって俺たちがやりたいことじゃないんじゃないか」っていう葛藤を経験して、ダメになったんです。
──ダメになったとは?
柳沢 メンバー同士もギクシャクするし、渋谷は胃に穴が空いて倒れちゃったりするし。
渋谷 僕が倒れたときって実は自分の歌を聴いて倒れたんですよ。
──え?
渋谷 「これは気持ち悪いなー、やだなー」って気分で録った歌が世に出て、少なからず楽しみにしてる人の耳に届いてしまうのかと思った瞬間に気持ち悪くなってきちゃって。環境とか心境は歌にはモロに反映すると思うんで、実に素直なものです。
柳沢 それで「音楽なんか辞めたい」みたいな話になっちゃって。話し合った末、会社の人にも話して無理やり出させてもらったアルバムが「SUPER BEAVER」(2010年10月発売)で、これは完全に自分たちを初期化するためのアルバムでした。好きなものを好きなように作らせてもらったセルフプロデュース作品だったんです。でも特別な結果が出るわけでもなくそのまんま会社も事務所も辞めて。そのタイミングで改めて「ライブに重きを置こう」と思い、2011年にいろんなバンドのツアーに付いてったりしながら年間100本以上のライブをやりました。
もっと多くの人に届けたい
──精力的なライブ活動を経て、2012年には自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げましたね。
柳沢 はい、多くのライブを経験した上で、今度は今歌いたい思いを込めたCDを持って改めてツアーを回りたいなと思ったのが、自主レーベル立ち上げの第一歩です。だからまずは直接ファンに届けようと思って、会場限定でシングル「歓びの明日に」(2012年4月発売)をリリースしたんです。
──なるほど。「361°」のタイトル曲には「本当は 挫折なんて 知らないで済めば一番いい」といったフレーズがありますが、これはバンドのことを歌っているんですか?
柳沢 そうですね。僕は数年前までのことを本当にいらない過去だと思っていたんです。だけどこの曲ではそんな過去も経験値として受け止められるようになったってことを歌いたかった。メジャーシーンそのものを揶揄しているわけではないんですけどね。
渋谷 その時期は高校生のコピーバンドとかを観てると、クオリティ云々じゃなくて「初めて作った曲をやってみます!」みたいな姿勢をすごくまぶしく思うようなときもありました。僕の中でそれをいいなって思っちゃうことが正しくないとは感じてたんですけど。
──上杉さんと藤原さんはどうでしたか?
上杉研太(B) 僕は柳沢も渋谷も潰れたその時期に、曲を書いたりしましたね、ほんとは別に書きたくないのに(笑)。でもその時期の経験は今のバンドで表現できることの1つにはなってるかな。
藤原“25歳”広明(Dr) 柳沢と渋谷のことはとても心配してたんですけど「なんもできねえなあ」ってことはすごい思ってましたね。それはもどかしかったです。
──自主レーベルになってからはメジャーとは違う苦労がありましたか?
柳沢 別につらいってことはなかったですね。メジャー時代に底辺を見たと思ったので(笑)。当時はどういう段階を踏んで、どうやってCDが出るのかさえもいまいちピンときてなかったんですが、自主になってから全部自分でやってみたんです。「イニシャル(初回出荷枚数)がこれだけついたよ」なんて話もして、この数字がこれからどうなっていくかってことがダイレクトにわかるから、楽しかったです。
──やりがいを感じたんですね。
柳沢 純粋にうれしかったですね。だからもっともっと多くの人に届けたいなって。ただ単純にキツいのはお金だけだった(笑)。
収録曲
- →
- 361°
- あなた
- 愛の愛の
- センチメンタル
- ×
- まだ
- サイレン
- 鼓動
- ありがとう
- 約束。
ツアー情報
SUPER BEAVER「361°」Release Tour 2014~周回する、ラクダ~
- 2014年3月1日(土)東京都 Shibuya eggman
<出演者>
SUPER BEAVER / 撃鉄 / QOOLAND - 2014年3月13日(木)京都府 KYOTO MUSE
<出演者>
SUPER BEAVER / HaKU / ユビキタス / and more - 2014年3月14日(金)兵庫県 music zoo KOBE 太陽と虎
<出演者>
SUPER BEAVER / Large House Satisfaction / QOOLAND / iTuca / PRIMAL CURVE - 2014年3月23日(日)北海道 COLONY
<出演者>
SUPER BEAVER / HaKU / カフカ / Vianka - 2014年4月5日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
<出演者>
SUPER BEAVER / DIRTY OLD MEN / Mop of Head / and more - 2014年4月6日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
<出演者>
SUPER BEAVER / DIRTY OLD MEN / Mop of Head / Large House Satisfaction / FLiP - 2014年4月17日(木)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
<出演者>
SUPER BEAVER / DIRTY OLD MEN / Mop of Head / and more - 2014年4月19日(土)福岡県 Queblick
<出演者>
SUPER BEAVER / DIRTY OLD MEN / Mop of Head - 2014年4月20日(日)広島県 CAVE-BE
<出演者>
SUPER BEAVER / DIRTY OLD MEN / Mop of Head / ラジオボタン / ソライアオ - 2014年5月11日(日)愛知県 池下CLUB UPSET
<出演者>
SUPER BEAVER / and more - 2014年5月17日(土)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
<出演者>
SUPER BEAVER / and more - 2014年5月23日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
<出演者>
SUPER BEAVER(※ワンマンライブ)
SUPER BEAVER(すーぱーびーばー)
渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“25歳”広明(Dr)の4人により2005年に東京で結成されたロックバンド。ギターロックを基調としたエモーショナルなサウンドと、メッセージ性あふれるまっすぐな歌詞を特徴とする。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。2010年10月にリリースされたミニアルバム「SUPER BEAVER」の収録曲「ささやかな」が、映画「ソラニン」のラストシーンで使用され、話題を呼んだ。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを敢行。2012年に自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げ、シングル「歓びの明日に」を発表する。その後も精力的なライブ活動を続け、ミニアルバム「未来の始めかた」のレコ発ツアーではバンド史上最大の動員数を記録。2013年には東京・Shibuya eggmanのスタッフ・YUMAが「mini muff records」内に発足させたロックレーベル[NOiD]とタッグを組むことを発表し、2014年2月にフルアルバム「361°」をリリース。3月からは全国ツアー「SUPER BEAVER『361°』Release Tour 2014~周回する、ラクダ~」を開催する。