ナタリー PowerPush - スネオヘアー

メジャーデビュー10周年 “エンディング作家”の真骨頂

2002年にシングル「アイボリー」でメジャーデビューを果たしたスネオヘアー。疾走感あふれるサウンドと独特の感性から生まれる世界観は、音楽ファンのみならず同業のアーティストや各界のクリエイターからも高い評価を集めている。メジャー10周年を迎えた今年は「JAPAN JAM」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「JOIN ALIVE」といった大型フェスに多数出演。そして10月24日、およそ3年ぶりとなるニューシングル「slow dance」を発表した。

ナタリーでは新作リリース&10周年を記念してインタビューを実施。新曲に関するエピソードはもちろん、俳優としての活動やプライベートの話題、今後の音楽活動などについても話を訊いた。

取材・文 / 臼杵成晃 インタビュー撮影 / 上山陽介

求められてるものに応えたい

──スネオさんの前回の特集が2009年9月で、これは“スネオヘアー生誕10周年”のベストアルバム「ベスト」がEPICレコードからリリースされたときでした。現在の作品はスターチャイルドからのリリースですけど、スタチャは以前から強かったアニソン / 声優アーティスト系が中心ながら、最近はMEGさんや特撮、宇宙人、ももいろクローバーZと異色のアーティストが多数いて。その混沌とした中にスネオさんまでいるという(笑)。

スネオヘアー

不思議なレーベルですよねえ。

──元々のレーベルカラーもあって、スネオさんも2期連続で「荒川アンダー ザ ブリッジ」のエンディングテーマを担当して、新曲「slow dance」もこの秋放送のアニメ「好きっていいなよ。」のエンディングテーマに起用されました。やっぱりアニソンを作るとなると、普段の曲作りとは心構えが違ったりするのでしょうか。

曲の作り方自体には違いはないと思いますね。ただ、僕みたいな人は性質上タイアップありきでないと、シングルを切るようなことはないんですよ。僕だけかもしれないですけど(笑)。なので、せっかくタイアップでシングルを切るなら、求められてるものに応えたいっていうのはあります。

──とは言え、曲を発注するアニメのスタッフ陣もスネオさんに曲を頼むときは、スネオヘアーという音楽のカラーありきで頼んでるような印象があります。そこに「スネオヘアーの音楽」を当てることを前提に発注しているというか。

そういう意味では、作家性っていうんですかね?「もうスネオさんのいつもやられてるような作り方で構わないんで」っていうような、わりとルーズなオーダーというか。バッと投げてもらう感じですね。

──以前、スネオさんが坂本真綾さんに楽曲を提供したとき(アルバム「You can't catch me」収録曲「キミノセイ」)、ちょうど坂本さんにインタビューする機会があったんですけど、彼女も「スネオさんの作品世界に飛び込むような気持ちで、歌詞までお願いした」とおっしゃってました。

ありがたいことですね。

エンディング作家、スネオヘアー

──タイアップものの場合、テーマやキーワードなど、それでもなにがしかの約束事はあったりするのでしょうか?

スネオヘアー

具体的なことを言われる以前に、僕の場合は「エンディングをお願いします」と言われることがなぜか多くて。EPIC時代からそうなんですけど、オープニングってオーダーされたことがないんですよ。いつも「エンディングで」と。やっぱりそれって、具体的なものではないけど何か求められてる意味があるのかなって。

──ああ。確かにオープニングとエンディングではそれぞれ意味が違ってくる気がしますね。

そうなんです。オープニングはどういうものかって考えると、物事が、お話が始まっていく感じというか。やっぱりちょっとにぎやかしの要素っていうか、下世話な部分も必要なのかな、サービスしなきゃなっていろいろ考えてしまうと思うんです。大体、エンディングっていうのは僕も好きなんですよ。話の終わりに自分の曲が流れてくるのが。自分のアルバムなんかにしても「終わり」っていうのにすごく興味があるんですね。時間の流れがあって、ある過程や変化を経て「終わっていく」というところにドラマを感じるので。エンディングっていうのは、細かく「こういうことを言ってくれ」っていうオーダーがなくても、エンディングというだけでなんとなく求められてる雰囲気っていうか、解釈が自分の中にあるんですよね。

──なるほど。映画だと全ての物語の終わりに当てはまるものだし、毎週放送のアニメでは次回に余韻を残すラスト、という見せ方もあります。いずれにしても、確かにスネオさんの音楽は「エンディング向け」という感じがします。“エンディング作家”としてお願いしたくなる気持ちはすごくわかります。

なんなんでしょうね。映画にしても、エンドロールで曲が流れて、いろんな思いがシュワシュワっと出てくるのがやっぱりうれしいんで、自分の作品にもなんとなくそういうところがあるんですかね。

──「荒川アンダー ザ ブリッジ」はアニメ自体も大ヒットしましたし、そこから新しいファンも増えたのではないでしょうか。ライブ会場などで実感することはありますか?

感じますね。まさに「荒川アンダー ザ ブリッジ」のあと久々にライブをやったら、結構お客さんの層が入れ代わってました。これまで僕のことを知らなかったり、そもそもライブ自体にあまり行ったことがない人も来てくれていたみたいで。それはすごくいいなと思いますね。

ニューシングル「slow dance」 / 2012年10月24日発売 / スターチャイルド
ニューシングル「slow dance」/ 初回限定盤[CD+DVD] 1600円 / KICM-91418
ニューシングル「slow dance」 / 通常盤[CD] 1000円 / KICM-1418
CD収録曲
  1. slow dance (TVアニメ「好きっていいなよ。」エンディング主題歌)
  2. ユニバース (映画「ハイザイ~神さまの言うとおり~」主題歌)
  3. スコール
  4. 鷹の空~ルテルテ主坊~ i-dep feat.スネオヘアー
初回限定版DVD収録内容
  • 「slow dance」PV(監督:須藤カンジ)収録
スネオヘアー(すねおへあー)

プロフィール写真

1971年新潟生まれのシンガーソングライター、渡辺健二によるソロプロジェクト。1999年にカフェオレーベルからアルバム「SUN!NEO!AIR!」を発表し、2002年5月にはシングル「アイボリー」でメジャーデビューを果たした。その後多くのヒットチューンを含むシングル、アルバムを多数リリースしている。その他、YUKI、坂本真綾、新垣結衣、THE COLLECTORSへの楽曲提供や、U.N.O.BANDのプロデュースなどでも幅広く活躍。2010年にはアニメ「荒川アンダーザブリッジ」のエンディングテーマ「逆様ブリッジ」でアニメファンからも大きな注目を集めた。2011年8月にはメジャー通算7枚目となるフルアルバム「スネオヘアー」を発表。2012年10月24日にはおよそ3年ぶりとなるニューシングル「slow dance」をリリースした。