sumika|異色の“全力脱衣系☆青春グラフィティ”映画とタッグ!この夏、日本に元気をもたらす

sumikaが8月7日公開の映画「ぐらんぶる」に主題歌「絶叫セレナーデ」と挿入歌「唯風と太陽」を書き下ろした。

「ぐらんぶる」は、とあるダイビングサークルを舞台にハチャメチャなキャンパスライフを描いた“全力脱衣系☆青春グラフィティ”作品。全裸のポスタービジュアルや予告映像が話題を呼んでいる型破りな青春映画で、片岡健太も「どう考えても衝撃作」とコメントを寄せたほど。そしてそんな映画の制作チームとの笑いあふれるやり取りは、sumikaの新たな一面を引き出すこととなった。

音楽ナタリーでは楽曲の配信リリースを記念して、sumikaにリモート取材を実施。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて自粛期間中に考えていたことや2曲の制作過程について語ってもらった。

取材・文 / 宮本英夫 撮影 / 後藤壮太郎

バラバラでも、それでいいじゃん

──まずはコロナ禍でそれぞれどのようなことを考えていたのか聞かせてもらえますか?

片岡健太(Vo, G)

片岡健太(Vo, G) やっぱり今までライブができたりCDを出せたりしていたのは、当たり前のことじゃなかったんだなと思いましたね。僕らはこれまでも「これができるのは当たり前じゃない」ということを特に言ってきたバンドだと思うんですけど、それでもどこかにちょっと当たり前だと思っていたところがあったなという気付きがあって。でもそれに気付けたからこそ、この状況が元に戻ったときに、こういうことが起きる前よりも、聴いてくださる方ともっといいコミュニケーションの取り方ができるんじゃないかなと思っています。

荒井智之(Dr, Cho) 人によって置かれている環境が全然違うし、いろんな考え方があって、みんなが一致する正解はないからこそ、自分なりの答えを大事にしていかなきゃいけないなと。当初はこういう状況になると音楽でできることはあまりないのかなと思ったりもしたんですけど、いろいろなことを経て、やっぱり音楽の力はすごいなと改めて再認識できた期間でもありました。

小川貴之(Key, Cho) ライブをすることによって自分が何者であるかを認識していた部分があったんだな、とライブができなくなったことで思い知らされました。自粛が始まってちょっと時間が経った頃に、自分が何者かわからなくなっちゃいそうな瞬間があって……でも、そんな中でも日々SNSを通してコメントをくれる人や応援してくれる人、寄り添ってくれるメンバーやスタッフのおかげで、しっかりと音楽家でいられるという感覚を取り戻せたんです。会えてはいなかったですけど、メンバーやファンの皆さんとの結束はより深まった気がします。

黒田隼之介(G, Cho) 緊急事態宣言が発令された頃は、誰とも会わずに1人になって正直心細かったです。でもそれから「Dress farm 2020」というプロジェクトをやろうという話になって、そこに向けて動き始めてからは、バンドであるということがすごく心強く感じられました。1人で生きていたら前向きな気持ちにはなれなかったと思うので、それがうれしかったですし、同じように不安に思っている人がいれば、「sumikaはこういうふうにやってるよ。おいでよ」と言えるようなバンドになれたらいいなと思いました。

──今話が出た「Dress farm 2020」はsumikaが医療従事者やエンタテインメント業界を支援するために5月に設立した基金ですね。新曲4曲とライブ映像4曲を特設サイトで公開して、皆さんから支援を募っています(参照:sumika「Dress farm 2020」基金設立、新曲4曲と未発表ライブ映像を特設サイトで公開)。

片岡 2月末にライブの自粛要請を受けて、3月に予定していたイベントがなくなったり、ライブも開催見合わせになったり、音楽を披露する場がどんどんなくなっていって。音楽業界だけじゃなくて、世界中の人がそういう状況に陥っている中で「じゃあ何をやろうか?」と思ったときに、僕たちは音楽家なので音楽を作ろうということは早い段階で決まったんです。ただ、音楽を作るにしても、こういうときだから人によって聴きたい曲も違うし、行動することをいいと思う人も、嫌だと思う人もいる。今の時代はどこを見渡しても同じ価値のものはないし、考え方も違いますから。それは当たり前のことなので、こういうタイミングだからこそ自分たちで作品の価値の設定をせずに、聴いていただいた方に価格を決めていただくという形で、新曲とライブ映像を公開しました。新曲はメンバー4人が1曲ずつ作っているんですけど、こんなに顔を合わせているメンバーですら伝えたい音楽はバラバラで。でも、根本の思いは同じだから「それでいいじゃん」という気持ちで音楽を作っている、ということですね。そこにどういう価値を付けていただいてもすべてが正解だと思うので、価格は自由にしました。もっと言えば音楽以外のことでも、自分の頭で考えて自分で価値を決める状況は、これからもどんどん続いていくと思います。これからのことを一緒に考えていければという気持ちでスタートさせたのが「Dress farm 2020」です。

──リスナーが自由に価格を決める「Dress farm」という企画は、もともと2014年からsumikaがやっていたことですよね(参照:sumikaが本日“価格設定自由”のニューシングル発売、新木場COASTワンマン決定)。それがここで蘇るという。

片岡 そうですね。こういう期間があると、「なんでバンドをできているんだろう?」「なんでこういう環境で生きられているんだろう?」と考えざるをえなくて。そうなったときに、自分たちの足跡をたどって原点に立ち戻ることは大事なことだし、このタイミングだからこそできることでもあると思うので、今もう一度「Dress farm」にたどり着いたのは自然なことでした。

sumika

巻き込んでごめんね

──ここからは映画「ぐらんぶる」の主題歌「絶叫セレナーデ」と挿入歌「唯風と太陽」について話を聞かせてください。これらは自粛期間の前に録っていたということですよね?

片岡 そうです。今年の初めに「ぐらんぶる」の主題歌のお話をいただいて、2月にレコーディングをしました。当初は主題歌だけの予定だったんですけど、話していくうちに制作チームとどんどん波長が合ってきて、書き終えるぐらいのタイミングで「もう1曲書いちゃいなよ」みたいな(笑)。「もう1曲よろしくお願いします」という感じではなくて、「せっかくいい関係になれたし、この流れでもう1曲お願いできたら映画もより楽しくなるから、やってくれたらうれしいな」くらいの感じで提案してもらって、僕らも「楽しそうですね」と言って。友達と一緒に物作りをしているような感覚でしたね。印象的だったのは、最初の打ち合わせのときに制作チームから開口一番「なんか、巻き込んでごめんね」と言われたんですよ(笑)。「お付き合いしてくれて、本当にうれしいよ」って。その時点で、クライアントとの関係性という感じではなくて、「悪友になってくれるってことだよね」みたいな感じがあって。

──まるで「ぐらんぶる」の世界観のようですね。主人公がどんどん周りに巻き込まれていくという……。

片岡 そうそう(笑)。そのまま映画に出てきそうな制作陣の方々でしたね。

──主題歌「絶叫セレナーデ」の作曲は小川さんが担当されています。ホーンセクションを取り入れた、にぎやかでアッパーなロックチューンですね。

小川 映画の制作チームの方には、最初に「メロウでミドルテンポの曲をお願いします」と言われたんですけど。

──まったく違う曲になりましたね。

小川 そうなんです(笑)。作品が持っているパワー感、エネルギッシュな部分を我々が音楽家として一緒に作り上げていくときに、「自分たちが出せる一番いい正解はなんだろう?」と考えると、アッパーな曲のほうがいろんな人を巻き込めるんじゃないかと思ったので。

──でも、ただにぎやかで明るい曲じゃなくて、要所要所で抒情的でマイナーな感じもあるのが面白いなと。

小川 歌謡曲っぽさを取り入れてみようと思ったんですよね。デモの段階ではメジャーコードで構成していたんですけど、映像を観させていただいてからフル尺を作っていく工程で、コードやテンポを変えていくトライをさせてもらいました。今言ってもらったマイナー感とか、Bメロでハーフテンポに落とす部分とか。映画にもだいぶ一筋縄ではいかない演出がたくさんあるので。

──この曲はギターがかなり目立っていますね。いきなりカッコいいギターリフから始まっていて。

黒田隼之介(G, Cho)

黒田 おがりん(小川)が作ってくれたデモの段階で「こういうことだろうな」というイメージがすごくわかりやすかったので、迷うことはなかったです。おがりんが考えてくれたフレーズを生かしながらレコーディングに臨みました。同じゴールを見ている感じがあったので、僕は音作りや楽器選びのほうに時間をかけて、ドーンといきましたね。

──ドラムはいかがですか?

荒井 この曲はリズムを考えるのが楽しかったです。今までの傾向でいくと、ドラムを叩くにあたって引き算をすることが多かったんですよ。叩きすぎることを求められない場面が多かった気がしていて。でもこの曲では足し算をすることで曲のよさを引き出す考え方で挑戦してみて、僕の中では理想的にハマった感じがありますね。こういう振り切ったタイアップ作品の曲なので……と言うと失礼かもしれないですけど、やりすぎても許してもらえそうな感じもあったから(笑)。ドラムとしてはベストに近い、自分でもすごく好きな楽曲です。