sumika|挑戦の4曲で見えた、新たな可能性

タイトルは自分自身の決意表明

──「センス・オブ・ワンダー」というタイトルはどこから生まれたんでしょうか?

片岡 “知ることは、感じることには勝てない”という意味ですね。僕は何か気になったことがあると、すぐに検索エンジンに文字を打ち込んでしまう癖があって。誰かの成功例、誰かの失敗例を見て、それをやるかどうかを決めてしまうんですよね。失敗したくない気持ちが勝ってしまって先に答えを見ちゃうのは、本当はあんまりいいことじゃないなとは思っているんです。しかも音楽という自分が一番やりたいことをやるうえで、誰かの評価を気にしたり誰かの例を見て一喜一憂したりすることって、すごくもったいないなと思っていて。

──確かに。

片岡 それよりもまずやってみて、自分が感じたことを答えにしたいと思ったので、このタイトルにしました。自分自身の決意表明ですね。たぶん小学校や幼稚園で「センス・オブ・ワンダー」の話をするところもあると思うんですよ。それを今一度、大人の自分に問いかけてみたというか。

黒田隼之介(G, Cho)

黒田 僕、実家で亀を飼ってるんですけど、家の中で放したりするんですよ。すると行き止まりの方向でも、亀は進んで行くじゃないですか。「そっちじゃなくてこっちだよ」と方向転換させる人もいると思うんですが、僕はあえて触らないようにしているんです。今、そんなことを考えてました。

片岡 ああー。

黒田 1回壁にぶつかってみて、ここじゃないって確認して、帰ってくればいいという。僕の教育観の話になってますけど(笑)。

片岡 でも、そういうことだよね。

明日ヒーローになれる?

──2曲目「ライラ」はかなり毒が効いた曲になっています。

片岡 尖っています(笑)。これは詞と曲、ほぼ同時にできましたね。最初にできたときから、ほとんど修正してないです。

──「ライラ」とはどういう意味なんでしょうか?

片岡 これは結局“ライアー”という意味ですね。“嘘つき”と言うとちょっと重いなと思って、言葉遊びみたいな感じで変えたんですが、嘘をつきたくないなというところが本心です。マインドとしては「センス・オブ・ワンダー」と同じ感じがしますね。

──リズムはレゲエっぽい要素がありますね。

片岡 確かに去年の夏くらいに、そういう音楽を聴いていたので。サビのリズムとかは、sumikaの中にはなかったものですね。ライブをイメージして、こういう曲があったらライブが楽しそうだなというところから入っていったんですけど、歌詞がこういう内容になっちゃった(笑)。なんでだろう? まあ、心の中に挑戦しようという気持ちがあったんだと思いますね。

荒井 これまでにないリズムだというのはすごく感じました。サビで頭を振る感じのリズムは今までなかったし、ライブが楽しみな曲ですよね。

黒田 ギターは迷いなく、勢いよく弾きました。「したいことだけ死ぬまでやって そこまでやって じゃなきゃ意味がない」という歌詞がデモの段階からあって。その歌詞のように「自分のやりたいことはこれだ!」というものをズバッとやった感じですね。気持ちよかったです。

小川貴之(Key, Cho)

小川 鍵盤はまったく入れていないんですよ。ギターが立ってほしいという個人的な思いがあったので、俺は入っちゃいけないと思ったんです。

──なんと。潔いですね。

小川 片岡さんと掛け合いで歌っているので、ボーカルだけは参加したんですけど。

──この曲で一番印象的なのは、片岡さんと小川さんのボーカルの掛け合いだと思います。あれは最初からイメージがあったんですか?

片岡 そうですね。「まだ掛け合いをやったことはないな」ということで、やってみようと思ったのがきっかけです。僕自身はメインボーカルをやっていることに固執していないんですよね。極論を言えば、メンバーが歌っていなくても、この4人の空気感で生まれてくる音楽は、すべてsumikaの音楽だと思ってるから。

──なるほど。

片岡 それと、昨年の12月に「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」の主題歌として「ハイヤーグラウンド」を提供させていただいて、やっぱりヒーローってカッコいいなと思ったんですよ。主役以外に、みんなキャラクターが立っていて、主役と同じぐらい人気のあるメンバーもいて。というところで、あえて1人じゃないヒーロー感を出すのもありだなという気持ちもあって、やってみました。けっこう直前に「明日ヒーローになれる?」くらいの感じでオガリン(小川)に言ったもんね?(笑)

小川 ドキッとしたよ(笑)。

黒田 それでヒーローになれちゃうんだから、さすがだね。

片岡 絶対にうまくいくと思ったから、なんの不安もなかった。むちゃくちゃカッコよかったよ。オガリンが1人で歌う曲とはやっぱり違って、僕の1行目を受けて、どう歌うか考えながらやってくれたから。結果的に、聴いたことがないようなオガリンのボーカルになったと思います。sumikaの新しい可能性が見えて、すごくよかったなと思います。