sumikaが6月12日に両A面シングル「イコール / Traveling」をリリースする。
シングルにはテレビアニメ「MIX」のオープニングテーマとして制作された「イコール」、そして恋人たちの切なく意味深なやり取りを描いた「Traveling」が収録される。音楽ナタリーではメンバー4人にインタビューし、「sumikaというバンドを過不足なく伝える作品にしたかった」という今作や現在開催中の全国ツアー「sumika『Chime』Release Tour」について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤壮太郎
アルバム発売の翌日に始まったツアー
──まずは最新アルバム「Chime」を携えて行っているツアーについて聞かせてください。3月の東京・日本武道館公演を皮切りにスタートした全国ツアーも終盤を迎えましたが(参照:sumika、初の横浜アリーナ公演で1万2000人前に新曲「イコール」初披露)、ここまでの手応えはいかがですか?
片岡健太(Vo, G) アルバムリリース日の翌日がツアー初日だったので、アルバムの感想とツアーの感想がそのままつながっているような感じがありました。
──ツアーが進むにつれて、楽曲がオーディエンスに共有されていく感覚も?
片岡 そうですね。日を追うごとにお客さんの楽曲に対する理解度も高くなっていると思いますし、僕らの演奏もどんどんアップデートされていって。そういうツアーの進み方は初めてなので新鮮です。
黒田隼之介(G, Cho) 実際に演奏してみて、「この曲で手拍子が起きるんだ?」とか、「こんなふうに楽しんでくれるんだな」と初めて気付くこともたくさんありましたね。最初はこっちも手探りだったんですが、ツアーの中で「こうすればもっと届く」というやり方もわかってきて。トライアンドエラーを繰り返しながら、いい感じでやれていると思います。
荒井智之(Dr, Cho) うん、いい感じだと思います。いろいろ感じること、考えることもありますけど、まだツアーの途中ですからね。「終わったときにどう感じるか?」ということだと思うし、この先のライブも楽しみです。
小川貴之(Key, Cho) アルバムの中でもいろいろな波を作ることができたと思うんですが、そこに対する理解を深めながらツアーを回れています。ライブの完成度もどんどん上がっているし、ファイナルに向けてさらによくなっていく期待もすごくありますね。
片岡 お客さんの年齢層もかなり広がっているんですよ、上にも下にも。以前は女性のお客さんが多かったんですけど、男性のお客さんも増えてきていて。それもうれしいですね。
10代を振り返って
──そしてツアーの真っ最中に新しいシングル「イコール / Traveling」がリリースされます。「イコール」はあだち充原作のテレビアニメ「MIX」のオープニングテーマですね。
片岡 最初にお話をいただいたときは、純粋に驚きましたね。あだち充先生の原作のアニメで自分たちの音楽が流れる未来は、メンバー誰1人として想像していなかったので。「そんなことがあるの?」とびっくりしました。
黒田 うん。
片岡 「MIX」は「タッチ」の30年後が舞台なんですが、僕が小学生の頃の夏休みに「タッチ」の再放送をよくやっていたんですよ。それを午前中に観て、午後は外で友達と遊んで、草野球をやるという日々を送っていました。
──「タッチ」は国民的人気の作品ですからね。「イコール」も幅広い層のリスナーが聴いていると思いますが、どのようなイメージで作り始めたんですか?
片岡 アニメ側から「こういう曲調でお願いします」という指定はなくて、sumikaサイドから「こういうアプローチはどうですか?」と何曲か投げさせてもらったんです。その中で一番アニメ側のイメージに合っていたのが、「イコール」のデモだったんですよね。その後アレンジを固めて、歌詞を乗せて。ちょうど年末年始の時期だったんですけど、アニメの制作スタッフの方々とも細かいキャッチボールを重ねて、丁寧に作っていきました。もちろんメンバーとも何度もやり取りして、一歩一歩進めていって。ただ、「ファンファーレ / 春夏秋冬」のリリースツアーと重なっていたから、スケジュール的には大変だったんです。ライブの楽屋でアレンジについて話すこともあったし。
小川 そうだったね。「イコール」はストリングスが入ったことでいきなり化けた感じがあります。これまでもストリングスを入れた曲はいくつかありましたが、この曲は「いろんな人に受け入れてもらえそうだな」という期待度が増した感じがあって。ピアノのフレーズも、ストリングスに合わせながら考えました。いつもはピアノを先に決めることが多いので、そこもいつも違っていましたね。
黒田 確かにストリングスはすごく印象的ですね。ストリングスチームとも一緒に制作する回数が増えてきて、アレンジを組み立てるときも「ここの音域を開けておいたほうがいいな」ということもわかってきました。あと、この曲はドラムの音がめちゃくちゃいいんですよね。
荒井 今回はそんなに悩むこともなく制作できたと思います。国民的な作品のアニメだし、今まで以上にたくさんの人に聴いてもらえる可能性が高い曲ですけど、僕らとしては「こうすれば曲がよくなるよね」ということに集中していて。そういう環境で制作できるようにスタッフが考えてくれたんだと思うし、すごくスムーズでした。
──いつも通り、“いい曲を作る”ことにフォーカスしていたと。歌詞も幅広い層のリスナーに当てはまる内容ですよね。
片岡 そうだと思います。「MIX」では高校野球が描かれていますが、スポ根的なところに偏らず、「少年や青年が成長していくために大事なことを表現してほしい」と制作スタッフに言ってもらって。10代の頃は誰もがもがき苦しむし、悩むし、その頃のことをもう一度考えながら歌詞を書こうと。その時期を振り返るという行為から歌詞の制作に入りました。
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“どう受け取っても正解”な作品