聴くたびに“涙の跡”を思い出せるように
──「フィクション」の歌詞にある「栞挟んだページ 涙の跡 苦しくて思わず閉じた 理由は忘れずに」という一文が、すごく片岡さんらしいなと思いました。過去の苦い記憶を踏まえて前に進んでいく感じと言うか。
片岡 この一節には休養したときのことを書いていて。思い出したくないけど、忘れちゃダメなことだと思うんです。活動再開後はありがたいことに「忙しいな」って思うことも増えてきて、ふいに忘れちゃいそうになるときもあるんですよ。でも“俺は1回倒れてるぞ”ってことを、支えてくれる周りの人はもちろん、自分自身のために忘れちゃダメだなって。だから僕がこの曲を聴いたときに必ず思い出せるように、自分のために書きました。
──そうだったんですね。疾走感のある楽曲には「Lovers」や「MAGIC」のようなハッピーな雰囲気がありつつ、どこか抑えた印象も受けました。片岡さんも突き抜けるような歌い方ではなくて。
片岡 “フィクション”なので、物語を読み聞かせるような歌い方がいいのかなと思って。今回のレコーディングで大きく変わったのが、これまで自分で録っていたボーカルレコーディングを、エンジニアさんにお願いしたことなんですよ。レコーディング自体は3年ぐらいご一緒してるエンジニアさんなので、sumikaチームとの信頼関係もあるし、やりたいことも理解してくれてるし、そういう方だったら一緒にできるなと思って。そのエンジニアさんの顔が近くにあったから、より語りかけるように歌えたかなと(笑)。
──木琴や鉄琴、ティンパニーの音色もアクセントになっていますね。
片岡 アレンジは隼ちゃんが担当したんですよ。
黒田 この曲ではギターは弾いてないんです。おがりん(小川)の桜が舞い散るような美しいピアノと、ストリングスのきれいなハーモニーに歌が乗るっていうのを聞かせたかったから。それで初めて楽譜を書いたんです!
小川 ピアノはいい音で録りたかったので、それをエンジニアさんに伝えて、いい生ピアノでレコーディングさせてもらいました。
絶望的にズタボロにしてください!
──2曲目「下弦の月」は先ほどお話に出た通り、デモから作った曲ですね。
片岡 この曲はスタッフチームがセレクトしてくれたんです。制作期間はメンバーだけじゃなくて、スタッフチームにも昔のデモを聴いてもらって。
黒田 もともとワンコーラスだけあったんですが、その続きを今回の制作期間で作りました。
──展開やサビのメロディラインからこれまでのsumikaの楽曲とはひと味違う印象を受けたので、昔のデモから作ったと聞いて驚きました。
黒田 いつもはだいたいこの半分の尺でサビを作るんです。この曲では進行を長くとってメロディを付ける、みたいなことがやりたくて。
──「下弦の月」は黒田さんが作曲していますが、これまで以上にかなりエモーショナルな仕上がりですね。
小川 黒田曲、エモいですよね!(笑)
黒田 星空をイメージしてデモを作ったんです。星空を思い浮かべたときに、下がっていくフレーズが思いついたのでそれをイントロに入れて。それで、今回新たにアウトロを作るときに考えたのが、デモを作っていたときと今だと、住む場所も変わって、一緒にいる人も変わったなということで。でもふと星を見上げたときに「あ、星だ」って思うのはどこにいても同じ。同じものを見てるけど違う気持ちでいる、違うところにいるけど同じものが見える、みたいなことを表現したくて、コード進行は違うけど同じように下降するフレーズをアウトロに付けました。
──もともとは星をイメージして作曲したということですが、タイトルや歌詞は月をモチーフにしていますね。
片岡 隼ちゃんから作曲エピソードを聞いたときに、自分の中で「同じものを見てるけど、あのときと感情が違うもの」を探してみたんです。それで、1つ思い浮かんだのがカレー。カレー屋さんでおいしいカレーを食べて、その数年後に「あそこのカレー屋さんおいしかったよなあ」って行ってみたんですけど、作る人も一緒なのに「なんかあんまりおいしくないな」と思ったことがあったんです。それで「あ、これはたぶん、一緒に食べた人がよかったんだ」って気付いて。そっか、隼之介は星を見ていてそういうふうに感じてるんだなって自分の中で腑に落ちたんです。最初は僕も星を見ようと思ったんですけど、神奈川県できれいな星は見えなくて(笑)。「見えねー!」と思いつつ、曲作りをしてたら朝になって月が目に付いたんです。それで「あ、月か!」って。
──そこでしっくりきたんですね。
片岡 そのときは「これやりたいな、あれやりたいな」って思いながら曲を作って朝になったので、すごくポジティブな気持ちで月を見ていて。でも、昔はアルバイトの夜勤明けによく月を見てて……。
小川 (小声で)最悪だ、最悪なやつだ……。
片岡 すごいぐったりしながら「明日もまた夜勤かあ……」とか。そんなネガティブな気持ちのときも、ポジティブな気持ちのときも、どこにいても朝方の月は見えてたなと思ったんです。だったら月をモチーフに書いたほうが嘘がないかもしれないっていう話をメンバーとして、じゃあ月で書いていこうって。
──下弦の月は満月から新月に至る間の月で、よく月のサイクル的に情緒不安定になりやすい時期、とか言いますよね。この曲は新月に“新しいスタート”という意味を持たせて、別れを表現した歌詞なのかなと思いました。
片岡 そうですね。終わることは始まることだから、この月が出ているということはいずれ次にまたスタートがあるっていう。まあ、隼ちゃんから「絶望的にズタボロにしてください!」って言われたので(笑)。
黒田 僕がリクエストしたんです!
──そんなリクエストを(笑)。
黒田 やっぱり……エモい期間だったので(笑)。
小川 すごいね、その時期(笑)。
黒田 今まで、片岡さんが書いてくれた歌詞に「こうしてほしい、ああしてほしい」を言うことはなかったんですけど、この曲だけは「救いのない曲にしてほしいんです!」ってお願いして書いてもらいました(笑)。
片岡 とは言え、僕ももちろんこの曲の中に感情移入してるから、やりすぎると自分で聴けなくなっちゃうなと思って(笑)。本当にただただ闇の方向にだけ進んでいく歌詞だとしたら、タイトルは「上弦の月」だったと思うんですよ。ギリギリ「下弦の月」に落ち着くことができました(笑)。
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4人だけで“世界旅行”した「ペルソナ・プロムナード」
- sumika「Fiction e.p」
- 2018年4月25日発売 / Sony Music Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
2052円 / SRCL-9756 -
通常盤 [CD]
1296円 / SRCL-9758
- CD収録曲
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- フィクション
- 下弦の月
- ペルソナ・プロムナード
- いいのに
- 初回限定盤DVD収録内容
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「sumika Film #3」
2017.10.26東京国際フォーラム ホールAでのライブ映像- Answer
- Lovers
- Summer Vacation
- まいった
- ここから見える景色
- ふっかつのじゅもん
- アイデンティティ
副音声:メンバーによるオーディオコメンタリー収録
ツアー情報
- sumika「sumika Live Tour 2018 "Starting Caravan"」
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- 2018年5月8日(火)
神奈川県 カルッツかわさき - 2018年5月11日(金)
宮城県 トークネットホール仙台 大ホール - 2018年5月13日(日)
北海道 札幌市教育文化会館 大ホール - 2018年5月18日(金)
新潟県 新潟県民会館 大ホール - 2018年5月26日(土)
広島県 上野学園ホール - 2018年5月30日(水)
香川県 サンポートホール高松 大ホール - 2018年6月1日(金)
熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館) - 2018年6月8日(金)
福岡県 福岡市民会館 大ホール - 2018年6月10日(日)
石川県 本多の森ホール - 2018年6月22日(金)
愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール - 2018年6月23日(土)
愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール - 2018年6月30日(土)
東京都 日本武道館 - 2018年7月1日(日)
東京都 日本武道館 - 2018年7月14日(土)
京都府 ロームシアター京都 - 2018年7月17日(火)
兵庫県 神戸国際会館こくさいホール - 2018年7月18日(水)
大阪府 フェスティバルホール
- 2018年5月8日(火)
- sumika(スミカ)
- 片岡健太(Vo, G)、荒井智之(Dr, Cho)、黒田隼之介(G, Cho)により2013年5月に結成されたバンドで、sumika[camp session]名義のアコースティック編成でも活動している。同年10月に1stミニアルバム「新世界オリハルコン」をリリース。2014年11月にはmurffin discs内レーベル・[NOiD]の第2弾アーティストとして2ndミニアルバム「I co Y」を発売する。2015年2月にサポートメンバーの小川貴之(Key, Cho)がバンドに正式加入し、6月に3rdミニアルバム「Vital Apartment.」をリリースした。8月には片岡の体調不良によりライブ活動を休止。その後11月に東京・shibuya eggmanで行ったワンマンライブをもって活動を再開させる。2016年3月には活動再開後初の作品として両A面シングル「Lovers / 『伝言歌』」を、2017年7月には初のフルアルバム「Familia」をリリース。2018年4月に新作CD「Fiction e.p」を発売した。バンド結成5周年イヤーに突入する5月からは東京・日本武道館公演2DAYSを含むバンド史上最大規模のホールツアー「sumika Live Tour 2018 "Starting Caravan"」を開催する。