「自分の兄貴がカッコいいかどうかわかんない」みたいな感じ

──今作には3月に両A面シングル「Lovers / 『伝言歌』」としてリリースされた「『伝言歌』」のストリングスアレンジバージョンも収録されています。こちらは前身バンド時代の楽曲ということもあって、シングルを出した際のファンの方からの反響も大きかったのではないでしょうか？

片岡　そうですね。「『伝言歌』」は前身バンド時代の代表曲と言ってもいいぐらいの曲なんですけど、ライブでしかやっていなくてずっと音源化を拒み続けていたんです。それは初期衝動をパッケージする自信がなかったし、常にライブで今の答えを出していくのがいいんじゃないかなって思っていたからなんですけど。でも今回の休養を経て、今ならきっとあの頃を超えられるんじゃないかなっていう気持ちになりました。

──それはなぜですか？

片岡　人間関係や自分を形成している状況が、今が本当にベストだなって思うからです。あの頃と比べて音楽家として、スキルももちろんそうですけど気持ち的な部分でも大きく変わったと思っていて。こんなにちゃんと人とつながれたことがなかったし、そこも愛情というものに気付けたからということが大きいんだと思います。今だったら普通になんの気負いもなくレコーディングしても、あの頃を超えられるだろうなっていう。

荒井　実は僕はどちらかというと、「Lovers」と「『伝言歌』」を両A面で出すっていうのは反対派だったんですよ。「『伝言歌』」は前身バンド時代にずっとやってきた曲なんで、もはや客観的な見方をまったくできなくて。この曲はもちろんいい曲だと思ってずっとやってるんですけど、それが果たして今、初めて聴いた人にどう響くかっていうのをまったくイメージできなかったんです。本当に身内みたいな存在で「自分の兄貴がカッコいいかどうかわかんない」みたいな感じかな（笑）。でもいろいろ話していくうちに、やっぱりタイミングもあるし、出すなら今なのかなって。

2016年現在のsumikaの答え

──ストリングスの導入や片岡さん以外のメンバーがリードボーカルを担当するなど、今作にはsumikaにとって新たなトピックがいくつもありますね。

片岡　変化をするときって、だいたい摩擦は起きるものだと思うんです。でも変化していかないことのほうが嘘だなと思って。人間って常に変わっていくものだし、大事なのはずっと変わらないことじゃなくて、そのときに自分の中で一番誠実な答えを出すことだと思っているんです。「1年後同じことを言ってなきゃいけない」みたいな縛りを作ってしまうと、変化できなくなると思うんですよ。今作は「アンサーパレード」っていうタイトルですけど、パレードって必ず終わると思っていて。その終わったあとの少し寂しい感じも含めてパレードで、それでまた次が始まる。この作品は2016年現在のsumikaの答えなんです。

──では今作でいろいろな変化があったけど、また次はどういうものが出てくるかわからないんですね。

片岡　そうですね。そこに対してはいい意味で責任を持ちません。いいものを出すっていう約束だけはできるし、誠実に答えは出していくけど、変化はずっとし続けると思います。

荒井　基本的にメンバーは、みんなチャレンジしたがりなんです。まあそうは言ってもなんでもかんでもありというわけではないので、sumikaとしての魅力とか、sumikaとして大事にしている部分っていうのは毎回どこかに入っているし、結果残ることではあると思いますね。安心して変化を楽しんでいただきたいです。

小川　お客さんとか、今回の作品に関わってくれた人との信頼関係が築き上がったような作品になってますよね。

片岡　うん。いつも通りの最高傑作。いつも「前作を超えられるのか？」っていう思いのがあるんですけど、今回も無事超えられました！

黒田　そして、ここで終わりではなく、もっと「あれもやりたい」「これもやりたい」っていうことがいっぱい出てきちゃってるので、これからも楽しみにしていてほしいです。