おがりんが歌ったら刺さるんだろうな
──今回小川さんが作曲した「enn」や「溶けた体温、蕩けた魔法」はどのようなテーマで制作されたんですか?
小川 人間らしい飾らない曲を作りたかったんです。ミドルテンポにしたほうがそういうのが出やすいかなと思って、デモ段階からゆったりめの曲ばかりをひたすら作っていましたね。
片岡 おがりんの曲はめっちゃプレーンなイメージなんですよ。隼ちゃんはだいたい、なんか気持ちが乗ってるんですよ。「こういう曲を作りたい」みたいなのが曲からひしひしと伝わってくるというか。仮歌がなんかエモいんですよね(笑)。
黒田 キメいっぱい作りがちだしね(笑)。
片岡 だからおがりんの曲は自由なぶん「どうしたらいいかな?」ってすごく考えましたね。「溶けた体温、蕩けた魔法」とか特に、ただただいい曲で、だからこそ一番歌詞に悩みましたね。
──「enn」では小川さんが初めてリードボーカルを務めていますね。
片岡 「enn」は歌詞ができていない状態で、仮歌を聴きながら車に乗っていたときにパッと「これおがりんが歌ったほうがいいんじゃないかな?」と閃いて。でもメインボーカルが変わるってけっこうなことだし、レコーディングが近かったからその日のスタジオですぐにみんなに提案しました。「enn」は家族について歌っているナンバーなんですけど、おがりんの家庭環境や生い立ちっていうものを全部知ってたから、「おがりんが歌ったら刺さるんだろうな」「俺には歌えない歌を歌えるだろうな」って思って。
──明確なイメージがあったんですね。
片岡 おがりんの持つ強さみたいなものをイメージしながら書いたら、本当に15分ぐらいで歌詞が書けたんです。絶対にいいっていう確信があったし、おがりんがこれを歌って、おがりんのお母さんがライブを観に来て、俺が泣くっていう流れも見えたし(笑)。
小川 これまでたくさんお母さんに支えられてきたんですよね。音楽なんてやってる場合じゃないっていう状況でも、ちゃんと許してくれて「あなたはあなたの道を思いっきり行きなさい」って言ってくれるような人で。
──お話を聞いていると、小川さんが加入してからの日々は本当に怒涛だったんですね。小川さんは前のバンドではメインボーカルを担当されていましたし、今回リードボーカルを務めるにあたっていろいろな心境の変化があったのではないでしょうか?
小川 そうですね、sumikaに入ってから濃い時間を過ごしているので、感情はいろいろシーズンによって変わっていると思います(笑)。でも活動休止中は「sumikaを絶対に守りたい」っていう気持ちがあって、今は「sumikaをさらにいいバンドにしたい、いいものを作ろう」っていう思いが強くあるんです。だから今回、片岡さんに「歌ってくれないか」って言われたときにもうれしさが一番大きかったですし、とにかく「絶対にみんなでいいものを作ろう」って思いましたね。片岡さんにも「2番を歌ってもらいたい」「僕の歌の下をハモってください」っていうオーダーをして。そうしたらいいチーム感が絶対に出て、味が出てくるだろうなっていう思いがあったんです。
黒田 おがりんが歌を入れるというのも、さっき言ってた愛情の1つというか「アンサーパレード」というアルバムの“アンサー”の部分の1つだと思うんですよね。「おがりんの歌も愛してくれー!」って。
片岡 担当はキーボードとコーラスだけど、おがりんにはキーボードボーカルみたいな気持ちで加入してもらってるから、そこも含めてsumikaの武器だと思ってるんです。
ストリングスに味をしめた
──もともとsumikaのコンセプトに「芸術家と共に作品を制作する」というものがあると思うんですけど、今作のレコーディングにはメンバー以外のミュージシャンも多数参加していて、さらにそのオープンなイメージが広がった印象があります。
片岡 sumikaというバンドを家に例えたら、都会の家じゃなくて、沖縄の家みたいなイメージなんです。常に門が開いていて「いつ来てもいいし、いつ出てってもいいよ」っていう。今回7曲中4曲にストリングスが入っているのは、自分たちだけで完結させるっていうのを、いい意味で諦めている作品だからなんです。もう、弱いところは弱いし、できないところはできないし、やれる人にやってもらおうっていうスタンスで。
──今回4曲にストリングスを入れるというのは、アルバム全体の構想としてあったのでしょうか?
片岡 sumikaは「Lovers」で初めてストリングスを入れたんですけど、その感触がすごくよくて。味をしめたっていう感じですかね(笑)。「僕らの曲とストリングスは相性がいいんだな」っていうことに気付けたから、「またアルバムでも入れたいなあ」って思って、そんなフラットな気持ちでミニアルバムを制作しましたね。次に作る楽曲には、もしかしたらホーン隊が入るかもしれないし、パーカッションが入るかもしれないし。
荒井 今までも僕たちはロックバンドという括りにどっぷりと浸かってたつもりはないんですけど、休養を経てさらにその意識が希薄になったというか。大音量で音を鳴らして、「バンドサウンドでずっといきたいぜ」っていうよりも、音楽っていうものに1度フラットに向き合って、どうやったらこの曲がいいものになっていくのかっていう、ポップス的な考え方に寄ったのかなっていうところがあって。今回のミニアルバムには打ち込みの曲があったりして、バラエティにも富んでると思いますね。
──「1.2.3..4.5.6」ですね。この曲のみ編曲をイトヲカシとしても活動している宮田“レフティ”リョウさんが手がけていて。
片岡 彼とは同い年で、昔から友達なんです。「1.2.3..4.5.6」は実は前身バンドのときにやっていた曲なんですけど、その曲に和楽器アレンジを加えて、いい意味でぶっ壊してくれる人を探していたんですね。そしたらたまたまリョウが和楽器の音色が収録されているソフトを導入したという情報を小耳に挟みまして「ごっつぁんです!」という感じでお願いしました(笑)。リョウだったら前のバンドでやっていたときも知ってるから、リスペクトしながらもちゃんとぶっ壊してくれそうだなっていう思いもあって。スタジオ行って、メンバーとリョウとゲラゲラ笑いながら制作しましたね。
黒田 「ここにレーザーみたいな音入れよう! ここには和太鼓も!!」って。
小川 「はいはい、ちょっと待ってねー」みたいな感じで(笑)。
荒井 この曲には生ドラムが入っていないんですよ。前身バンドのときの音源には普通に生ドラムを入れてたんですけど、今回のレコーディングのときに打ち込みがすごく合いそうだなって思って。バンドスタイルにこだわってないからこそ、自由な楽曲に仕上がりましたね。
──「チェスターコパーポット」や「ふっかつのじゅもん」のようなライブアンセムになりそうですね。
片岡 ライブで盛り上がるのが見えるような曲ですよね。今作は全体的にゆったりとした印象ですが、僕らは当然ライブが大好きなので、そういう曲も入れたいなと。
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収録曲
- sara
- Lovers
- 明日晴れるさ
- 1.2.3..4.5.6
- enn
- 溶けた体温、蕩けた魔法
- 「伝言歌」-Answer Parade ver.-
「アンサーパレード」Joint Live Tour -Parade-
- 2016年7月18日(月・祝)
- 香川県 DIME
- <出演者> sumika / SUPER BEAVER
- 2016年7月20日(水)
- 福岡県 Queblick
- <出演者> sumika / イトヲカシ
- 2016年8月22日(月)
- 広島県 SECOND CRUTCH
- <出演者> sumika / Czecho No Republic
- 2016年8月24日(水)
- 静岡県 Shizuoka UMBER
- <出演者> sumika / Czecho No Republic / FINLANDS(オープニングアクト)
- 2016年9月8日(木)
- 新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- <出演者> sumika / フレデリック
- 2016年9月9日(金)
- 宮城県 仙台MACANA
- <出演者> sumika / フレデリック
sumika(スミカ)
片岡健太(Vo, G)、荒井智之(Dr)、黒田隼之介(G, Cho)により2013年5月に結成されたバンドで、sumika[camp session]名義のアコースティック編成でも活動している。同年10月に1stミニアルバム「新世界オリハルコン」をリリース。2014年11月にはmurffin discs内レーベル・[NOiD]の第2弾アーティストとして2ndミニアルバム「I co Y」を発売する。2015年2月にサポートメンバーの小川貴之(Key, Cho)がバンドに正式加入し、2015年6月に3rdミニアルバム「Vital apartment.」をリリースした。8月には片岡の体調不良によりライブ活動を休止。その後11月に東京・Shibuya eggmanで行ったワンマンライブ「sumika復活フリーワンマンライブ」をもって活動を再開させる。2016年3月には活動再開後初の作品として両A面シングル「Lovers / 『伝言歌』」を、5月には4thミニアルバム「アンサーパレード」をリリースした。