シンプルな曲ってこんなに難しいんだ
──今話してくださった制作アプローチの特徴が一番強く表れているのは、リード曲の「未来花」だと思います。歌とピアノだけのシンプルな構成なんですけど、とても奥深い表現になっていて。
常田 ありがとうございます。確かにシンプルなバラードなんですけど、込めているエネルギーはすごくて。制作中もプレッシャーを感じてましたね。こういうアレンジの曲ってアルバムの最後にそっと入ってたり、シングルのカップリングみたいなイメージだと思うんですけど、自分たちの中ではそうするつもりはなくて。
大橋 もともとはシングルとしてリリースしたかったんです。ピアノと歌はスキマスイッチの最大にして最小の形だし、そういう形の曲をシングルにすることに意味があるんじゃないかなって。今の音楽シーン全般に言えることかもしれないけど、シングルになる曲って派手できらびやかなサウンドの楽曲が多い印象があるんですよ。そんな中でピアノ1本のシングルがあってもいいのかなと。これは作り手側のエゴみたいなもので、聴いてる人にとっては関係ないかもしれないけど、もっともシンプルなスキマスイッチの形で勝負してみたいという思いがあったんですよね。
常田 今回、CMの話をいただいたことも大きくて(「未来花」はジョンソン・エンド・ジョンソン アキュビュー2018キャンペーンソング)。そこに僕らの思いを乗せることもできたし、この曲をリリースするタイミングはここだったんだなって。
大橋 うん。ただ、歌詞やアレンジを含めて、最後の最後までいろいろ考えてたよね。
常田 難しかった! シンプルな曲ってこんなに難しいんだなって改めて思いましたね。アレンジに関してもピアノと歌だけでやろうとすると、こんなに神経を使うんだなって。
大橋 オーケストラの編曲をやってる方が「カルテットが一番難しい」と言うのと似てるかもね。楽器が少ないぶん、やらなくちゃいけないことが増えると言うか。
常田 お互いにいろいろと要求したしね。ピアノの演奏にしてもタッチ、ニュアンス、ボイシングを含めて「こうしてみたら?」「今のはよかった」という話を何度もして。
大橋 僕もピアノをやっていたことがあるから余計に気になるんでしょうね。僕の歌のディレクションはシンタくんがやってるわけだから、僕がピアノに口出すのも自然なことなんですけど。
──歌詞についてはどんな話をしていたんですか?
常田 “名前を呼ぶ”ということをモチーフにした曲はいくつかあるんですけど、それについてしっかり表現したいと言う気持ちがあって。最近そのことを考えることが多かったんですよ。僕が母親を亡くしていることもあって「親から名前を呼ばれるって、幸せなことなんだな」と思ったり。そういう思いを曲に落とし込めるのは作家冥利に尽きるし、「どうかな?」って卓弥に提案したらすぐに「いいね」って言ってくれて。
大橋 うん。ラブソングにしたいなという話をしてたんだけど、シンタくんは最初、寂しくて切ない歌をイメージしてたみたいで。僕は温かいラブソングにしようと思ってたから、また2人で話し合って今の形になりました。
このアルバムが受け入れてもらえるといいな
──このアルバムが完成したことで、スキマスイッチのポップスの在り方をつかみ直せたという実感はありますか?
大橋 うーん……このアルバム、ポップスになってますかね? 僕らなりにはやれることはやったんですけど。
常田 どう受け取られるかはわからないからね。
大橋 そうだね。「このアルバムをどう受け取ってもらえるか?」という楽しみのベクトルも前作とはかなり違うんです。アルバム「スキマスイッチ」のときは「ここまでやっても楽しんでもらえるのかな?」ということが気になってたんだけど、今回はもっと先まで考えていて。例えば「未来花」を結婚式で使ってもらったり、聴いてくれた人の人生や日常に溶け込んでくれたらいいなという期待があって。
──リスナーの日常や人生に寄り添うのもポップスの役割ですからね。前作で空っぽになった創作意欲も戻ってきたのでは?
大橋 いや、そこはまったく変わらないですね。前作を作り終えたあとと同じように抜け殻になってます(笑)。
常田 ははははは(笑)。
大橋 今は曲なんか書きたくないので(笑)。ただ「この先もやれることはたくさんあるだろうな」と思っているので、そこは前作とまったく違いますね。そのためにはインプットも必要だろうし。
常田 そう。インプットが必要だということがわかってるんだよね。
大橋 2人でスタジオに入れば何かできるだろうけど、それだけではダメで。「これを発信したい」と自然に思えるまでの期間は必要でしょうね。
常田 まずはアルバムを聴いてほしいですね。リスナーの皆さんからのフィードバックが本当に大事なので。
大橋 受け入れてもらえるといいな……このインタビューで話したことって、アルバムが受け入れられたらすごくカッコいいと思うんですよ。でも受け入れられなかったら、ただの頑固者ですよね。「そんなめんどくさいこと言ってるから、スキマは売れないんだよ!」って言われそう(笑)。
──(笑)。少なくとも「新空間アルゴリズム」が優れたポップスアルバムであることは間違いないと思います。最後に「今のスキマスイッチのいいところ」について聞かせてもらえますか?
大橋 難しいことを聞きますね(笑)。
常田 以前だったらパッと答えられたんだろうけどね。歌、楽曲、歌詞、人柄……いろいろあると思いますけど、僕の願望としては、10人に“スキマスイッチとは?”と聞いたら、答えがバラけていてほしいんですよね。「スキマスイッチって、こうだよね」っていう答えがたくさんあって、そこで会話が生まれるような。
大橋 うん。あとは、100回聴いても飽きないことかな。アレンジにも歌詞の行間にもいろんなものを仕込んでいるので、100回目で初めて気付くこともあると思うんです。スルメ的に長く楽しめる音楽であってほしいという気持ちがありますね、ずっと。
- スキマスイッチ「新空間アルゴリズム」
- 2018年3月14日発売 / AUGUSTA RECORDS
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初回限定盤 [SHM-CD+DVD]
3996円 / UMCA-19056 -
通常盤 [CD]
3186円 / UMCA-10056
- CD収録曲
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- リチェルカ
- LINE(shinku-kanmix)
- パーリー!パーリー!
- ミスランドリー
- Revival
- 未来花
- ミスターカイト(shinku-kanmix)
- Baby good sleep
- さよならエスケープ
- リアライズ
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「LINE」Video Clip
- 「ミスターカイト」Video Clip
- 「この闇を照らす光のむこうに-スキマスイッチver.-」(2017.12.28 COUNTDOWN JAPAN 17/18@幕張メッセ国際展示場)
- 「新空間アルゴリズム」Special Interview
- SUKIMASWITCH TOUR 2018 "ALGOrhythm"
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- 2018年4月11日(水)神奈川県 カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)
- 2018年4月14日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2018年4月18日(水)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年4月19日(木)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年4月27日(金)香川県 サンポートホール高松
- 2018年4月28日(土)高知県 県民文化ホール オレンジホール
- 2018年5月3日(木・祝)岡山県 倉敷市民会館
- 2018年5月4日(金・祝)鳥取県 米子コンベンションセンター
- 2018年5月6日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2018年5月9日(水)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2018年5月12日(土)新潟県 新潟テルサ
- 2018年5月13日(日)石川県 本多の森ホール
- 2018年5月19日(土)栃木県 宇都宮市文化会館
- 2018年5月20日(日)群馬県 ベイシア文化ホール
- 2018年5月29日(火)青森県 八戸市公会堂
- 2018年5月30日(水)山形県 やまぎんホール(山形県県民会館)
- 2018年6月1日(金)福島県 會津風雅堂
- 2018年6月6日(水)東京都 NHKホール
- 2018年6月10日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2018年6月11日(月)大阪府 オリックス劇場
- 2018年6月18日(月)京都府 ロームシアター京都
- 2018年6月19日(火)兵庫県 神戸国際会館
- 2018年6月29日(金)北海道 北見市民会館 大ホール
- 2018年7月1日(日)北海道 ニトリ文化ホール
- 2018年7月3日(火)北海道 七飯町文化センター
- 2018年7月9日(月)愛知県 刈谷市総合文化センター
- 2018年7月12日(木)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
- 2018年7月19日(木)東京都 中野サンプラザホール
- 2018年7月20日(金)東京都 中野サンプラザホール
- 2018年7月26日(木)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
- 2018年7月27日(金)三重県 亀山市文化会館 大ホール
- 2018年8月8日(水)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
- 2018年8月9日(木)鹿児島県 宝山ホール(鹿児島県文化センター)
- 2018年8月12日(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
- スキマスイッチ
- 大橋卓弥(Vo, G)、常田真太郎(Piano, Cho)のソングライター2人からなるユニット。2003年7月に「view」でデビューして以降、「奏(かなで)」「全力少年」などヒット曲を次々と生み出す。2013年7月にはデビュー10周年を迎え、同年8月には初のオールタイムベストアルバム「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」を発表。2017年2月には彼らが敬愛する12組のアーティストをプロデューサーに迎え制作された、過去に発表した楽曲をリアレンジしたアルバム「re:Action」をリリースし、同企画に参加したアーティストとの対バンツアーも行った。9月には25枚目のシングル「ミスターカイト / リチェルカ」を発売。デビュー15周年を迎える2018年3月に7thアルバム「新空間アルゴリズム」をリリースし、4月から、全国ツアー「SUKIMASWITCH TOUR 2018 "ALGOrhythm"」で全国27カ所34公演を行う。