音楽ナタリー Power Push - スキマスイッチ
カップリングという名の「実験」集大成
「消しゴムシリーズ」の由来
──“実はこの曲とこの曲がつながっている”という仕掛けが見えてくるのも、このアルバムの面白さだと思います。もっとも有名なのは「青春騎士」「君曜日」を含む「消しゴムシリーズ」ですよね。
大橋 それはファンの皆さんが言い出してくれたことなんですよ。もちろん作ってるときに楽曲同士をリンクさせようという狙いはあったんですけど、自分たちで「消しゴムシリーズ」という名前を付けたわけではないので。
常田 そこは作っていて楽しい部分なんですけどね。どこまで曲と曲のつながりを匂わせるか?というところもあるし。わかりやすくてもつまらないし、隠しすぎると親切じゃないので。実は僕と卓弥の間でも言ってない、歌詞の裏の意味なんかもあって。
大橋 ふーん。
常田 「歌詞の対象になっている人がいる」とか、そういう小さいことなんですけど。僕らとしては、そこも含めてリスナーの皆さんに楽しんでほしいんですよね。「この曲の歌詞って、ひょっとしてあの曲につながってる?」とか。それもスキマスイッチのカラーだと思うし、「消しゴムシリーズ」はそれがうまくできたパターンじゃないかなって。今はネットがあるから、そういう情報が簡単にわかってしまうのがちょっと悔しいですけどね(笑)。
その方向で間違ってないよ
──GRAPEVINEが参加した「さみしくとも明日を待つ」(5thシングル「全力少年」収録)も印象的でした。
大橋 それこそカップリングにはもったいない曲ですよね。
常田 この曲も純粋に「GRAPEVINEと一緒にやったらカッコいいだろうな」というところから始まってるんですよ。もともと僕がGRAPEVINEのファンだったんですけど、この曲に関して言えば、卓弥が「いいじゃん、やろうよ」って理解してくれたことがうれしかったんですよね。まだアルバムを1枚しか出していない時期だったし、自分の個人的な趣味を出すのは早いかなと思っていたので。
──大橋さんもバンドサウンドは好きですからね。
大橋 うん、そうですね。僕もこの曲にGRAPEVINEに参加してもらったら、すごくカッコいいだろうなって思ったし。その前は「ディストーションがかかった(歪んだ)ギターなんて、うるさいだけ」って思ってたんですけどね(笑)。それよりもきれいなメロディのほうが大事だったというか。
──メロディ重視というスタンスは、ずっと一貫してますよね。ボーナストラックとして収録されている「壊れかけのサイボーグ」は大橋さんがスキマスイッチを結成する前にやっていたバンド時代の楽曲ですが、中心になっているのはやっぱりメロディだと思うし。
大橋 「壊れかけのサイボーグ」は18歳か19歳の頃に書いた曲なんですけど、今聴いても「当時からずっと変わっていない感覚があるな」って思いますね。だから、その頃の自分に何か言うとしたら「その方向で間違ってないよ」っていうことでしょうね。当時は将来のことなんて何も考えずにやってたけど、「そのまま曲を書き続ければ大丈夫だよ」って言ってあげたいなって。そう思えるということは、ブレずにやってきた部分が大きいからでしょうね。
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- ベストアルバム「POPMAN'S ANOTHER WORLD」 / 2016年4月13日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [Blu-spec CD2 3枚組] 4104円 / AUCL-30034~6
- 通常盤 [CD2枚組] 3564円 / AUCL-204~5
収録曲
DISC 1
- 夕凪
- スフィアの羽根
- ためいき
- 電話キ
- 石コロDays
- Aアングル
- 弦楽四重奏のための「ドーシタトースター」
- 僕の話-プロトタイプ-
- 快楽のソファー(仮)2014 ver.
- 夏のコスモナウト
- サウンドオブ
- 雨は止まない
- 小さな手
DISC 2
- 雫
- ハナツ
- 1017小節のラブソング
- 僕の青い自転車
- 青春騎士
- さみしくとも明日を待つ
- 猫になれ
- 君曜日
- Bアングル
- トラベラーズ・ハイ
- 回想目盛
- またね。(betsu-oke ver.)
<ボーナストラック>
- 壊れかけのサイボーグ
- フレ!フレ!
DISC 3 ※初回限定盤のみ付属
- 蕾のテーマ
- 天白川を行く
- 追伸
- 花曇りの午後
- 安曇野にて
- 若葉
- ピーカンブギ
- 夕間暮れ
- ノウムの調べ
- Human relations
- ガレポンク
- フォノグラフ
- 10th
- 10th-typeII-
- ミッドナイト・グッドモーニン!!のテーマ
スキマスイッチ
大橋卓弥(Vo, G, Harmonica)、常田真太郎(Piano, Cho, Organ)のソングライター2人からなるユニット。2003年7月にシングル「view」でデビューして以降、「奏(かなで)」「全力少年」 などヒット曲を次々と生み出す。2013年7月にデビュー10周年を迎え、同年8月には初のオールタイムベストアルバム「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」を発表。2016年4月には「POPMAN'S WORLD」と対をなすアナザーベストアルバム「POPMAN'S ANOTHER WORLD」をリリースした。