音楽ナタリー Power Push - スキマスイッチ
充電期間に見出したテーマ「歴史か過去か」
ツアー後のスキマスイッチ
──ツアーのあとはすぐに制作に入ったんですか?
常田 いや、1カ月くらい間を空けたんですよ。“充電”といううれしい響きの期間がありまして(笑)。僕はいろいろと種を探してましたね。
──新しい音楽の種?
常田 そうですね。個人的には「スキマスイッチ」というアルバムに対して「歌詞の部分でもっとやれたんじゃないか」という気持ちがちょっとあって。「何をしたらもっと豊かになるんだろう?」と考えてみたんですけど、「最近、人としゃべってないな」って思ったんですよね。ここ数年、わりと同じ人とばかり会ってたというか……。それはそれで心が安らぐんですけど、クリエイティブには緊張感も大事ですから。だから休みの間も意識的にいろんなところに足を運んで、人と話すようにしてました。僕の場合、人と話していると歌詞や言葉に意識が向きやすいんですよね。あとスタジオの片付けもやろうと思ってたんですけど、そっちは途中で止まってしまいました(笑)。
大橋 僕は体調を崩してしまって、ほぼ休養してたんですよ。1カ月くらいあったから、海外に行って刺激を受けてこようと思ってたんだけど、それもキャンセルして。ツアー疲れだったのかな。
常田 体が休もうとしてたんだろうね。
「NARUTO」でハチロク
──新曲「LINE」は充電期間が終わったあとに制作したんですか?
常田 そうですね。ツアーが終わって2カ月後くらいかな?
──「LINE」はアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のオープニングテーマ。アルバム「スキマスイッチ」に収録されていたシングル曲「星のうつわ」(映画「THE LAST -NARUTO THE MOVIE-」主題歌)に続く「NARUTO」とのコラボレーションですね。
常田 2度もオファーしてもらえるのはうれしいですね。その分プレッシャーもありますけど。
大橋 今までとは違う角度からコラボしたいと思ってたんですよね。これまでの「NARUTO」の主題歌はアップテンポで疾走感のある曲が多かったから、それとは違うアプローチができたら面白いだろうなって。で、最初にハチロク(8分の6拍子)にしようと決めて。スキマスイッチとしてもハチロクの激しい曲は意外とやってなかったんですよ。
常田 まずハチロクのリズムを作って、それを回し続けて……。
大橋 そのリズムに合わせてギターを弾きながらメロディを歌って。その中で「今のはいいね」という部分を集めて、あとでまとめるというやり方ですね。最近はその手法がわりと多いかな。
充電期間を通じて培ったもの
──歌詞に関してもアニメの世界観を意識してました?
常田 はい。あとはさっき言った充電期間中にいろんな人たちと話をする中で出てきたワードも大事にしてました。その1つに「過去か歴史か」というテーマがあって。
──「通り過ぎていった時間の捉え方で“現在”が変わっていく 歴史とするか、過去とみなしていくか」というフレーズですね。
常田 はい。自分が通ってきた過去を見て、どう捉えるかっていう。同世代でがんばってる人と話をすると、自分の武勇伝を話さない人ばかりなんですよね。
──自分の過去を過大評価してないというか。
常田 すごい実績を残している人って、「まだまだ」と思っていることが多いんですよ。もう1つ印象的な話があって……それは自分より年上の方の話なんですけど、出向という形でまったく違う会社に配属されたんです。そこは伝統を重んじすぎて組織自体がダメになっているところだったみたいで。その人は起爆剤として投入されたんですが、外から来た人だから「この伝統はよくない」って決断できるし、よくない伝統を断ち切ることで業績を盛り返したっていう。それは僕らも同じだと思うんですよ。スキマスイッチはデビュー12年で、2人で組んでからは16年になるんですけど、その過去をどう捉えるかが大事じゃないかなって。ちょうどツアーが終わって、数年ぶりの充電期間の後という区切りの時期だったし、「NARUTO」ともリンクするテーマだと思ったんですよね。
──なるほど。そういえば2人とも武勇伝みたいな話をしないですね。
大橋 ないですからね、武勇伝(笑)。
──いつもめちゃくちゃ謙虚じゃないですか。紅白に出て、アリーナツアーも2回やって、ミュージシャンが目標にすることはそれなりに達成してるのに「俺らもがんばってきたな」みたいな感じが全然ないっていう。
大橋 だって恥ずかしいじゃないですか。そういうことも自分たちの成果だとは思いますけど……。
常田 もっともっとすごい先輩たちがたくさんいるからね。
大橋 「どう考えても自分たちが一番すごい」ってなったら武勇伝を話すかもしれないけど(笑)、そんなことは絶対にないですから。
常田 「60歳くらいになって、にじみ出るものがあればいいな」とは思いますけどね。
「なんかイヤだ」が研磨したクリエイティビティ
──「LINE」はサウンドメイクにおいても、スキマスイッチの新しい面が出ていると思いました。ドラムとギターの生音を生かしながらも、エレクトロ感がしっかり押し出されていて。シンセの音色も今までとは違いますよね?
大橋 そうですね。あとはシンセベースの使い方とか。
常田 アルペジエータを使ってるしね。
大橋 シンベ自体は何度か使ってるんですけどね。ただ、昔はかたくなにやらなかったことも自分たちのカラーとして出せるようになったというか、「なんでもやっていいじゃないか」っていう感じになってきてるんですよ。
──禁じ手が多かったですからね、スキマスイッチは。最初の頃はエレキギターも使わなかったし、いわゆる落ちサビ、四つ打ち、フェードアウトもやらないって決めていて。
大橋 そうですね(笑)。
常田 落ちサビは今回のカップリング曲(「ハナツ」)でやってますけどね(笑)。ただ、あまり落ちサビだってわからないように使ってますけど。
──それは「ほかのアーティストがやってることだったり、よくあるパターンはやりたくない」ってことだったんですか?
常田 最初の衝動としては「なんかイヤだ」というだけですね(笑)。「フェードアウトはなんかイヤだから、ちゃんとアウトロを作ろう」とか。自分たちで制限を作ると「じゃあどうする?」って考えるじゃないですか。そうやって自分たちの音楽の幅を広げるために「これはやらない」って決めてたんだなって思いますけどね、今になってみると。
大橋 うん。
常田 「LINE」で使ってるシンセもそうなんですよ。最初の頃は「使い方がわからない」っていうのもあったんだけど(笑)、音色を作ることにハマったら、アレンジがおろそかになるような気がして。まずはアレンジや曲作りをしっかりやって、そのうえで1つひとつ手を伸ばしていけばいいんじゃないかなって。
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初回限定盤 / 通常盤CD収録曲
- LINE
- ハナツ
- スキマスイッチのミッドナイト・グッドモーニン!! -2-
- LINE (Backing Track)
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初回限定盤DVD収録内容
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- スキマスイッチのミッドナイト・グッドモーニン!! -2-
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スキマスイッチ
大橋卓弥、常田真太郎のソングライター2人からなるユニット。2003年7月にシングル「view」でデビューして以降、「奏(かなで)」「全力少年」 などヒット曲を次々と生み出す。2013年7月9日にデビュー満10周年を迎え、同年8月には初のオールタイムベストアルバム「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」を発表。2014年に「Ah Yeah!!」「パラボラヴァ」「星のうつわ」とシングルを立て続けに発表し、12月にセルフタイトルを冠した約3年ぶりのオリジナルアルバム「スキマスイッチ」をリリースした。2015年はアルバムを携えた全国ツアーを実施し、その追加公演となる東京・日本武道館公演の模様を収録したライブアルバムを2015年10月、Blu-ray / DVDを同年11月に発表。同じく11月にはニューシングル「LINE」をリリースした。