音楽ナタリー PowerPush - スキマスイッチ
デビュー10年でたどり着いたセルフタイトル作の真意
スキマスイッチが5thアルバム「musium」以来、約3年ぶりとなるオリジナルアルバムを完成させた。その名も「スキマスイッチ」。昨年、メジャーデビュー10周年を迎え、良質なJ-POPの継承者としての存在感を改めて示した彼ら。6枚目のアルバムにしてセルフタイトルが冠された本作は、彼らの新たな代表作と呼ぶべき内容に仕上がっている。今回のインタビューでは、2人が「インディーズのときと変わらないテンションだった」と振り返るアルバムの制作プロセスと、現在の2人の関係性などについて語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類
アルバム制作に邁進した2014年
──精力的なプロモーション活動が続いていますが、インタビューなどを通して、アルバムの全体像も明確になってきたんじゃないですか?
大橋卓弥(Vo, G) アルバムに対する印象は、できあがった瞬間と変わってないかもしれないですね。しゃべっている中で新たに気付くこともそんなにないので、「こういうアルバムです」って説明するばっかりです(笑)。
常田真太郎(Key, Cho) 「星のうつわ」についてあんまりしゃべってないなってことに気付きましたけどね、この前。
──では、そのあたりもこのインタビューで補っていきたいと思います。まずは11月19日に「Ah Yeah!!」に続くニューシングル「パラボラヴァ」がリリースされました。すごく開放的なポップチューンに仕上がっていますが、どんなテーマで制作されたんですか?
大橋 もともとはアルバムの中の1曲として作っていたんですよ。シンタくんと2人で何回か曲出しをした中で出てきた曲で。それを仕上げてレコーディングまでしたところで、ヨコハマタイヤさんから「使いたい」という話をいただいたので(「パラボラヴァ」はヨコハマタイヤ「アイスガード ファイブ」CMソング)、シングルにしたという流れですね。
──まずシングルを作ってからアルバムの制作に入ったのではなくて、最初からアルバムを見据えた曲作りだったと。
大橋 そうですね。今年の頭からとにかく「オリジナルアルバムを作りたい」という話をしていたので。オリジナルアルバムに入っていないシングルが4曲(「ラストシーン」「ユリーカ」「スカーレット」「Hello Especially」)あったんですけど、そっちはベスト(「POPMAN'S WORLD ~All Time Best 2003‐2013」)に収録したので、「じゃあ、次のアルバムは全部新曲でいこう」って。
スキマ史上最もラブラブな「パラボラヴァ」
──「パラボラヴァ」はスキマスイッチのポップサイドが強調されているし、ものすごくラブリーですよね。
大橋 スキマ史上最もラブラブでしょうね(笑)。
常田 “ハイテンションな曲の中では”ということですね。例えば「願い言」みたいな、“静かに愛でる”っていう曲は今までにもあったので。「パラボラヴァ」は「うひょー!」って感じですから(笑)。
大橋 確かにテンション高いよね。頭悪そう(笑)。
常田 ハハハハハ(笑)。
大橋 頭が悪そうな曲を作ろうと思ったわけではないんですけどね。ここまで底抜けに「あの子が好きだ!」っていうストレートなラブソングを作ったことはなかったので。
──そういうタイプの曲って、普通はむしろ初期の頃に作って、のちに作らなくなるような気もするんですけどね。
大橋 そうですね。「僕らがやらなくてもいいかな」っていうのもあったし………。
常田 こういう歌詞に見合うような曲もなかったですからね。
大橋 今だったらこういう曲をやってもいいんじゃないかって思ったんですよ。ちょっとヒネくれた感覚を10年間(曲として)パッケージしてきたからこそ、今やると逆に新鮮に感じるんじゃないかなって。「ラブラブで一直線な曲だけど、もしかしたら何かメッセージがあるのかな?」という感じで捉えてくれる人もいるだろうし。
──「とっくに作ってていいはずなのに、実は作ったことがない」というタイプの曲、まだまだありそうですね。
大橋 あるでしょうね(笑)。単純にヒネくれてるっていうのもあるけど、“らしさ”をどうやって出せばいいかとか、“自分たちがどういう音楽をやれば面白いか”ということを考えてきたので。
“スキマにぶつけたい”歌詞
──ラブラブな歌詞を歌うのって、恥ずかしさはなかったですか?
大橋 ありましたね。シンタくんから歌詞が上がってきたときも笑っちゃったし、若干、引く感じもあって………。
常田 スタッフもそうでした(笑)。
大橋 しかも、ブラッシュアップする過程でどんどんラブラブ度を足してたからね(笑)。でも「なんだこの歌詞?」とは思わないんですよ。シンタくんがこういう歌詞を書いたということは、何かしらの意図がある気がするというか。仮に自分の経験を赤裸々に書いたとしても、「これを歌うことでなんらかのメッセージが入ってるんだろうな」と思えるんですよね。特にシンタくんが叩き台を作った歌詞には、「これはナイね」っていうものは全然ない。僕はまだまだ……僕の歌詞を書くレベルとか技術って、10年前と変わってないですから。
常田 そんなことねえよ(笑)。
大橋 でも、根底は変わってないですからね。シンタくんは明らかに変わってきてるんですよ、歌詞の書き方が。職人っぽい書き方もできるし、どの歌詞にもちゃんと芯があるというか。
──確かに作風は広がってますよね。
常田 自分で歌わないからでしょうね、きっと。卓弥には卓弥にしか書けない歌詞があるし、歌う人の歌詞には敵わないと思ってるんですよ。だから「それ以外の歌詞を書いてみたい」って思うんじゃないかなって。いろんなアーティストから(歌詞の)依頼を受けて、その中でスタイルを見つけていったところもあるだろうし……。ただ、面白いネタを見つけたり、「これを歌詞にしたい」と思いついたときは、スキマにぶつけたいんですよね。そういう母体があってよかったと思うし、まずは大橋卓弥というボーカリストに歌ってほしいので。
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- ニューアルバム「スキマスイッチ」 / 2014年12月3日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [Blu-spec CD2+DVD] / 3996円 / AUCL-30028~9
- 通常盤 [CD] / 3186円 / AUCL-172
CD収録曲
- ゲノム
- パラボラヴァ
- 僕と傘と日曜日
- life×life×life
- Ah Yeah!!
- 夏のコスモナウト(album ver.)
- 蝶々ノコナ
- 思い出クロール
- 星のうつわ(album ver.)
- SF
初回限定盤DVD収録内容
- Ah Yeah!!(Video Clip)
- パラボラヴァ(Video Clip)
- 星のうつわ(Video Clip)
- Special Interview
- おまけ
- ニューシングル「星のうつわ」 / 2014年12月3日発売 / アリオラジャパン
- 「星のうつわ」初回限定盤
- 初回限定盤 [Blu-spec CD+DVD] / 1944円 / AUCL-30026~7
- アニメ盤 [CD] / 1404円 / AUCL-170
- 通常盤 [CD] / 1296円 / AUCL-171
CD収録曲(共通仕様)
- 星のうつわ
- 快楽のソファー(仮)(2014 ver.)
- ミッドナイト・グッドモーニン!!のテーマ(instrumental)
- スキマスイッチのミッドナイト・グッドモーニン!!
- 星のうつわ(backing track)
初回限定盤DVD収録内容
- スキマスイッチのミッドナイト・グッドモーニン!!THE MOVIE
スキマスイッチ
大橋卓弥、常田真太郎のソングライター2人からなるユニット。2003年7月にシングル「view」でデビューして以降、「奏(かなで)」「全力少年」 などヒット曲を次々と生み出す。2013年7月9日にデビュー満10周年を迎え、同年8月には初のオールタイムベストアルバム「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」を発表した。2014年には「Ah Yeah!!」「パラボラヴァ」「星のうつわ」とシングルを立て続けに発表し、12月にはセルフタイトルを冠した約3年ぶりのオリジナルアルバム「スキマスイッチ」をリリース。2015年1月からは全国28カ所32公演の全国ツアーも決定している。