音楽ナタリー PowerPush - sukekiyo

京が体現する“予定調和外”

DIR EN GREYのボーカリスト京を中心としたバンドsukekiyoが、2014年4月にリリースした1stフルアルバム「IMMORTALIS」に続く作品となる1stミニアルバム「VITIUM」を発表。昨年行われた初のツアーや海外公演などを経て、「sukekiyoがどういうバンドなのかが見えてきて、さらに自由度が上がった」という状況の中で制作された本作には、ゴシック、ヘヴィロック、フリージャズ、アンビエントなどのテイストを自由に融合させながら、ジャンルという概念を無効化させる自由なサウンドが提示されている。さらに本作の初回限定盤の特典CDではToshl(X JAPAN)、俳優の三上博史、レンホルダー、ウェス・ボーランド(Limp Bizkit)とのコラボレーションも実現するなど新たな挑戦も見せている。

「IMMORTALIS」リリース時に続き、ナタリーではバンドの首謀者である京にインタビュー。予定調和を徹底的に嫌い、刺激的な作品を作り続ける彼の現在の心境に迫った。

取材・文 / 森朋之

sukekiyoは影響されない

──まずは前作「IMMORTALIS」以降の動きについて振り返ってみたいと思います。アルバムリリース後には国内外で精力的にツアーを行いました。僕も下北沢(2014年5月に行われた東京・下北沢GARDEN公演)でライブを観させてもらったのですが、驚くほどに異質なステージで。

下北沢ってsukekiyoが初めてやったライブですよね。ありましたね、そう言えば。

京(Vo)

──京さんにとっては昔のことですか?

はい。

──観客は“喪服”がドレスコード。ライブ中もまったく動かず、棒立ちで観ているという異様な空間で。

曲の世界観、バンドの持っている雰囲気にはそういうライブが合うかなと思って、最初にそういうライブを1回やってみたかったんです。その後は「別に動いてもいいよ」とは言ってたんですけど誰も動かないままで(笑)。フェスに出たときも、最初は声援とかもあったんですけど、1曲終わると誰も何も言わなくなったんですよ。ウチらのファンじゃなくても、自然とそういう空気になるんでしょうね。

──通常のライブはお客さんのリアクションによって手応えを得ると思うんですよ。sukekiyoの場合、そういうこともないですよね。

うん。確かに普通のライブはファンと一緒に作っていったり、その反応によって多少は影響されるようなこともあると思うんです。でも今のsukekiyoのスタイルだとそういうことはまったくないですから。ホールのライブだと、めっちゃ寝てるヤツとかいるんですよ。それもまったく気にならないし、自分でもそりゃ寝るよなって思うので。

──観客を含めたパフォーマンスアートという側面もあるのかも。

みんな黙ってる感じも世界観に含まれてますからね。そこはあえて壊さなくてもいいと思うし……。バカみたいに騒がなくてもいいと思うんですよね、ライブは。こっちとしては「普通に聴いてください」って思ってるんで。

──ステージを重ねる中で変化した曲はありましたか?

うん、そういう曲もありましたよ。ライブのたびに曲の完成度は増してきたと思うし。メンバー自身、初めは手探りでやってたと思うんですよ。実際にやってみるまではどういう空気になるのかわからなかったので。でも、今はみんながイメージをつかんでるし、そこはsukekiyoを始めた頃とはけっこう違いますね。自由度も増してるんじゃないかな。

──インタープレイも豊富だし、恐らくはその場の即興性も反映されていて。ジャンルでいうとロックよりもジャズに近いのかも。

そこもあまり意識してないですけどね。音楽のジャンルもそうですけど、舞台なのか映画なのかもよくわからない感じにしていきたいので。今も「○○っぽい」ってジャンルを分けるのは難しいと思うし。

──そういう前衛的な音楽がオリコンウィークリーチャート5位になったのもすごいですけどね(※1stフルアルバム「IMMORTALIS」は発売初週にオリコンウィークリーチャート5位にランクイン)。

まあ、一発目ですからね。1枚目のアルバムは「sukekiyoってどんなもんかな」ってみんなサービスで買ってくれたと思うんですよ。2枚目からはガクンとセールスが下がるんじゃないですか。

──そんなネガティブ発言を……。

基本的にネガティブで、いいふうに考えられないんで。ディルのファンは激しい曲が好きな人が多いだろうから、アルバムを聴いて「あれ? なんか違うな」っていう人もいただろうし。

sukekiyoはバンド

──1stミニアルバム「VITIUM」について聞かせてください。前作を作り終えたタイミングでは、次の作品に対してどんなビジョンがあったんですか?

匠(G, Piano)

そこまで具体的なものはなかったんですが、当初はシングルの予定だったんですよ。ツアーが決まってたから、その前にリリースしたいなと思って。ただsukekiyoって、1曲で「こんなバンドです」って表現するのが難しくて。「シングル2枚にする?」という意見もあったんですけど、そうなると結局6曲くらいはいるじゃないですか。だったらミニアルバムのほうがいいなって思ったんですよね。そうすれば1曲に絞れなくなるし、全体として広がりを出せるんじゃないかって。

──今回の収録曲は1stアルバム完成以降に制作された曲なんですか?

アルバムに入らなかった曲が10曲以上あったから、それを煮詰めようと思ってたんですね、最初は。でもメンバーから新曲がポロポロと出てきて、全部に手を付けながら「どれにしようかな」って考えていたら、たまたま全部新曲になって。

──制作も活性化されてきた、と。

うん、そうですね。作り方自体は何も変わってないんですけど、こちらからはメンバーに何も言わなくなりました。前回以上に「好きにしてくれていいよ」っていう。それもさっきの話と同じで「sukekiyoとはどういうものか?」っていうのがわかってきたからだと思うんですね。そこが見えてきたから、自由にやっても大きく枠から外れることもないだろうな、と。やっぱりバンドだから、みんなの色があってこそだと思うし。

──京さんのソロプロジェクトではなく、あくまでもバンドなんですね。

もちろん。最初はわかりやすいように、ソロプロジェクトって言ってたんですけど。もともとsukekiyoはバンドとして始めたので。

──楽曲のキャラクターも強くなってますよね。もちろんジャンルではくくれないんだけど、例えば「foster mother」はギターの抽象的なアンサンブルが軸になっていたり、「雨上がりの優詩」は抒情的なメロディラインが浮かび上がってきたり。1曲1曲、しっかりサウンドの焦点が定まっている印象がありました。

それも特に意識していたわけではなくて。「foster mother」は最初のデモのイメージから変わってないんですよ。一方で「雨上がりの優詩」はもっと民族音楽っぽい曲だったんですけど、メンバーが音を加えていく中で少しずつ変わっていって。確かに1曲ごとの個性は強くなってると思いますね。

1stミニアルバム「VITIUM」 / 2015年2月4日発売 / FIREWALL DIV.
初回限定盤 [CD2枚組] 3240円 / SFCD-0150~1
通常盤 [CD] 2700円 / SFCD-0152
京公式オンラインストア限定販売
「VITIUM」
豪華盤 [Blu-spec CD2+CD+Blu-ray+Tシャツ+ブックレット] 10000円 / PZSK-007~9
初回限定盤 [Blu-spec CD2+CD+Blu-ray+ブックレット] 7500円 / PZSK-007~9
CD収録曲
  1. leather field
  2. dunes
  3. dot
  4. foster mother
  5. 雨上がりの優詩
  6. maniera
  7. 白露
  8. celeste
  9. focus
初回限定盤および京公式オンラインストア限定豪華盤 / 初回限定盤特典CD収録内容
Collaboration Track
  1. 雨上がりの優詩 Collaboration with Toshl
  2. focus Collaboration with 三上博史
  3. elisabeth addict Remixed by Renholder
  4. latour Collaboration with Wes Borland
京公式オンラインストア限定豪華盤 / 初回限定盤Blu-ray収録内容
  • Music Video
    • 雨上がりの優詩
    • focus
  • LIVE FOOTAGE(sukekiyo 二〇一四年公演「別れを惜しむフリは貴方の為」 2014年5月6日 京都劇場)
    1. aftermath
    2. hidden one
    3. scars like velvet
    4. zephyr
    5. mama
    6. in all weathers
  • DOCUMENTARY FOOTAGE
sukekiyo(スケキヨ)

DIR EN GREYのボーカリスト・京のソロプロジェクトとして2013年10月より始動した。2013年12月29日に行われたSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)のツアー「SUGIZO TOUR 2013 THRIVE TO REALIZE」のSHIBUYA-AX公演で初ライブを行い、年末の「COUNTDOWN JAPAN 13/14」に出演する。2014年元日にメンバーを含むプロジェクトの全貌を明らかにし、初音源「aftermath」のビデオクリップを配信。4月に1stアルバム「IMMORTALIS」を発表し、その後初ツアーを開催する。2015年2月に1stミニアルバム「VITIUM」をリリース。