ナタリー PowerPush - 菅原紗由理
20代最初のシングル「『好き』という言葉」
バラードだけでなく幅広い歌を歌えるアーティストになりたい
──ということで努力の末に夢が現実になったわけですが、実際にデビューしてからはいかがでしたか?
思っていた以上に難しいなあって思いました。おかげで歌い手としての責任感は、デビュー前とは比べものにならないぐらい強くなりました。そう、なかでもライブは一番苦労しました。最初の頃は感覚がつかめなくって、そのぶんあまり緊張もしなかったんですけど、ライブをやるたびにいろんなことが見えるようになって、それにつれて緊張感も増してきて。6月25日に2回目のワンマンライブをやったんですけど、いままでは本番前にごはん食べたりしながら「もうちょっとで本番ですねえ」みたいな感じで呑気に構えてる自分がいたりしたんですけど、最近は本番前に食べられなくなってしまって。ライブを重ねることで、逆に怖さも覚えてきたのかも。でもその反面で、やっぱり音楽は楽しいなって今まで以上に思うようにもなって。
──作詞もデビューしてから始めたんですよね。
今まで書いたことがないに等しかったんですけど、詞を書くようになってからは言葉の意味の深さをよく考えるようになって、こういう言葉がいいなって思いついたら自然にメモってる自分がいたり。最近は作曲をしてみたいっていう気持ちも沸いてきてますね。歌を歌いたいっていう出発点から詞を書きたい、曲を作ってみたいっていう気持ちが芽生えてきて……デビューから1年半しか経ってないですけど、意識の面ではかなり変化していってますね。
──いろんな扉が開かれていってる、といった感覚ですかね。1stアルバム「First Story」でもいろんな曲にチャレンジしてるし、この段階で自分のカラーをいい意味で決めつけていない印象を受けました。
それ以前のシングルでは、バラードのようなゆったりとした曲が多かったんですけど、自分自身がどういうシンガーになりたいかって考えたら、バラードだけしか歌いませんとかではなく、幅広い歌を歌えるアーティストになりたいと思っているので、「First Story」ではいろんな自分が出せて満足してます。いろいろなタイプの曲を歌ってみて、自分はこういう部分がちょっと不得意なんだなってわかった部分もありますけど(笑)。とにかく自分自身でもいろいろな発見があったアルバムです。
──「First Story」はまさに“10代のメモリアル”といった感じですね。
そうですね。そう考えると、これからは20歳らしいテーマの詞を書いたり、曲を歌っていかなきゃですね。
一喜一憂する女性の気持ちをうまく表せた
──表現する際に、20歳という年齢を意識することはありますか?
そうですね。徐々に意識はしてますね。5月に出した「素直になれなくて」は10代最後のシングルだったんですけど、ジャケットはちょっとオトナっぽい感じで撮ってもらったんです。それまでは黒や白のワンピースで、顔のアップやバストアップぐらいのカットが多かったんですけど、そのときはアートディレクションをやってくださった信藤(三雄)さんが「身長を活かしていってもいいかもね」っていうことで、全身カットを撮ってみたんですよ。自分の中では身長の高さはコンプレックスだったんですけど、信藤さんにそう言われてから気にならなくなったんですよね。
──背が高いとステージ映えしますよね。
ありがとうございます。男性からも女性からもかっこいいって言われるような自分を出していけたらなと思うんですけどね、まだまだ(笑)。
──それはキャリアを積むことによって自然に磨かれていくところだったりもしますよね。それこそ自分で詞を書いたり新しい曲を歌うことで、表現のバリエーションも広がってくるでしょうし。今回の「『好き』という言葉」でもそれを実感できる部分はあったんじゃないですか?
ラブソングはこれまでにも歌ってきてるんですけども、今回の曲はすごく優しいラブソング……切ないけれども淡いピンクというか夕焼けのオレンジというか、優しさとか温かみがある曲だと思ってるんです。この曲の主人公って、好きな相手に自分の気持ちを伝えたいけど、伝えてしまったら今までの良い関係が崩れてしまうんじゃないかって、なかなか言い出せないでいるんですね。「素直になれなくて」の主人公は素直じゃない子だったんです。それに対して、「『好き』という言葉」の主人公は好きな相手や自分に対してすごく素直……なんですけど、言い出す勇気がないっていう。実は私もそういう恋愛経験をしたことがあって、重ねて考えられる部分がすごくあるんですよね。
──なるほど。
最近思うのが、自分が通っている短大の友達とかに訊くと、みんながみんなじゃないんですけど、曖昧な関係のまま付き合ってる男女って結構いるんですよね。「好きだ」とか「付き合おう」とか、決定的な言葉を口にしないまま、いつのまにか付き合ってたりとかっていう。それで悩んでる人もいたりしたので、そういう人たちにとってはすごくわかってもらえる曲だと思うし、言葉で伝えることの大切さや深さを改めて感じてもらえる曲になったんじゃないかなって。表現的な部分でも、一喜一憂する女性の気持ちをうまく表せたなあと思うし、この曲はいつまでも自分自身の曲としてライブで歌い続けられる曲になるんじゃないかなって思います。
──10代のときには歌えなかった曲だとも言えますよね。
そうですね。ちょっと前に久保田利伸さんがテレビで「Missing」を歌ってるのを観て、自分もそうやって何十年も歌い続けられる曲に出会えたらいいなあって思ったんですけど、そういう意味で「『好き』という言葉」は、これから自分が音楽生活を続けていく上で大切な1曲になったと思います。
──最後に。10月には初のライブツアーが控えてますけど、その抱負を聞かせてください。
初めてのワンマンも緊張したんですけど、ツアーもすごく……「やべえ、がんばんなきゃ!」っていう気持ちでいっぱいです(笑)。ツアーはずっと前からやりたかったことなので、その夢が叶ったっていう喜びと同時にすごく大きなプレッシャーも感じてます。はじめましての方もいるかと思うんですけど、今まで観にきてくれた人たちも来てくれるでしょうし、着実に成長している自分を観てもらえたらなあって思います。はじめましての方には、また観に行きたいなって思ってもらえるようなライブにしたいです。
菅原紗由理(すがわらさゆり)
1990年生まれ、秋田県出身の女性シンガー。2008年1月にフォーライフミュージックの「30DAYSオーディション」に応募し、初の合格者としてデビューのチャンスをつかむ。翌2009年4月にミニアルバム「キミに贈る歌」でメジャーデビュー。新人離れした歌唱力と、女性らしいたおやかな歌声が高く評価される。同年12月には人気RPG「FINAL FANTASY XIII」のテーマソング「君がいるから」および挿入歌「Eternal Love」を担当。2010年に放送された瑛太&上野樹里主演のフジテレビ系ドラマ「素直になれなくて」ではシングル「素直になれなくて」が挿入歌に抜擢される。そして新曲「『好き』という言葉」はテレビ朝日系木曜ミステリー「科捜研の女」の主題歌に起用され、2作連続でドラマを彩る。