ナタリー PowerPush - 菅原紗由理

20代最初のシングル「『好き』という言葉」

2009年4月「キミに贈る歌」でメジャーデビュー。以降、等身大の感情を柔らかな旋律に乗せ、透明感と誠実さ溢れる歌声を届けてきたシンガー、菅原紗由理。

今年6月に20歳を迎え、自らの足もとをしっかりと確かめながらオトナのシンガーへと着実にステップアップしている彼女が、20代最初のシングル「『好き』という言葉」をリリース。ここから菅原紗由理のニューストーリーが幕を開ける。

取材・文/久保田泰平

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周囲の反対を押し切ってオーディションに応募し続ける日々

──6月に20歳になったということですが、10代最後の1年はものすごく濃厚な日々だったんじゃないでしょうか。

あっという間の1年半でしたね。物心ついてから、デビューしたい、音楽の道に進みたいっていう夢がずっとあったんですけど、実際にデビューしてからは、ライブだったりレコーディングだったり……1年ちょっとでフルアルバムまで出せるなんて思ってもいなかったですし、ホント、激動の時期でした。

──ナタリー初登場ということで、音楽の道に進もうと思ったきっかけから改めて訊いていきたいと思うんですが。

菅原紗由理

きっかけは……父も母も音楽がすごく好きなので、家ではいつも音楽がかかってましたし、父は地元でアマチュアバンドのボーカルをやっていたので、小さい頃は父が弾くギターにあわせて歌ったりとかして、自然と歌が好きになってた感じなんですよね。それで、両親や祖父母、親戚の前で歌ったりすると「うまいごとぉー」とか言われて。そうやって小さい頃からおだてられてたのも大きかったんじゃないですかね(笑)。

──それで、中1の頃からオーディションに応募しはじめたそうですね。

そうなんですよ。でも、オーディションを受けるにあたって父からは「受けてもいいけど、東京には行かせないよ」ってずっと言われてたんですね。東京に行ったら自分で働いて、家も自分で借りて、それからいろいろ……すごくたいへんなんだぞって言われ続けて。だから、オーディションでいいところまで行っても、父親に止められてあきらめなくちゃいけなかったことも何度かあって。そんな感じで親には反対されていたので思うようにことが進まず、中3の頃に歌手になることを一度あきらめたんです。

──フツーの女子高生になろうと。

そうですね(笑)。中学校の部活ではバスケットボールをやっていて、高校にはスポーツ推薦で入学したんですよ。なので、しばらくはバスケットをがんばろう、卒業したら地元の秋田で仕事をしようかなって考えてたんですけど、やっぱりまだあきらめきれていない自分がいて。そうやって悩んでた時期に、たまたまテレビでDREAMS COME TRUEのコンサートが放送されてて、私、吉田美和さんが歌っている姿を見たときに思わず涙しちゃったんです。自分はやっぱり歌を歌いたいんだな、ステージに立ちたいんだなって、そこですごく実感したんですね。同じ時期に、友達に誘われて安室奈美恵さんのライブを観に行ったりとか、そういう出来事にも背中を押されて、結局、スポーツ推薦で入ったのに部活を辞めることにしたんです。

──それは思い切りましたね。

顧問の先生からは「何考えてるんだ?」みたいなことを言われましたけど(笑)。それからまた、オーディションに応募し続ける日々が始まって、でも東京まで行かなきゃいけないこともあったりして、その費用を稼ぐために、高校はバイト禁止だったけど、そば屋さんの厨房で働いてみたりして。それで高2のときにフォーライフミュージックの「30DAYSオーディション」を受けるんです。

──デビューのきっかけになったオーディションですね。

はい。あのときは不思議な感じで、これはイケるんじゃないかな?っていうヘンな自信があったんですよ(笑)。根拠はなかったんですけど、なんか突っ走ってる自分がいて。そしたら、受かったんです。でもあの時点ではデビューできるかどうかわからないっていう話だったので、オーディションに受かったうれしさもありつつ、果たしてこれからどうなるんだろうっていう不安もありました。

上京後、ビルだらけの東京に毎日興奮

──ご両親はどうやって説得したんですか?

これもまた不思議なもので「30DAYSオーディション」に受かってから、両親どちらも応援してくれるようになって。何がきっかけだったんでしょうね。

──さすがに根負けしたとか?

どうなんでしょう。中学の頃の話をすると「あのときはごめんな」みたいなこと言ったりして、東京でのレコーディングを終えて帰ってくるたびに「どうだった? どうだった?」って興味深そうに訊いてきたり、ライブも毎回のように観にきているので、今は一番のファンとして私を応援してくれてます。

──地元に住んでいた頃は、日々どうやって自分の歌を磨いていたんですか?

全部独学だったんですよね。とにかく、めちゃくちゃ音楽を聴いて歌って、よく真似をしたりしてました。あとは父の行きつけのバーに行ってお客さんに聴いてもらうとか。オーディションに受かったあと、地元にもボイトレ教室があるっていうことを知って、デビューするために上京するまではそこでレッスンを受けてましたけど。

──上京したのは?

高校を卒業したあと、去年の3月です。田んぼや畑ばっかりのところで育ったので、ビルだらけの東京にやってきたばかりの頃は、毎日興奮してました(笑)。でもさすがに空気は悪いと思いました。秋田の空気は深呼吸したくなるぐらい美味しいですから。

ニューシングル「『好き』という言葉」 / 2010年9月1日発売 / 1000円(税込) / FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT / FLCF-7177

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CD収録曲
  1. 『好き』という言葉
  2. I Wanna Cry...
菅原紗由理(すがわらさゆり)

1990年生まれ、秋田県出身の女性シンガー。2008年1月にフォーライフミュージックの「30DAYSオーディション」に応募し、初の合格者としてデビューのチャンスをつかむ。翌2009年4月にミニアルバム「キミに贈る歌」でメジャーデビュー。新人離れした歌唱力と、女性らしいたおやかな歌声が高く評価される。同年12月には人気RPG「FINAL FANTASY XIII」のテーマソング「君がいるから」および挿入歌「Eternal Love」を担当。2010年に放送された瑛太&上野樹里主演のフジテレビ系ドラマ「素直になれなくて」ではシングル「素直になれなくて」が挿入歌に抜擢される。そして新曲「『好き』という言葉」はテレビ朝日系木曜ミステリー「科捜研の女」の主題歌に起用され、2作連続でドラマを彩る。