音楽ナタリー PowerPush - Sugar's Campaign

普遍的ポップス職人の狙い

作品をエクステンドするためのコミック

──「FRIENDS」の初回限定盤には、色さん、川西ノブヒロさん、水野しずさん、黒崎聡之さん、西尾雄太さんの5名によるオリジナルコミックが付属しますが、この5名を選んだ理由は?

Seiho なるべく僕らのことを好きでいてくれて、僕らも好きな人。

Avec Avec TwitterでSugar's Campaignのことをつぶやいてくれてたり。相思相愛的な人らを集めたつもりですね。

Seiho エゴサーチbotやもんな? 俺ら(笑)。

色「フレンズ」

Avec Avec 暇があったら「シュガーズ」「Sugar's Campaign」「シュガキャン」「Seiho」「Avec Avec」、いろんな名前で検索してますから(笑)。

Seiho 色さんは最初pixivで見つけたんですけど、いろんなマンガ家さんの手癖をパロった作品を作ってはったんですよ。ほかのマンガ家さんにはない、50%ギャグマンガ、50%少女マンガみたいな80'sニューウェイブっぽい感覚が僕は好きで。

川西ノブヒロ「I wanna be a lovely girl」

Avec Avec 僕らと音楽の趣味もけっこう合って、岡村靖幸や大滝詠一が好きやったりっていうのも大きくて。川西さんは毎日Twitterで1枚イラスト上げてて、「ネトカノ」を出したときそのイラスト描いてくれたりしていて。みんなそういうつながりです。

──このアルバムにはコミックが必要だった?

Seiho 必要やったというよりは、初回盤に何を付けるかって話が前提としてあって。僕たちはやっぱり作品をエクステンドするものじゃないと嫌なんですよね。例えばそこにステッカーが付いてきても、それだけじゃ物語がエクステンドされないというか。例えば「ネトカノ」をCDで出したときはレターセットを付けたんです。ネトカノっていうバーチャルな響きを持つ言葉に対して、フィジカルなレターセットが存在してるっていうところの含みが面白いというか。

Avec Avec エクステンドな感じやな。物語の続きがあるんじゃないかみたいな。

Seiho その物語がもしかしたら今まで自分が思ってたのとシュガーズは違う意図で作ってたんかもみたいな錯覚というか。それで今回のアルバムにもやっぱりエクステンドできるものを付けたいっていう要望を言って、いろいろアイデアを出した中でコミックが一番しっくりきたんです。

黒崎聡之「VACANTLY」

Avec Avec あと、やっぱり紙っていうのが大事やなっていうのがあって。

Seiho 俺ら「紙ヤバいんちゃうか?」って盛り上がったもんな?(笑)

Avec Avec 紙って、あるだけで思い出すじゃないですか。データはあっても思い出さないんですよね。

Seiho 記憶の装置として、やっぱりよくできてて。

Avec Avec ぽっと置いてあったら「読まなあかん!」みたいな。それが大きいと思ってて。

Seiho レコードのジャケットも一緒で、聴かなくてもいいんですよね。目の前にあると頭の中で再生されるから。あるってことが大事なんですよね。だから紙で作りたかったんよな。

Avec Avec モノとして一番ガンッとくるっていうか。残してる感があるじゃないですか。

──デジカメのデータより色褪せた写真のほうが、あとで見返したときぐっときますよね。

Avec Avec 僕らはそのほうが興奮するから。残しときたいなっていう。

水野しず「人間は暗い箱に脳を閉じ込めて生きている」

Seiho あと、このコミックは全編セリフなしにしてもらったんですけど、水野しずちゃんのは全ページに文字入っててビックリした! 「バグや!」って(笑)。

Avec Avec 本人は「これセリフじゃないです」って言ってましたけど(笑)。

Seiho しっかりフキダシになってもうてるからね(笑)。

Avec Avec まあでも基本はセリフなしっていうコンセプトで、サイレントマンガ的な。

Seiho で、さっき言ったみたいな、シュガーズの曲を聴いたときに1つの意味合いがあるんじゃなくて、聴いてもらう人によって解釈が違う……っていうとめっちゃくちゃチープな言葉になるんですけど、でも含みがあるっていうところが。

Avec Avec 大事やな。

西尾雄太「マジック」

Seiho 聴くたびに「えっ、これってこうともとれるし、こうともとれなくない?」って状態(笑)。

Avec Avec そこが男と女の中間的な意味合いにもつながってくるんですけど。

Seiho だからコミックもそういう意味合いをすごい重要視していて。それだけ伝えて、あとはもう完全に自由に描いてもらいました。

フィジカルでリリースするということ

──最後に、音楽がデータ中心に移行しつつある中、ネットで発表していたところからフィジカルでのリリース、しかもメジャーからというのは非常に面白い動きだと思うんです。今あえてCDを出すことについての意見を伺えますか?

Seiho これ、めっちゃ難しい質問やな。僕がやってるレーベル(Day Tripper Records)も絶対フィジカルでしか出さないってコンセプトなんですけど、結局3年やってきて、新人を出すたびにフィジカルだけじゃ広がらん世界があるんやなってことを感じたんです。同時に海外からの注文がすごい多くなって、いちいち発送してたら大変やしデジタルにせな広がらないっていう限界もあるし。「モノが大事」って言うのはめっちゃくちゃ簡単だけど、そういう話じゃないんです。結局、僕らは大手資本に逆らわれへんというだけの話なんです(笑)。

Avec Avec

Avec Avec 別にデータでもいいんです。本心で言えば。

Seiho 僕らはお客さんに伝わればなんでもいいんです。ただ、音楽業界というものが存在して、そこに乗っかるマーケットが存在してるから僕らも乗っからざるを得ないってだけの話で。だからCDがなくなったらなくなったで僕らは別に困らない。たとえ電子楽器やパソコンがなくなっても、俺らはたぶん曲作るやろうし。

Avec Avec 体ひとつあれば曲は作れるし、演奏もできるし。

Seiho CDを出すことのメリットも所有欲とかそういう話じゃなく、単純にツールとして選んでるだけで。それこそさっき言ったYouTubeやSoundCloudの話もそうやし。それだけでしかないです、僕らは。僕らは別になんでもいいです。日本のマーケットの中ではCDが一番広がりやすいっていうことが一番強いです。

Avec Avec システムができてしまってるぶん、そこに乗っかりやすいから。

──ということは、このCDはぜひとも広く聴いてほしいところですよね。

Seiho 僕ら今10、20代のファンの人が多いんですけど、もうちょっと上の40、50代に一番聴いてほしいんですよね。CDで出したのも、YouTubeで発表してもその世代の人たちに届かへんっていう限界を感じたからだし。

Avec Avec だから地方に住んでるおっちゃんとかに、このCDが届くといいなあって。

Seiho おっちゃんが買ってきて、逆に息子が「えっ、シュガーズ知ってんねや?」みたいな。

Avec Avec で、家族で聴いてほしい。僕らちっちゃい子とおじいちゃんに聴いてほしいなって思ってるんですよ。

──「妖怪ウォッチ」的な盛り上がりを望んでると。

Seiho そうそう(笑)。だから僕らがカーステレオで聴いてたみたいに、親がこれを聴いて子供が反応する、みたいな。

Avec Avec それが一番やりたいことですね。

──お2人はこのアルバムを親に聴いてもらいました?

Seiho 聴かせました。できあがったときにいつも親に聴かせます、僕ら。

Avec Avec 1曲ずつ聴かせて、「これどう?」みたいな。それで反応よかったらこれでいこうみたいな感じで。

──「ホリデイ」なんて、1980年代に流行ったKool & the Gangの「Celebration」風なニュアンスありますもんね。

Seiho ディスコっぽさもあって。なので、そういう音楽が好きな人にも聴いてほしいです。

1stアルバム「FRIENDS」 / 2015年1月21日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
1stアルバム「FRIENDS」
初回限定盤 [CD+書籍] / 3672円 / VIZL-767
通常盤 [CD] / 2700円 / VICL-64276
収録曲
  1. ホリデイ
  2. ネトカノ
  3. It's too late
  4. となりタウン
  5. MEMORY MELODY
  6. Big Wave
  7. 夢見ちゃいなガール
  8. カレイドスコープ
  9. Shopping Center
  10. 有名な映画のようにラブリーな恋がしたい
  11. 香港生活
  12. パラボラシャボンライン
初回限定盤付属コミック クリエイター / 作品名
  • 色「フレンズ」
  • 黒崎聡之「VACANTLY」
  • 川西ノブヒロ「I wanna be a lovely girl」
  • 水野しず「人間は暗い箱に脳を閉じ込めて生きている」
  • 西尾雄太「マジック」
Sugar's Campaign単独公演~FRIENDSリリパ~
2015年3月19日(木)東京都 UNIT
2015年3月20日(金)大阪府 SUNHALL
Sugar's Campaign(シュガーズキャンペーン)

Avec AvecことTakuma Hosokawaと、SeihoことSeiho Hayakawaの2人によるポップユニット。2011年に始動し、ゲストボーカルを招く形で活動している。2012年1月に「ネトカノ」を YouTube にて公開し、ネットやクラブ、インディーロック界隈など各所で話題になる。約2年半後の2014年8月にアナログ、9月にCDで「ネトカノ」を発売。11月に初の単独公演「ネトカノリリパ」を開催し、SPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューすることを発表した。同月「ホリデイ」を配信リリース。2015年1月21日にメジャー1stアルバム「FRIENDS」を発表。