音楽ナタリー PowerPush - Sugar's Campaign

普遍的ポップス職人の狙い

「STAND BY ME」は大人の幻想

Seiho 僕らのテーマとしては、子供から見た大人と、大人が懐かしんでる子供の幻想っていうのがあるんです。

Avec Avec その相違というか幻想の食い違い方の気持ち悪さ。その気持ち悪さを誇張したらポップになると思っていて。

Seiho そうそう。やっぱりアメリカンノスタルジーの映画ってそれこそ「STAND BY ME」もそうやけど、あれは幻想なんですよね。大人が振り返って作ってるもので、実際は世の中にああいう話は存在しないんですよ。

Avec Avec ゲームの「MOTHER」もそうやし、クレヨンしんちゃんの映画「嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」とかもそうやと思うんですけど。

Seiho その幻想みたいなのがすごい大事で。逆に言うと僕らの曲の中で大人っぽい曲は、僕らがかつてカーステレオで聴いてたAORとかR&Bの思い出をすごく誇張したものなんです。だからその当時そんなバブリーな生活をしてた人はいなかったけど、僕らがイメージしてたバブル時代の大人を歌ってる、みたいな。

Avec Avec

Avec Avec ハイヒールにワイングラスみたいな漠然としたイメージとかあるじゃないですか。当時の人らはリアルを知ってしまっているだけに、そういう幻想を描くことはたぶんできないから。僕らのはなんとなく、Tumblr的なイメージ。

Seiho そういうのを集めた幻想みたいな。

Avec Avec その逆で、僕らが子供の頃を懐かしんでる感じもあって。学校から帰ってきておやつ食べたり、夏休みの朝に観てたアニメのエンディングテーマの感じだったり、そういうノスタルジーをすべてあわせた感じ。

Seiho 子供が抱く大人のイメージ、大人が懐かしむ子供、どっちかっていうよりは“あわさったもの”“ひとまとまりになった何か”がSugar's Campaignのテーマです。

──ということは、お2人が目指しているのは普遍的な音楽?

Seiho そうですね。結局ポップスって普遍性じゃないですか。プラス、普遍性の中にある気持ち悪さというか。

Avec Avec 境界を越える気持ち悪さ。男と女の問題にしてもそうやし子供と大人もそう。その境界、幻想のギリギリみたいな。

Seiho 結局わかり合えない存在なのに、わかりあってるつもりの真ん中にあるのがポップスなんじゃないかな。

Avec Avec あと黒人と白人の境界線もそうやし。

Seiho プリンスとかマイケル・ジャクソンみたいに黒人から白人へのアプローチやな。

──Sugar's Campaignのボーカリストが男性または女性に限定されないっていうのは、結果的に越境という意味合いもあるのでしょうか?

Seiho そうですね。歌詞のニュアンスでは女の子の歌やのに男の子が歌ってるものとか、その逆で歌詞の内容は男性目線だけど、それを女性が歌ってるみたいな構造につながっていたりもします。

新しい音楽を作るのが自分たちの存在理由

──ポップスの仕掛けとしてもSugar's Campaignの歌詞は非常に面白いし、トラックメーカーとしてダンスチューンを発表してきたお2人が2015年に直球の歌モノをドロップする感覚がたまらないですね。お2人的にはまったく新しい音楽と、過去のポップスを再構築していくスタイル、どちらに興味がありますか?

Seiho 僕は新しくないとダメなんですよね。

Avec Avec 彼はそうなんです。

Seiho

Seiho じゃないと僕らが存在する意味がないと思うんですよね。過去の音楽をやるだけなら、極端な話、CD-Rがあればいいわけで。むしろ古い音楽はなるべく聴きたくないし、自分たちが存在する理由っていうのは自分たちにしか作れない新しいものを2015年のこのタイミングでドロップしていくだけっていう考え方がすごい強いんで。

Avec Avec それはわかる。

Seiho ただ新しいことって普遍的ではないじゃないですか。だからそこはAvec Avecと一緒にやることでバランスを取ってる部分はありますね。

──Avec Avecさんはどちらかというと普遍的なポップス寄りですか。

Avec Avec そうなんですけど、僕は結果的に新しくなるかなと思ってるんです。僕らしかできないことをやろうっていう気持ちは当然あって、僕が曲作るときは“自分が今一番聴きたい曲”を意識してるんで。でもそれが世の中に存在しないから、「このジャンルのこの部分と、このジャンルのこの部分を合わせたら絶対聴きたいのができるやろ」と思って作ると、結果的に新しいかなと。基盤にある文脈は過去のものから取ってるんですけど、その集合体は今までなかった、みたいな感覚ですね。

──ポップスの普遍性と新しさって非常にせめぎ合いで。

Avec Avec そうなんですよね。すりあわせる感じですね。だからこの2人でやっていく意味は大きいなと思っています。

1stアルバム「FRIENDS」 / 2015年1月21日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
1stアルバム「FRIENDS」
初回限定盤 [CD+書籍] / 3672円 / VIZL-767
通常盤 [CD] / 2700円 / VICL-64276
収録曲
  1. ホリデイ
  2. ネトカノ
  3. It's too late
  4. となりタウン
  5. MEMORY MELODY
  6. Big Wave
  7. 夢見ちゃいなガール
  8. カレイドスコープ
  9. Shopping Center
  10. 有名な映画のようにラブリーな恋がしたい
  11. 香港生活
  12. パラボラシャボンライン
初回限定盤付属コミック クリエイター / 作品名
  • 色「フレンズ」
  • 黒崎聡之「VACANTLY」
  • 川西ノブヒロ「I wanna be a lovely girl」
  • 水野しず「人間は暗い箱に脳を閉じ込めて生きている」
  • 西尾雄太「マジック」
Sugar's Campaign単独公演~FRIENDSリリパ~
2015年3月19日(木)東京都 UNIT
2015年3月20日(金)大阪府 SUNHALL
Sugar's Campaign(シュガーズキャンペーン)

Avec AvecことTakuma Hosokawaと、SeihoことSeiho Hayakawaの2人によるポップユニット。2011年に始動し、ゲストボーカルを招く形で活動している。2012年1月に「ネトカノ」を YouTube にて公開し、ネットやクラブ、インディーロック界隈など各所で話題になる。約2年半後の2014年8月にアナログ、9月にCDで「ネトカノ」を発売。11月に初の単独公演「ネトカノリリパ」を開催し、SPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューすることを発表した。同月「ホリデイ」を配信リリース。2015年1月21日にメジャー1stアルバム「FRIENDS」を発表。