音楽ナタリー PowerPush - Sugar's Campaign

普遍的ポップス職人の狙い

Sugar's Campaignは劇団がテーマ

──Sugar's Campaignでのそれぞれの役割分担はどうなってるんですか?

Seiho 歌詞に関しては共同で、楽曲に関してのメロディとか大まかな部分はAvec Avecがやって、僕は主に外に見える部分というかデザインやらビデオクリップなどの部分を担当したり。

Avec Avec あと、テーマやったり世界観の構築はSeihoがやってますね。

Seiho 結果的に役割分担になってる部分はあるんですけど、Sugar's Campaignはアートワークやったりデザインやったり世界観までを含めたものを2人で作ってるっていうイメージがけっこう大事な部分であって。

Avec Avec 僕らよく例えに出すんですけど、シュガーズは劇団みたいな感じかなと。

Seiho うちらは脚本家、演出家みたいな。僕自身は、演劇は年に1、2回大人計画を観に行くぐらいなんですけど。

Avec Avec

Avec Avec 僕も大学生の頃、舞台芸術論みたいなものを勉強してたときにいろいろ観たんですけど、あんまり詳しくはないです。ただ、歌モノなのにメンバーにボーカルがいないのも、劇団っていうテーマがもとになってて。

Seiho やっぱりバンドってボーカルが主役じゃないですか? ボーカルの性格がバンドにすごい反映されちゃうというか。その人が女好きやったら女好きのイメージの楽曲になるし、なよなよしてたらそういう感じになるし。

Avec Avec その人のパーソナリティがバンド全体の世界観になってしまうから。

Seiho でも、僕らは1曲ごとに作品を作りたいというか。それが劇団における主人公みたいな考え方なんで、なるべくボーカルって立ち位置をプレーンにしたいんです。

──それで曲によって異なるボーカリストを迎えるスタイルなんですね。曲作りはどうやって進めているんですか?

Seiho 作詞作曲編曲ってクレジットには載せてるけど、僕らの中ではあんまり分けて考えてないんです。メロディがあって、トラックがあって、歌う人がいて、というよりは音楽って1個の塊やから。

Avec Avec 作るときも全部一緒に作っちゃうんですよね。

Seiho バンドみたいに複数の人で曲を作るほうがよくなることもあると思うんですけど、たぶん1人で作ったほうが危険な音楽になるんですよね。うちらはそっちがいいというか。

Avec Avec 危うさ的なね。

Seiho だから最初に彼が音を足していく作業をして、そのデータを僕がもらって間引いていくというか、シンプルに聴きやすくしていくっていうイメージで。そういう作り方が僕らの世代では主流ですね。

Avec Avec 僕自身は普段足し算で作っていくタイプなんですけど、今回のアルバムはやっぱ歌とかメロディを聴いてほしいっていうのがあって、いらない部分はそぎ落としていきましたね。

親が好きなポップスとYouTubeで聴いてたものがフラットになってる

──アルバムを聴くとカラフルでいろんな時代の音楽を咀嚼してきた印象があるんですが、3人組バンド時代はどんな音楽性だったんですか?

Seiho 今回のアルバムに入っている「カレイドスコープ」は、バンド時代の曲ですね。

Avec Avec 当時のまんまです。僕の中での曲のルーツは今でもあまり変わってないとは思ってるんですけどね。「ホリデイ」と「ネトカノ」も実はバンド時代の最後のほうにできた曲なんですよ。それをちょっとブラッシュアップして出した感じです。「ホリデイ」と「ネトカノ」は自分の中のマイブームみたいな感じでシティポップ的なニュアンスが増えていってるんですけど、もともとは「カレイドスコープ」みたいな感じの曲が多くて。ちょっとニューウェイブっぽいバンドやったんです。

──「カレイドスコープ」はピチカート・ファイヴもカバーした、ミッシェル・ポルナレフの「Tout, Tout Pour Ma Cherie」(邦題:「シェリーに口づけ」)っぽい味付けで。

Avec Avec ああ、確かに。そういうのも大好きですね。1990年代の曲はけっこう小学校のときに聴いてたから。僕の中では、子供の頃におかんやおとんがカーステレオで聴いてた久保田利伸や山下達郎みたいな洋楽っぽいポップスと、中学高校時代にYouTubeで聴いてたものが一緒になってて、全部フラットに聴いてたっていう感覚があって。

──Seihoさんはジャズが根底にあるとのことですが、ジャズのグルーヴってシティポップにもつながってますよね。

Seiho もともと親がビバップを好きで。うちが昔お寿司屋さんをやってて、バイトに来てた人にDJがいて、ヒップホップを小学3、4年生のときに教えてもらったんです。そういうのが好きって親父に言ったら、アシッドジャズを教えてもらったり、Mo'Waxのアーティストを薦められたりして。それプラス、僕はコーネル・デュプリーってジャズギタリストがすごい好きで、楽器店で「こういうギターやりたいです」って言ってギターを始めたんで。

Avec Avec そこらへんの嗜好が僕とけっこうつながってくるんですよね。最初に彼と大学の入学式で会って、どんな音楽が好きかって話したとき、Steely Danとかの話で盛り上がったの覚えてる。

喫茶店の名前みたいなアルバムタイトル

──今回のアルバムはお2人にとってどういう位置付けでしょう?

Seiho メジャーデビューが決まって新しく書き下ろした曲もあるんですけど、どっちかっていうと1stでは今までのSugar's Campaignを見せたかったんです。僕たちの思い出もあるし、お客さんの思い出もあるじゃないですか。本当は僕たちが作りたかった作品っていうのが別にはあるんですけど、どっちかっていうとそれよりも今までSugar's Campaignを応援してくれた人に、いったん形にしたものを聴いてほしくて。

Avec Avec なんだかんだいって、さっき話したみたいにけっこう活動スパンが長いから、そのスパンがあってのメジャーデビューやし、総括的なものを残しとこうっていう思いが強くて。

Seiho

Seiho だから今回は今までいろんなことやってみて面白かったものの集合体という側面が大きいですかね。今後はもっと──例えば楽器をすべて生に置き換えたり、ボーカルのコンセプトをもうちょっとハッキリしたりみたいなところが僕らのやりたいこととして強くなると思います。

──なるほど。そうした思いを受けての「FRIENDS」というタイトルですか。

Seiho 「FRIENDS」ってタイトルはやっぱヤバいっすよねー!

Avec Avec 最初に喫茶店の名前みたいなタイトルにしようって決めたんですよ。「たんぽぽ」とか(笑)。マンガの「タッチ」とか「きまぐれオレンジ☆ロード」に出てきそうな、ちょっとカラフルでかわいらしい佇まいの喫茶店。

Seiho 水色と白に塗られた海沿いの喫茶店。口ひげが生えたマスターがおるような。

Avec Avec 「『喫茶たんぽぽ』、いいなあ」って。でも、「『たんぽぽ』はさすがになあ」という話になり(笑)。

Seiho 僕らはどうしても作品自体をまずメタ的に見ちゃうんですよ。だから僕らの意思で「FRIENDS」と付けたというより、Sugar's Campaignが一番付けたら面白い名前選手権の中の1位がこれだったっていう(笑)。

Avec Avec 「たんぽぽ」も大喜利的にはアリやけど、ちょっと狙いすぎな感じが強くて。「FRIENDS」やったらまだアリやなみたいな(笑)。僕らアメリカンノスタルジーの雰囲気が好きで、映画の「STAND BY ME」みたいな1950、60年代のニュアンスもちょっと匂わせたくて。「FRIENDS」だったらそんな感じも出るかな、と。

1stアルバム「FRIENDS」 / 2015年1月21日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
1stアルバム「FRIENDS」
初回限定盤 [CD+書籍] / 3672円 / VIZL-767
通常盤 [CD] / 2700円 / VICL-64276
収録曲
  1. ホリデイ
  2. ネトカノ
  3. It's too late
  4. となりタウン
  5. MEMORY MELODY
  6. Big Wave
  7. 夢見ちゃいなガール
  8. カレイドスコープ
  9. Shopping Center
  10. 有名な映画のようにラブリーな恋がしたい
  11. 香港生活
  12. パラボラシャボンライン
初回限定盤付属コミック クリエイター / 作品名
  • 色「フレンズ」
  • 黒崎聡之「VACANTLY」
  • 川西ノブヒロ「I wanna be a lovely girl」
  • 水野しず「人間は暗い箱に脳を閉じ込めて生きている」
  • 西尾雄太「マジック」
Sugar's Campaign単独公演~FRIENDSリリパ~
2015年3月19日(木)東京都 UNIT
2015年3月20日(金)大阪府 SUNHALL
Sugar's Campaign(シュガーズキャンペーン)

Avec AvecことTakuma Hosokawaと、SeihoことSeiho Hayakawaの2人によるポップユニット。2011年に始動し、ゲストボーカルを招く形で活動している。2012年1月に「ネトカノ」を YouTube にて公開し、ネットやクラブ、インディーロック界隈など各所で話題になる。約2年半後の2014年8月にアナログ、9月にCDで「ネトカノ」を発売。11月に初の単独公演「ネトカノリリパ」を開催し、SPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューすることを発表した。同月「ホリデイ」を配信リリース。2015年1月21日にメジャー1stアルバム「FRIENDS」を発表。