今年結成10周年という大きな節目を迎えるSuGが、7月5日に3曲入りの新作CD「AGAKU」をリリースする。表題曲は9月2日に行われる初の東京・日本武道館公演を目前にして、なりふり構わず“あがく”と言うメンバーの意志をダイレクトに示したナンバー。ダンスミュージック、ファンクのリズムを取り入れた色彩豊かなアレンジ、エモーショナルなメロディラインを含め、バンドの中心メンバーである武瑠(Vo)が「この10年間で一番よい曲ができた」と語る自信作に仕上がっている。
今回音楽ナタリーでは、武瑠に単独インタビューを実施。「AGAKU」のコンセプト、日本武道館公演に向けた動き、バンドの現状などについて幅広く語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介
10年間の総集編みたいな曲
──3曲入りCD「AGAKU」がリリースされます。制作にあたっては、どんなテーマがあったんですか?
テーマと言うより、選曲会にyuji(G)が「AGAKU」のデモを持ってきたときに全員一致で「これだろ!」ってなったんです。ファンクのリズムも入っていてダンスミュージックの要素があって、サビがすごくキャッチ―で。SuGの10年間の総集編みたいな曲になりそうだなって。
──SuGの個性がわかりやすく提示された曲ということですか?
はい。3月に発売したベストアルバム「MIXTAPE」の制作のときにこれまでの曲を聴き直したんですけど、yujiのギターカッティングだったり、俺が作曲するときによく使うディレイをかけたピアノがSuGらしさだなと思って。「AGAKU」には、その2つの要素を同居させたいと考えたんです。そうすることでSuGの特徴がわかりやすく出せるかなと。「sweeToxic」(2012年発表のシングル)のときも「自分たちらしさがしっかりつかめた」という手応えがあったんですよ。「sweeToxic」は一番ミュージックビデオの再生回数が多い曲なんですけど、ビジュアル系のシーンの中でファンク、ダブステップの要素を取り入れた曲をやったのは、かなり新しかったなと思っていて。それをさらに進化させた感じですね、「AGAKU」は。
──すごく情報量が多い曲ですよね。
そうですね(笑)。結果的に音をかなり詰め込んだので。メンバー全員が主張し合っているし、さらに打ち込みの音も入っていて。パっと聴いただけでは、どれだけの音が入っているのかわからないんじゃないかな(笑)。自分1人だけで作ったらもっとシンプルになったと思うし、こういうてんこ盛り感もSuGらしさなんだと思います。もちろん歌を聴かせたいパートは音をしっかり抜いているし、曲の中でバランスを取ってはいるんですけどね。ミュージックビデオのイメージも明確でした。まず「赤と青のライトを使いたい」と思ったんです。バンドのテーマカラーが紫なので、それを表現するのにここはベタに赤と青がいいかなと。この2色もバンドの特徴になってると思うんですよ。情熱的でもなければ、ずっと冷静ってわけでもないっていう。それはバンドのキャラでもあり、僕自身のパーソナリティにも重なっていると思います。
普通に考えたら武道館は無理
──「AGAKU」というタイトルは、SuGが“あがく”ことを意味しているんしょうか?
そうです。曲のタイトルだけは、去年の秋くらいから決めてたんですよ。タイトルのロゴとアートワークを先に決めて、それから曲を選んで。武道館の前にリリースする曲は「AGAKU」という言葉がぴったりだし、自分たちの10年間を総括することにもなるのかなと。「teenAge dream」という曲にも「いつだってあがいてやる」という歌詞が登場するんですが、“あがく”はそれくらい印象的なフレーズなんですよね、自分たちにとって。
──あがいてきた10年だったと。
常にそういう感じでしたね。「できるわけないよ」「無理」と言われるようなことばっかりやってきたし、それを乗り越えながら続けてきたバンドなので。わざと無理なことに挑戦してきたわけではないんですけどね。やりたいと思ったことをやっていたら、いつもあがかなくちゃいけない状況になっているというか。
──9月2日にはバンド初の日本武道館公演が開催されます。
日本武道館は今までで一番高いハードルですね。僕らの最大キャパはNHKホールとか代々木第二体育館だし、普通に考えたら無理なんですよ、武道館は。やるって決めたから、やるしかないですけど。
──でも、これまでも「無理だろ」という状況をひっくり返してきたわけですから。
最初の頃からそうだったかも。お客さんが15人くらいのときに、いきなり鹿鳴館でワンマンをやるって決めたり(笑)。勝算なんかまったくなかったんですけど、その後「LOVE SCREAM PARTY」が入っているアルバムを出したら、急激にライブの動員が増えて。狙ってたわけじゃないんですけどね、ホントに。
よく折れずにここまで来れたなと
──新作「AGAKU」はタイトル曲以外の収録曲も充実してますね。
僕、最初に入っているSEがすごく好きなんですよ(笑)。すごく広く言えばEDMなんだけど、生楽器の音色が混ざっていて。The Chainsmokersの「Closer」っぽい音とか、トレンドも少し取り入れてるし。今一番好きな音ですね。
──2曲目の「赤春」は華やかでストレートなロックチューンですね。
いい意味で普通と言うか、聴きやすい曲だなって思います。今回の作品は歌詞のテーマを統一させていて、この曲も「AGAKU」と同じような気持ちを歌っているんです。これまでの活動を振り返ってみると“青春”と言えるようなさわやかな印象はまったくなくて。きれいな思い出のほうが少ないし、活動休止中が一番穏やかで幸せだったかもしれないし、“青い春”と言うよりも“赤い春”のほうが僕たちには似合うなって。いろいろな状況の中で「そんなことはやれない」と思うことも多かったから、よく折れずにここまで来れたなと思います。どうしても損するほうを選びがちなんですよね。
──意に反することをやらなかったから、10年続いたのかもしれませんよ。
あ、そうですね。そうやって自分たちの意志を通すのも大変ですけど(笑)。
──3曲目の「CUT」は曲の展開がすごく激しくて。次はどう来るかわからない構成も、SuGらしいと思います。
この曲は最後の最後までアレンジが決まらなくて、すごく苦労したんです。題名みたいに「このパートは要らない!」ってごっそりカットしたり、構成を入れ替えたり。いろんな人のアイデアが入ってるんですけど、それをカットアップしている感じもあったので、「CUT」というタイトルにしたんですけどね。メンバー以外のクリエイターの意見が多く入ってるのも自分たちらしさかなと。
──クラブミュージックに近いというか、もはやバンドサウンドの枠は完全に越えてますね。「CUT」は「なにもかも傷つけず 自分らしくありたい / それこそが一番の“我が儘”だったんだ」という歌詞も印象的でした。
まさにその2行を言うための曲なんですよ。そこを際立たせるために、ほかの部分をあえてフラットにしたくらいなので。誰も傷付けずうまくやろうなんて考えはやっぱりズルイんですけど、活動休止から復活したあとはわりとそう思ってた時期が続いていたんです。自分をできるだけ出さないようにして、周りに合わせていたというか。「自分が我慢すれば、みんなが幸せになる」と思うことが多かったんだけど、それは間違いでした。そもそも、そういうやり方は自分には向いてないですからね。
──バンドの方向性、作品の方向性、ビジュアル、アートワークまですべて引き受けるのが武瑠さんの役割でしたからね。「自分の意見を抑えよう」と思ったのはどうしてなんですか?
まずソロプロジェクトの「浮気者」が大きかったと思います。ソロプロジェクトをやったことで、SuGのほうではバンドらしい動き方を意識してたんですよ。周りのスタッフからも「メンバーが並列に見えないとバンドじゃない」と言われていたし、アートワークや演出を含めて、自分が得意なこともできるだけ人に任せるようにして。ライブを増やしたのも、そういうことですよね。本当はクリエイティブに時間をかけたほうがいいんだけど、「ライブをやればみんなも楽しいだろうな」と考えて自分がこなせる以上の本数をやっていました。でも、そういう考えはもう断ち切りたいと思います。武道館でも、ひさびさに自分で演出するつもりです。
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ジャンルの壁がものすごく厚い
- SuG「AGAKU」
- 2017年7月5日発売 / ポニーキャニオン
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LIMITED EDITION
[CD+DVD]
1700円 / PCCA-04547 -
STANDARD EDITION
[CD]
1200円 / PCCA-04548
- CD収録曲
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SE. mark
- AGAKU
- 赤春
- CUT
- LIMITED EDITION付属DVD収録内容
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- 「AGAKU」Music Video
- 「AGAKU」Music Video Shooting OFFSHOT
ライブ情報
- 39 LIVE ADDICT chapter2 AGAKU
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- 2017年7月5日(水)東京都 WWW X
- 2017年7月7日(金)静岡県 HAMAMATSU FORCE
- 2017年7月8日(土)兵庫県 神戸VARIT.
- 2017年7月14日(金)石川県 vanvanV4
- 2017年7月21日(金)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2017年7月22日(土)福島県 郡山CLUB #9
- 2017年7月28日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年7月29日(土)広島県 CAVE-BE
- HEAVY POSITIVE ROCK
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2017年9月2日(土)東京都 日本武道館
- SuG(サグ)
- 2007年に結成された、武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)の5人からなるロックバンド。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思った通りに進む人たち」や「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいたミュージックビデオ、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の東京・国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが、2013年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを開催した。2015年3月にアルバム「BLACK」を発表し、結成10周年を迎える2017年3月にはベストアルバム「MIXTAPE」をリリース。7月に新作CD「AGAKU」を発売したのち、9月2日に初の東京・日本武道館公演を行う。