音楽ナタリー Power Push - 武瑠(SuG)×増田セバスチャン

アートと音楽 2つのクリエイティブが交錯した「KILL KILL」

小さいマンションが買えるくらいの借金

──増田さんは海外での活動も年々拡大されていますよね。以前は「日本を象徴する“カワイイカルチャー”の先駆者」というイメージもありましたが、今や日本という枠も越えて、1人のアーティストとして認知されていると思うんです。

左から武瑠(SuG)、増田セバスチャン。

武瑠 そうですよね。SuGも海外でライブをさせてもらってますけど、日本人が思っているほど「クールジャパン」という言葉や概念は浸透していなくて。これからは本当に個の時代だと思いますね。

増田 そうかもね。

武瑠 5、6年くらい前までは海外でライブをやるバンドが多かったんですよ。これは現地のコーディネイターも言ってたことなんですが、クオリティが高まってない状態で海外に行ったバンドが多かったから、現地のオーディエンスも飽きちゃってるようで。アートの分野ではどうなんですか?

増田 ほかの人のことはわからないけど、自分が初めてニューヨークで個展を開いたのは2014年なので、まだ新人なんですよ。今月末にはロサンゼルスとニューヨークで同時に個展をやる予定です。

武瑠 え、同時に? どっちも行くんですか?

増田 そう(笑)。まさに今日、作品の出荷が終わったばかりなんだけどね。新作を30作くらい送って。

武瑠 それだけでもすごくお金がかかりますね。

増田 そうなんだよね。アートはとにかくお金がかかるから。自分がやってる「TIME AFTER TIME CAPSULE」というアートプロジェクトがあって、ニューヨークに展示するタイムカプセルの作品を作って輸送したんだけど、それだけで小さいマンションが買えるくらいの借金ができちゃって。

武瑠 えー!

増田 これはダメだな、と(笑)。作品を日本に送り返すだけで精一杯だなと思ってたんですけど、「これは面白いから、自分の都市でも展示したい」と手を挙げてくれる人が次々と出てきたんですよ。だから今、そのタイムカプセルの作品はいろんな都市を回ってるんですよね。

武瑠(SuG)

武瑠 すごいですね。

増田 そのときに思ったのは「最初から出口を作っておいたり、着地点を考えているものなんて誰も見たくない」ということなんです。その作品が本物だったら、どんどん独り歩きしていくんだなって。

──ただ、作り手としては「この作品に使ったバジェットをどう回収するか?」を考えてしまいますよね。

増田 そうそう。だからどうしても小さくまとまってしまうし、それを買わされている状況だと思うんですよ。そうじゃなくて、まずは自分がいいと思うものを作って、その先でいろんな人が手をつないでくれたらいいんじゃないかって。ダウンロードできない体験を作ってあげることが大事だと思って作品を作ってますね、今は。

──バンドでいうと、やはりライブが軸になると?

増田 うん、そうだと思います。

武瑠 僕の場合は“服”という要素も大きいんですよね。「KILL KILL」のMVのTシャツを着れるという企画(ハッシュタグ「#SuGとKILLしたい」を通じてMVの感想ツイートの募集、投稿者には抽選でTシャツがプレゼントされた)を行ったことも自分たちの個性だと思うし。チェキをグッズとして販売するとか、そういうことを否定するつもりはないけど、自分たちはクリエーションで勝負していきたい。あと孤独感が増していることも制作の動機になっています。SuGと同じ時期から活動してきたバンドが解散したり、活動休止することが増えてるし、クリエイティブと音楽が密接に関わっているバンドも減っているので。

本命に手がかかるから、今は浮気できない

──「KILL KILL」のMVも大きな注目を集めているし、ロックバンドのクリエーションの在り方にも大きな刺激を与える作品だと思います。

増田 まずはたくさんの人に観てもらいたいです。自分がMVを作れるのは1年に1、2本が限界だし、今回武瑠くんと一緒にやれたのもうれしかったので。自分とSuGって、意外とファンがかぶってると思うんですよ。

武瑠 そうですね。これはメンバーも言ってたんですけど、今回のMVの撮影を通して、セバスチャンさんの愛をすごく感じたんですよ。ビジネスではここまでできないよなって。

増田 どんな仕事でもまず「予算はありません」って言われるんですよ(笑)。でも、お金をかけなくてもインパクトのある作品を作ることはできますから。

──SuGは2017年に日本武道館公演を実施することが決定しています。バンドの活動もさらに活性化していくと思いますが、武瑠さんのソロプロジェクト「浮気者」で増田さんと本格的なコラボレ―ションが実現することも期待してます。

武瑠 「“浮気者”をやってほしい」ってよく言われるんですけど、そんな余裕がないんですよ。本命に手がかかるから、今は浮気できないというか(笑)。今はSuGをしっかりやらなくちゃいけないと思ってます。

左から武瑠(SuG)、増田セバスチャン。
SuG ミニアルバム「SHUDDUP」/ 2016年11月2日発売 / ポニーキャニオン
LIMITED EDITION / [CD+DVD] 3000円 / PCCA-04440
STANDARD EDITION /[CD] 2000円 / PCCA-04441
CD収録曲
  1. ANARCHY IN THE REAL
  2. KILL KILL
  3. FLY WYVERNS
  4. WORLD FAMOUS
  5. BLOODY MARY
  6. ZIG ZAG
  7. SCREAM IT LOUDER
LIMITED EDITION DVD収録内容
  • 「KILL KILL」Music Video
  • 「KILL KILL」Music Video -Band Ver.-
  • 「KILL KILL」Music Video -Shooting OFFSHOT-
  • 「絶対にビビってはいけない心霊ビルディング」

SuG「VersuS 2016 EXTRA」

2016年11月12日(土)
大阪府 松下IMPホール ※極悪SuG
2016年11月13日(日)
大阪府 松下IMPホール ※極彩SuG
2016年11月19日(土)
福岡県 DRUM SON ※極悪SuG
2016年11月20日(日)
熊本県 熊本B.9 V2 ※極彩SuG
2016年11月22日(火)
愛知県 ElectricLadyLand ※極悪SuG
2016年11月23日(水・祝)
愛知県 ElectricLadyLand ※極彩SuG
2016年11月26日(土)
東京都 品川インターシティホール ※極悪SuG
2016年11月27日(日)
東京都 品川インターシティホール ※極彩SuG
2016年12月3日(土)
宮城県 仙台MACANA ※極悪SuG
2016年12月4日(日)
山形県 山形ミュージック昭和Session ※極彩SuG
2016年12月16日(金)
広島県 CAVE-BE ※極悪SuG
2016年12月17日(土)
岡山県 IMAGE ※極彩SuG
2016年12月22日(木)
新潟県 CLUB RIVERST ※極悪SuG
2016年12月23日(金・祝)
長野県 ALECX ※極彩SuG
2016年12月26日(月)
京都府 京都MOJO ※極悪SuG
2016年12月27日(火)
兵庫県 神戸VARIT. ※極彩SuG

SuG VersuS 2016 EXTRA FINAL
「COUNTDOWN」

2016年12月30日(金)
東京都 豊洲PIT
※極彩SuGと極悪SuGによるツーマンライブ
SuG(サグ)
SuG

2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思った通りに進む人たち」や「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいたミュージックビデオ、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の東京・国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが、2013年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを開催した。2015年3月にはアルバム「BLACK」をリリース。さらに2016年3月に1stミニアルバム「VIRGIN」を、11月に2ndミニアルバム「SHUDDUP」を発表した。