音楽ナタリー PowerPush - SuG

10年かけて結実したカラフルな集大成「BLACK」

SuGが約3年ぶりとなるフルアルバム「BLACK」をリリースした。本作はこれから刊行される武瑠(Vo)が執筆した小説の世界とリンクした1作。これまで以上にさまざまなジャンルの音楽をSuG流に料理した、カラフルでカオティックな内容に仕上がった。

なお、武瑠は扁桃腺手術および療養のため現在一時活動休止中。今回ナタリーは手術前の彼にインタビューを行い、自身やバンドの現状、そして手術を延期してまで作り上げた入魂のアルバム「BLACK」について聞いた。

取材・文 / 中野明子 撮影 / 上山陽介

実体験から生まれた「HEAVY POSITIVE ROCK」

武瑠(Vo)

──先日、扁桃腺手術のため一時休養されることが発表されまして(参照:SuG武瑠が喉の治療のため一時活動休止)。今は手術前とのことですが、具合はいかがですか?

取材などで話すぶんには大丈夫な感じです。扁桃炎だから熱がすごい出るんですよね。昔から体が丈夫ではなくて、免疫力が低いので胃腸炎になったり、肝臓をやられたり。でも喉を痛めているわけではないし、熱くらいであればライブとかもやればできちゃうので、ずっと無理してやってきちゃったんですよね。

──手術後は療養されるとのことですが、復帰はいつ頃を予定しているんですか?

4月からスタートするツアーで活動を再開できるように調整しているところですね。去年から扁桃腺を切ることを薦められてはいたんですけど、歌に影響が出ることが怖くてレコーディング中に切るのだけは避けてたんですね。声質が変わることもあると聞いていたし。たださすがに熱が出る頻度が増えたので、アルバムツアーの前に手術を受けようと決めたんです。

──武瑠さんは病気を感じさせないほど精力的に活動してますよね。小説を書いたり、映画を作ったり、デザイナーとして活躍したり。

俺は年間200本ライブをやるとかは体力的に無理だし、1本のライブにしてもやりすぎちゃうんです。ライブがたくさんできない分、ほかの武器を持たないと活動してないように見えちゃうから。ただ体が丈夫じゃないことが、活動をする上で結果的にプラスになってるかなと思います。

武瑠(Vo)

──思うように動けないとくすぶることもありますが、それを逆手に取ったと。

今まで何度も腐りそうになったんですよ。過去にも3度くらい別のことで入院を勧められたことがあって。でも活動を止めたくなくて、なんとか乗り越えてきたんです。もちろん体調を崩すと気持ちが腐りそうになるし、悔しいけど、その分腹が据わるというか。でもみんなそうだと思うんです。つらいことがあるとやる気がなくなっちゃうけど、それを乗り越えたときに前向きで能動的な気持ちになる。それがSuGのテーマである「HEAVY POSITIVE ROCK」にもつながるんです。

黒はカラフル

──さて、手術を延期してまで完成させた「BLACK」についてお聞きします。2012年から本作に向けて動き始めていて、去年11月のインタビュー(参照:SuG「CRY OUT」インタビュー)では「次のアルバムが相当すごいことになるぞ」と発言されていました。実際完成したアルバムについてどんな手応えがありますか?

今回は「SuG」っていうバンド名(「周りの意見を気にせずに自分たちの思った通りに進む人たち」という意味)に合うアルバムにすることがテーマだったんですよね。あと「一番カラフルな色がブラック」というのもコンセプトとして掲げて作っていったんですけど、その通りのアルバムができたんじゃないかと思います。

──「一番カラフルな色がブラック」という意味は?

いろんな色を塗り重ねていくと、最終的に黒になると思うんです。そうやって作られた黒はちゃんと層があって、歴史が重なってる。そういう意味で、これまでのSuGの歴史を総括するアルバムになったと思います。

──なるほど。ただ今作は音を聴く限り、コンセプトがあるようでないアルバムなのかなと感じたんです。曲ごとにサウンドもメッセージも異なっていて、聴くたびにアルバム自体の印象が変わる面白い作品だなと。

武瑠(Vo)

そうですね。今書いている小説と連動しているので、実は1曲1曲、細かくコンセプトやストーリーが決まってるんですよ。ただ前作の「Lollipop Kingdom」のように、コンセプト前提で作った曲だとわからないようにしたんです。まずは音楽だけで楽しめるようにして、小説を読んだときにさらに楽しめるように意識しました。

──これから刊行される小説を読むことで、アルバムを違う形で楽しめると。今って、いい曲ができたらすぐ配信なりで出していくというスピード感を重視するアーティストも多いと思うんです。でもSuGはアルバムありきで、かなり綿密に時間をかけて作るし、シングルもあらかじめアルバムの中に入ることを前提として切っていく形ですよね。

作った曲をすぐ出すことよりも、僕らはアルバムをいかに面白いものにできるかっていうのを優先してるんです。それが自分たちのスタイルに合ってる。あとレコード会社にもすごく自由な形でやらせてもらってると思います。

ニューアルバム「BLACK」2015年3月4日発売 / ポニーキャニオン
3939BOX [CD+DVD] 5940円 / PCCA-04155
LIMITED EDITION [CD+DVD] 4212円 / PCCA-04156
STANDARD EDITION [CD ]3240円 / PCCA-04157
CD収録曲
  1. street gothic
  2. MISSING
  3. HELLYEAH
  4. overflow
  5. night market
  6. B.A.B.Y.
  7. DEAD or DEAD
  8. hey 俗 funk you
  9. FRIDAY!!
  10. sweeToxic
  11. 神様の悪戯
  12. Time after time
  13. CRY OUT
  14. SOS
  15. 一蓮托生
  16. 影炎
  17. BLACK
3939BOX DVD収録内容
  1. BLACK -Music Video-
  2. BLACK -Music Video 撮影&制作ドキュメント
  3. SuG 8th Birthday“一蓮托生”(2015.1.12)ダイジェスト&ドキュメント
LIMITED EDITION DVD収録内容
  • CRY OUT -20141018 Live Ver. Music Video ?
  • M-ON 「SuG Special」 Director's Cut
SuG(サグ)
SuG

2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思った通りに進む人たち」や「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれにもとづいたPV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが、2013年9月に東京・原宿でサプライズライブを行い活動再開を宣言。同年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを行った。2014年に入ると2月に「MISSING」、7月に「B.A.B.Y.」、11月に「CRY OUT」とシングルを3作立て続けに発表。同年8月には多ジャンルにわたるアーティストをゲストに迎えた主催イベント「渋谷 SuG Fes 2014 夏」を3日間実施した。2015年3月にニューアルバム「BLACK」をリリース。