「marbles.」のヒントは映画「あの花」

──カップリングの「STAY TUNED」は歌詞も楽曲のテイストも、すごくヒップホップの要素が強いですね。それでいてシングル的なキャッチーさも兼ね備えていて。

確かに。サビだけ聴くと、別にこっちがシングルの表題曲でもおかしくないですけどね。実は今、俺らシングル候補曲がめちゃくちゃ余ってるんですよ。「B.A.B.Y.」ぐらいのクオリティの曲が10曲以上あって悩むんですよね、出し方に。以前だったらそのとき一番いいと思う曲を出してたのに、同じぐらいいいやつがいっぱいあるから困るっていう（笑）。

──yuji（G）さんがいい曲をたくさん書いてきてると。

そうです。1人、爆発してますよ。量産型なんで（笑）。逆に自分はちょっとバランスを取りつつ、前作の「Rolling!!」や今作の「marbles.」みたいに、yujiが作らないようなシンプルな曲を作ってます。

──その「marbles.」ですが、「B.A.B.Y.」「STAY TUNED」の派手な流れとは一線を画する楽曲ですね。歌詞もすべてひらがなですし。

逆にストレートで普通の曲みたいな印象もありますよね（笑）。全部ひらがななのは、難しいことを書かずに、ピュアな感情だけを表現したくてこうしたっていうのもあります。この曲はイントロが本当に大好きなんですけど、ちょっと夏の終わりみたいな雰囲気で……ZONEの「secret base ～君がくれたもの～」を聴いたときにヒントを得て作った曲なんです。去年の夏、「あの花」（「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」）っていう映画を観て、こういう曲を作りたいなって……まあ曲調は全然違いますけど（笑）、聴いたときに感じた感情を追体験できる曲にしたいなと思ってました。

──武瑠くんが言うように、確かに夏の終わりというか、何とも言えない寂しさや切なさを感じさせる1曲ですよね。結果このシングルは3曲とも夏をイメージさせる曲になりました。

うん、そうですね。候補曲が多かったので、逆に夏縛りで選んだところもあるんですけど（笑）。今しか出せないもの、このタイミングに出したい曲っていう基準で選んだんですよ。さっきシングルの候補が10曲以上あるって言いましたけど、それ以外も含めると100曲ぐらいストックがあるんで、本当に選曲が大変で。

──しかも音楽の振り幅が以前よりも広がったぶん、余計に大変だと。

そうですね。ホントにそれは感じてます（笑）。

今後は「MISSING」がクオリティとして最低ライン

──前作「MISSING」でも感じたことですが、作品全体のカラーが単色に統一されているようで、よく聴くと随所にカラフルさが散りばめられている。そういう濃度は活動休止以前よりもさらに高くなりましたね。

はい。それが年間のテーマでもあるんで。これ……どういう触れ方をしたらいいんだろうな……うーん……あの、活休前から次のアルバムタイトルは決めてたんですよ。2年前から「Black」っていうタイトルにしようと思っていて。

──そうですよね。浮気者のインタビュー（参照：浮気者「I 狂 U」特集）でも、そういう話をチラッとしてましたし。

「黒が一番カラフルな色」というテーマでアルバムを作ろうと思ってるんです。だから色彩に関しては、この1年は大事にしていこうと思ってます。振り幅をむちゃくちゃ大きくした上での“カラフル”の最終形は“黒”という。その中でもシングルで一番激しい「MISSING」と……あ、アルバムにはもっと黒いのが出てきますけどね。そして、その対極にある「B.A.B.Y.」。その対比を存分に楽しみつつ、1つの作品として仕上げていきたいなと。すでにアルバムの選曲を始めてるんですけど、もちろん今までの中で一番いいものになるなとすでに感じています。「MISSING」のときから言ってましたけど、活動再開後一発目に「MISSING」を出したということは、これがクオリティとして最低ラインなんです。今後はこれ以上のものしか出てこないと思うんで。

──「MISSING」「B.A.B.Y.」だけでもクオリティが高いと思うのに、これ以上のものが今後控えているわけですよね。ただ楽しみでしかないんですが（笑）。

あはは（笑）。あの、「Lollipop Kingdom」を出したときに、完全に周りの反応が変わったんですよ。すげえざっくり言うと、先輩が優しくなったりとか（笑）。先輩アーティストたちが興味を持って話しかけてきてくれるようになったのは大きかったです。それにナタリーさんとか今まで出たことがなかった媒体にもたくさん出るようになったし（参照：SuG「Lollipop Kingdom」インタビュー）、「今後が楽しみだ」と言われる中で「sweeToxic」を出して、反響が以前よりもさらに大きくなって。そういうことが感じられたからこそ、復活できたっていうのもあると思うんです。俺たちが楽しいと、面白いと思ったことを同じように面白がってくれる人がいるんだ、みたいな。だからこそ次のアルバムは、「Lollipop Kingdom」や「sweeToxic」の頃にはまだ届ききらなかったところにも絶対届くと信じてます。

次のアルバムのアイデアを思い付いたのは3年前

──武瑠くんは以前から数歩先のことを考えながら活動してますが、そのスピード感は活動再開後、さらに増してる気がします。

だってアートワークに関しては、すでに来年の夏ぐらいに出すつもりの作品について考えてますからね。順序立てていっぱい作って、それを発表する時期が近付いてくると、最初のアイデアをさらにアップデートしてく感じで。変な話、今作ろうとしてるアルバムのアイデアも、最初に思い付いたのは3年前ですから。ということは、3年後に出したいアルバムのテーマも、もう自分の中で決まってるんですよ。大きなテーマを先に作っておいて、そこに向かいながら変化を繰り返していくのが面白いなと思うんですよ。

──1つのゴールをイメージしておいて、そこまでどういう道をたどっていくか、どういう手段で進んでいくかを考えるのも、面白さの1つだと思いますし。

うん。それはすごい感じますね。

──で、ゴールに向かって歩んでいるうちに、当初の発案とは違った手段で道を進んだり、ゴールまでの過程が想定していたものからどんどん変わったりもする。

そうですね、どんどん変わりますから。周りからも影響を受けますし。たぶんすごく影響されやすい人間だと思いますよ。もちろん本流となるものは常にあるんですけど、周りから感化されてすごく暗い曲ができたり、逆にめちゃめちゃ明るい曲ができたり。自分でもコントロールが効かないときがあるくらいですから（笑）。でも俺、めちゃくちゃく雑食なんで、特に次はその要素がより濃く出たアルバムになりそうですね。