ナタリー PowerPush - SuG
ポップなだけでは終わらない!武瑠が考える「次の一手」
SuGがニューシングル「B.A.B.Y.」をリリースした。ひたすら攻撃的な前作「MISSING」に続く新曲は、TeddyLoidをアレンジャーに迎えた“ヘヴィロック+ポップ+EDM”な1曲。これまで以上に振り切った感が強く提示されており、バンドとしての成長をアピールする楽曲に仕上がっている。
前作「MISSING」リリース時のインタビュー(参照:SuG「MISSING」インタビュー)ではSuGの「2014年のモード」について語った武瑠だが、現在の彼は何を考えどこへ向かおうとしているのか。今回の新曲「B.A.B.Y.」を通じて、彼が考える「今後のビジョン」を語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 上山陽介
活休前よりも振り幅の目盛りが増えた
──新曲「B.A.B.Y.」が初披露されたのは5月6日の野音ワンマンでしたが(参照:SuG、曇天の野音で「騒いではしゃいで笑って付いてこい」)、こうやって音源で聴くとライブで聴いたときとは違った印象がありますね。その緻密さに改めて気付かされるというか。
確かに。デモの時点でだいぶポップな印象で、ビジュアルイメージもそういったものを想定していたんです。でも前作「MISSING」よりもボトムが重いし、リズムが大きいぶんキックも今までより一番重い音なんじゃないかな。ただポップなイメージだけでは終わらない、“ラウドポップ”みたいな言葉が一番合うんでしょうね。
──今回はアレンジャーにTeddyLoidさんを起用していますが、それもあってか、かなり音で遊んでる印象を受けました。
でも自分たちの感覚としては、新しいことをやったっていう感覚はまったくないんです。ただ、活休前よりも振り幅の目盛りが増えたのかなとは思っていて。ゼロ地点からポップなほうと、ゼロ地点からヘビーでラウドなほうの目盛りが、以前はそれぞれ10ぐらいしかなかったのが、今は両方50までいけるとか。もともと持ってた振り幅をより拡大できたっていう印象です。「B.A.B.Y.」でやりたかったことは6年前に出した「LOVE SCREAM PARTY」あたりにイメージが似ているんだけど、目盛りが増えたぶんパワーアップしてるというか、アップデートバージョンになったと思います。
──そもそもTeddyLoidさんの起用はどのようにして決まったんですか?
最初はthe GazettEやMEGさんの作品を聴いて面白いアレンジだなと思って。そこからアートワークも含めて、Teddyくんが持ってる世界観に対してずっとシンパシーを感じていたんです。で、昨年の浮気者とかSuGの復活ライブとかを観てもらってからちょっと話したんですけど、Teddyくんも俺の世界観を気に入ってくれたみたいで、そこから一気に話が進んで。「ああ、これはいい掛け算ができそうだな」と思いましたね。
──今作の制作に際して、どのような話をしましたか?
まず最初にカップリングの「STAY TUNED」のアレンジをお願いしたんですけど、仕上がりが想像以上に素晴らしかったので「B.A.B.Y.」もやってもらうことになったんです。制作の初期段階から「遊んでるのにどこか高級感がある音にしましょう」っていうことは話してました。実は「B.A.B.Y.」って、シーケンスの音数が以前の楽曲よりも減ってるんですよ。音数は少ないけど印象に残るフレーズを考えようというのが最近よく試してることで、イントロなんてかなり音数は少ないですからね。
──それでいてイントロのフレーズがちゃんと耳に残るっていうのは、ちゃんと印象的なものを選べてるってことなんでしょうね。
そこがTeddyくんのセンスなんだと思います。以前の自分だったらさらにプラスワンしてたんじゃないかな。
“ストリートゴシック”と“ラウドポップ”
──ビジュアルに関して言うと、前作「MISSING」のときはダークなトーンを基調にしながらも、全体的にカラフルさが散りばめられたテイストでした。今回は軸になるものの方向性は一緒かもしれないけど、見せ方はずいぶん変わりましたね。
そうですね。今のSuGのビジュアルテーマは“ストリートゴシック”っていう言葉が一番しっくりきていて。「MISSING」のときはゴシックが強めでしたけど、「B.A.B.Y.」ではストリートが強めなイメージ。その上でテーマカラーは紫で統一して、「MISSING」からあんまり離れすぎないようにしてます。
──そして通常盤ジャケットには有刺鉄線ボーダーの星条旗が使われています。このアートワーク、5月の野音公演でもバックドロップに使用されていましたが。
ものすごくキャッチーですよね、これ。有刺鉄線ボーダー自体は2年間温めてきたデザインなんですけど、昔思い付いたアイデアを出すときって、なんかモヤっとするものがあって。だから何かプラスワンできないかなと思ったときに、星条旗のボーダーが有刺鉄線になってたら面白いなって思ったんです。この曲にすごくぴったりなアイコンだなって……結局俺、アンディ・ウォーホルが一番好きなんですよ。芸術観だとか社会風刺だとかが感じられるアートが好きで、そういう精神がこの有刺鉄線ボーダーの星条旗にも詰まってる気がします。
──「自由の国・アメリカ」の国旗に、縛り付けるような有刺鉄線が描かれるという、相反するものが詰め込まれたバランス感なんて、まさにそれですよね。
10月に控えたライブ「極彩SuG VS 極悪SuG」もそうだし“ストリートゴシック”って言葉もそうだし、今回の“ラウドポップ”も含めて全部そうで、相反するものが並ぶのが自分とSuGにとっての中心線なんだと思います。
若い人のアートに対するセンスが急激によくなってる
──楽曲にしても「MISSING」でひたすら攻撃的な方向に振れたと思ったら、今回の「B.A.B.Y.」ではどポップな方向に振り切れていて。
そうですね。でも、ただキャッチーで終わらないようにしようとすごく悩みましたね。メロディや歌詞だけだとポップ過ぎちゃう、キャッチー過ぎちゃうかもしれないので、いかにPVに毒っ気を持たせようかというところで苦労しました。
──そのPVもかなり凝った作りですね。
「夏の解放に乗じて、ちょっと悪いことをしちゃう」というテーマで、プチ「ジャッカス」みたいな……あっ、これは使わなかったけど「よい子過ぎる人は真似してください」みたいなキャッチコピーも考えてました。「よい子は真似しないでください」じゃなくて「よい子過ぎる人は真似してください」。PVにはそういうイメージを打ち出したくて……まあ撮るのも、編集するのも大変でしたね。それでも男の子からカッコいいって言ってもらえたし、今までだったらサラッと「カワイイ」って言われてたのが「カッコよくてカワイイ」っていう感想に変わってきたので、観た人にちゃんと伝わったんだなと安心しました。たぶん……最近はインスタ(スマートフォンのアプリ「Instagram」)があることによって、若い人のアートに対するセンスが急激によくなってると思うんです。
──アプリ1つで手軽に写真の加工ができるようになったのは大きいと。
そうです。それはめちゃくちゃ感じていて、小難しい文章だと伝わんないのに……文章の理解力は下がってるのに(笑)、その代わり絵や色のセンスが高くなってるんですよね。昔の世代だったらめちゃくちゃセンスが問われたことが今はインスタで一発ででできるから、逆にそれが基準になっていて、ダサい色もすぐわかるようになってるというか。そういう意味ではそのレベルが上がってるんでやりやすいし、「あ、ちゃんとこのよさがわかってもらえてるんだ」とはすごく感じてます。
SuG 「B.A.B.Y.」MV
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- ニューシングル「B.A.B.Y.」 / 2014年7月23日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤A [CD+DVD] 1890円 / PCCA-04058
- 初回限定盤B [CD+DVD] 1890円 / PCCA-04059
- 通常盤 [CD] 1250円 / PCCA-04060
初回限定盤Aおよび初回限定盤B CD収録曲
- B.A.B.Y.
- STAY TUNED
初回限定盤A DVD収録内容
- B.A.B.Y. -Music Video-
- B.A.B.Y. -Music Video Shooting OFFSHOT-
~LIVE from 2014.5.6日比谷野外大音楽堂~
- 小悪魔Sparkling
- 夏音-Kanon-
初回限定盤B DVD収録内容
- B.A.B.Y. -BAND Ver.-
~LIVE from 2014.5.6日比谷野外大音楽堂~
- gr8 story
- heavy+electro+dance+punk
通常盤 CD収録曲
- B.A.B.Y.
- STAY TUNED
- marbles.
渋谷 SuG Fes 2014 夏
- TOWER RECORDS Presents SuG LIVE BATTLE 2014
- 2014年8月19日(火)東京都 TSUTAYA O-EAST
<出演者>
SuG / 稲川淳二 / 赤飯ロマン横丁(セキハンロマンアベニュー) / アップアップガールズ(仮) - WALKER HILLS Presents SuG LIVE BATTLE 2014
- 2014年8月20日(水)東京都 TSUTAYA O-EAST
<出演者>
SuG / LM.C / ベイビーレイズ / and more - DI:GA Presents SuG LIVE BATTLE 2014
- 2014年8月21日(木)東京都 TSUTAYA O-EAST
<出演者>
SuG / 神聖かまってちゃん / アーバンギャルド / LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN
VersuS 極彩SuG VS 極悪SuG
- 極悪SuG
- 2014年10月4日(土)千葉県 舞浜アンフィシアター
- 極彩SuG
- 2014年10月5日(日)千葉県 舞浜アンフィシアター
SuG(サグ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが2013年9月20日、東京・原宿でサプライズライブを行い活動再開を宣言。同年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを行った。2014年2月、再始動後初となるシングル「MISSING」をリリース。同年7月にTeddyLoidをアレンジャーに迎えたニューシングル「B.A.B.Y.」を発売した。