ナタリー PowerPush - SuG
マネージャー証言&年表で振り返るメジャー3年間の軌跡
SuGのライブは喜怒哀楽がはっきりしてる
──CD発売イベントの企画はお客を楽しませるという意味では、SuGのライブにも通じますよね。エンタテインメント性が豊かで。
彼らのライブは基本エンタテインメントに徹してやろうっていうのがあって、喜怒哀楽がはっきりしてるライブなんですよね。「ここは激しめで怒り気味でやる」「ここは笑うところ、ここは悲しむところ、ここはみんなで喜びを分かち合うところ」ってはっきりしてるから、映画みたいで面白いんです。で、気がついたらちょっとミュージカルっぽく盛大なことをやって、スタッフが大変っていう(笑)。
──DVD化されているライブ映像を観ると、どれも趣向を凝らした演出が用意されてますし。
ダンサーさんを使って、映像を使って、ステージセットをそれなりに組んでと、あの規模のライブにしてはけっこう凝ってましたよね。徹底的にやるんで、基本東京でのファイナル公演は全部赤字なんですよ(笑)。地方でライブやって、ちょっと利益が上がったら全部ファイナルで使い切る感じなんで。事務所からしたらやっかいなバンドですよね、本当に(笑)。ほかのバンドより明らかにライブでの利益が少ないはずです。
──SuGのライブを観てまず驚いたのが、ダンサーを起用する発想なんです。おそらく多くのバンドはバンドメンバーだけで完結させるか、あるいは足りない音を補うためにサポートメンバーを迎えると思うんですが、SuGの場合はあくまでエンタテインメント重視でダンサーを導入してるわけですから。
ダンサーさんはほぼホール公演のときにのみ起用してるので、ライブハウス公演とはまた別のステージセットになるんです。ツアーファイナルになるとダンサーさんを迎えて、映像を追加して、ステージセットもガラッと変えて。お客さんもライブでダンサーさんの振り付けを見て、一緒に踊ったりできるし、それが盛り上がりにつながるからいいかなと。個人的にはすごく好きです。
TM NETWORK「CAROL」との共通点
──このインタビューの前に過去2作のDVD(「VIP POP SHOW.」「The Lollipop Kingdom Show」)を改めて観返したんですけど、その徹底された演出の数々に「なんだろうこのバンドは?」と思ってたんです(笑)。
「The Lollipop Kingdom Show」に至ってはアルバム(「Lollipop Kingdom」)の曲順通りにやってますから(笑)。まあでもあれはメンバーが前からやりたかったことなんですよ。
──アルバムのストーリーをそのままライブに反映させて、アルバムの曲順通りに演奏していくという。
アルバムを3枚(「TOKYO MUZiCAL HOTEL」「Thrill Ride Pirates」「Lollipop Kingdom」)作って、「もうそろそろできるかな? やってみようよ」ということで挑戦したんです。ライブは「Lollipop Kingdom」の曲を演奏する第1部と、ライブで盛り上がる鉄板曲を並べた第2部の2部構成にすればお客さんも満足するだろうと。実際、一番盛り上がったツアーだったと思いますよ。「Lollipop Kingdom」はメンバーや武瑠がやりたいことの80%くらいはできたんじゃないですかね。アルバムとシングル、PV、小説、ツアーと全部連動させた作品を作れたし、あとここに映画が加われば大満足だったんじゃないかな(笑)。
──ああ、確かに「Lollipop Kingdom」は映像に向いてますもんね。
よく小説「Lollipop Kingdom」の編集者と「TM NETWORKの『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』を思い出すよね」なんて話してたんです。あのアルバムも小室哲哉さんが小説とライブ、CD、アニメとメディアミックスを試みましたし。武瑠は「CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~」のことを知らなかったらしく、CDとDVDと小説を貸したんですけど、まったく手を出さなかったようですね。そのまま返してもらいました(笑)。
──あはははは(笑)。
でもそういう過去の事例をまったく知らないでやってるから面白いんですよ。
「Crazy Bunny Coaster」の物語は高校時代にできていた
──それと武瑠さんの小説「TRiP」を初めて読んだときに思ったのが、映像を思い浮かべやすい文章だなと。本人がどこまで意識的だったかわかりませんが、やっぱりこういった作品を映画として残したかったっていう気持ちが強かったんでしょうかね。
1作目の小説「TRiP」に関しては武瑠も取材で、歌詞とPVを観れば「ああ、小説のあのシーンね」って思い浮かぶようにちょっとオーバー気味に書いてると説明していた通りで。2作目の「Lollipop Kingdom」はちょっと作風が変わって、あまり説明しすぎない程度の表現にしたものの、読んだ人がSuGのCDを聴いてニヤッとする場面は多いですよね。実は「TRiP」に登場する「Crazy Bunny Coaster」のストーリーは武瑠が高校生のときに作った話らしくて。「TRiP」を書籍化する前に携帯で配信したんですけど、それを読んだ武瑠の高校時代の友達から電話がかかってきて、「昔、自分に言ってくれたストーリーを本当に小説にしたんだね」って言われて武瑠はビックリしたそうですよ。
──本人も忘れてたんですね。
そうなんです。でもそういう話を高校時代からずっと考えてたことは前から言ってましたね。
──やりたかったことが終始一貫してるんですね。
結局出版されなかったけど、メジャー1stアルバム「TOKYO MUZiCAL HOTEL」のときも小説を書きかけていて。どこからも出せないからって本人は途中で諦めたんですけど、いつかなんらかの形で世に出すんじゃないですかね。
- ベストアルバム「BEST 2010-2012」 / 2013年3月6日発売 / ポニーキャニオン
- 完全限定生産盤/3939BOX [2CD+2DVD+ブックレット] / 8800円 / PCCA-03805
- 完全限定生産盤/3939BOX
- 通常盤 [CD] / 3000円 /PCCA-03806
- 通常盤
DISC 1収録曲(通常盤、3939BOX共通)
- LOVE SCREAM PARTY (Rebirth Version)
- R.P.G. ~Rockin' Playing Game
- gr8 story
- ☆ギミギミ☆
- Crazy Bunny Coaster
- Vi-Vi-Vi (Rebirth Version)
- 無条件幸福論
- 美空
- Howling Magic
- Pastel Horror Yum Yum Show
- sweeToxic
- mad$hip
- Toy Soldier
- 小悪魔Sparkling
- 不完全Beautyfool Days
- dot. 0
- 39GalaxyZ (album mix)
DISC 2収録曲(3939BOXのみ)
- don't stop da music
- #9 garbage
- ID fudge factor
- fat inside horror
- SWEET COUNT DOWN
- きらきら
- 夏音 -kanon-
- milk tune.
- 契約彼女、生贄彼氏
- Five Starz ~五枚目俳優~
- 16bit HERO3
- G☆E☆T☆G
- Boom Boom Neat
- キニシィヤンキーズ
- NO OUT NO LIFE
- ときどきすてきなこのせかい
3939BOX付属DVD収録内容
「SuG公式ブートレグ!?」
- 過去ツアー時の記録用に収録したライブ映像
- 未発表ドキュメント映像
「ミュージッククリップ集」全16曲(約60分)
SuG(さぐ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。同年4月にメジャー3rdアルバム「Lollipop Kingdom」を発売。同作に伴う全国ツアーではアルバムを曲順通りに演奏し、ファンを驚かせた。9月にニューシングル「sweeToxic」をリリースするも、翌10月に突然の活動休止を発表。同年12月末の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止したほか、所属事務所PS COMPANYから離籍した。2013年3月に初のベストアルバム「BEST 2010-2013」をリリース。