ナタリー PowerPush - SuG
マネージャー証言&年表で振り返るメジャー3年間の軌跡
武瑠は何も知らずに物事が進むことがつらいと思ってた
──SuG、特に武瑠さんと何度かお話して思ったんですが、常に1年先、あるいはもっと先のことを考えていて、そこに向けてどんどん準備をしていく感じが、バンドマンというより会社の経営者という印象を受けました。
そうなんですよね。彼はバンドをやらなかったら、ちゃんと真面目に勉強していい大学に行って、広告代理店とかで働けばよかったんですよ(笑)。
──確かに。プランナーとしても敏腕で、相当活躍したんじゃないでしょうか。
彼は曲作り以外の、例えばビジュアル面や衣装にもアイデアを出してくるし、企画書にそれが入ってるし。チームで話してるときに、誰かが言った内容に対してさらに肉付けしてくことも多いし。まあブランド(million $ orchestra)を始めたのも全部そういうところからの延長線上ですね。
──メンバーが着てる衣装がオリジナルブランドで販売されていたら、ファンなら欲しがると思いますし。
で、その収益でさらに新しい作品の予算が増えてクオリティをあげた作品を作ることができる。そこまで考えてるんですよね(笑)。
──人によっては生々しい話と感じるかもしれないけど、そこまで考えられること自体がすごいと思います。
彼自身、何も知らずに物事が進むことが個人的につらいと思ってたんですよ。よくあるじゃないですか、「PVでこういうのを撮りたい」って言っても「予算がないからできない」って返されることが。そこで武瑠は「じゃあ、これを撮るには予算がいくらあったらどこまでできるのか教えてほしい」と聞き返すわけです。それが発展して、最終的に自分でPVの監督をしちゃったという。
武瑠はバンドをやったことで全部夢を叶えてる
──自己プロデュースするアーティストはたくさんいますが、武瑠さんの場合は制作のみならずビジネス面、運営面にも目が行き届いていたと。
変わってますよね。あんまりバンドマン気質じゃないのかも。昔から取材でよく「もともとボーカルをやりたくて始めたわけではない」とかも言ってたし。本人は最初は映画を撮りたかったらしくて、もしSuGを辞めたらカメラマンになるみたいなことも言ってたようですし。本を読むのも昔からすごく好きで、小説家にもなりたいと言ってたり。でも結局、バンドをやったことで全部夢を叶えてるんですよね。映画を撮る代わりにPVを撮って、歌詞を書く一環として小説も書いたし。自分のやりたいことに対して貪欲なんでしょうね。
──限られた時間の中でそれをちゃんと実現させてるのもすごいことですし。
だから寝不足が続いて、しょっちゅう体調崩してましたよ。苦しみながらやってたなあって。しかも、そこにほかのメンバーがちゃんとついていくからすごい。誰も文句を言わないんです。1人くらい「こんなの違うよ!」って言わないのかなと思って(笑)。
──その信頼関係はどうやって生まれたものなんでしょうね。野村さんがバンドに付いたタイミングから、そのバンド間の関係は成り立ってたんですか?
たぶん自分が付く前から、それこそインディーズの初期の頃からずっと武瑠がこういう曲を作りたいとメンバーに呼びかけてやってきたらしくて。メンバーが信頼して武瑠に世界観的な部分を委ねてる部分もあるからうまくやっていけたのかな。で、武瑠も自分がほかのメンバーよりいい曲を作れないと少し思っていて、曲作りに関してはメンバーを信頼してお任せしていたところもあったし。
マニフェスト企画はCDを買ったおまけ
──SuGはプロモーションでもいろいろ面白いことをやってきましたよね。例えばリリースのたびにいろんなマニフェスト企画を展開してきました(参照:SuG、新曲オリコン1位でファンの「ホッペにチュー」公約 / SuGマニフェスト実行!ファン5000人をハグしまくり / 1位になったらファンにキス!SuGシングル&武瑠処女小説 / SuGがニコ生CD即売会、1万枚超えたら球場ライブ開催)。ここまでストレートにやるアーティストも珍しいと思いますし、このへんについて実は次回のインタビューで武瑠さんに聞こうと思ってたところだったんです。
このほかにもインストアイベントに「SuGに会うなら今じゃね?」とか「春のSuG祭り」とか変な名前をいっぱい付けていて。実はそういうのは全部ポニーキャニオンの当時の宣伝担当と自分が悪ノリしてやってただけです(笑)。マニフェストにしても、当時マニフェストって言葉が世間的に流行ってたので、ただそれに便乗したかったのと、まあいやらしい話で言えばメーカーと自分が数字(売上枚数)を上げたかった。中にはメンバーが嫌だっていう企画もあったんですけどいろいろ説得して、実際にやってみたら楽しんでもらえたようです。ギターのyujiをフィーチャーした「yujiのハーレムナイト」っていうイベントも大阪と東京で2回だけやったんですけど、yujiをオールバックにして、わざわざ借りてきたヒョウ柄のスーツを着させてしゃべらせただけという(笑)。
──武瑠さんもとにかくいろんなところに曲が届いてほしいと言っていたし、そこに届かせるきっかけ作りとしてはかなり話題になったと思います。
まあCDを買ったおまけみたいな感じで、基本イベントは悪ノリです。それでお客さんが楽しんでくれればいいよね、みたいな。真面目な話は雑誌やWEBのインタビューを読めばいいわけですし。実際トークイベントで真面目な話をしてもシーンとなるので、だったらヴィジュアル系の人たちが「叩いてかぶってジャンケンポン」をしたほうが面白いですよね(笑)。
- ベストアルバム「BEST 2010-2012」 / 2013年3月6日発売 / ポニーキャニオン
- 完全限定生産盤/3939BOX [2CD+2DVD+ブックレット] / 8800円 / PCCA-03805
- 完全限定生産盤/3939BOX
- 通常盤 [CD] / 3000円 /PCCA-03806
- 通常盤
DISC 1収録曲(通常盤、3939BOX共通)
- LOVE SCREAM PARTY (Rebirth Version)
- R.P.G. ~Rockin' Playing Game
- gr8 story
- ☆ギミギミ☆
- Crazy Bunny Coaster
- Vi-Vi-Vi (Rebirth Version)
- 無条件幸福論
- 美空
- Howling Magic
- Pastel Horror Yum Yum Show
- sweeToxic
- mad$hip
- Toy Soldier
- 小悪魔Sparkling
- 不完全Beautyfool Days
- dot. 0
- 39GalaxyZ (album mix)
DISC 2収録曲(3939BOXのみ)
- don't stop da music
- #9 garbage
- ID fudge factor
- fat inside horror
- SWEET COUNT DOWN
- きらきら
- 夏音 -kanon-
- milk tune.
- 契約彼女、生贄彼氏
- Five Starz ~五枚目俳優~
- 16bit HERO3
- G☆E☆T☆G
- Boom Boom Neat
- キニシィヤンキーズ
- NO OUT NO LIFE
- ときどきすてきなこのせかい
3939BOX付属DVD収録内容
「SuG公式ブートレグ!?」
- 過去ツアー時の記録用に収録したライブ映像
- 未発表ドキュメント映像
「ミュージッククリップ集」全16曲(約60分)
SuG(さぐ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。同年4月にメジャー3rdアルバム「Lollipop Kingdom」を発売。同作に伴う全国ツアーではアルバムを曲順通りに演奏し、ファンを驚かせた。9月にニューシングル「sweeToxic」をリリースするも、翌10月に突然の活動休止を発表。同年12月末の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止したほか、所属事務所PS COMPANYから離籍した。2013年3月に初のベストアルバム「BEST 2010-2013」をリリース。