ナタリー PowerPush - SuG

マネージャー証言&年表で振り返るメジャー3年間の軌跡

現在活動休止中のSuG初のベストアルバム「BEST 2010-2012」がリリースされた。本作には2010年1月のメジャーデビューシングル「gr8 story」から、現時点での最新作となる昨年9月のシングル「sweeToxic」までの代表曲を網羅。初回限定盤にはシングルのカップリング曲を集めたボーナスディスクや、秘蔵映像やPVをまとめた2枚のDVDが付き、SuGのメジャー3年間の足跡をたどるのに最適な作品集となっている。

今回ナタリーではSuGの活動を振り返るべく特集記事を企画。3年以上にわたりバンドを見守ってきたPS COMPANYの野村尚樹マネージャーへのインタビューと、バンド結成から活動休止までの歴史をまとめた年表を掲載する。

取材・文 / 西廣智一

PART 1 : SuGマネージャー野村尚樹(PS COMPANY)インタビュー

メジャーデビューをファンからのメールで知った

──野村さんはいつからSuGのマネージャーになったんですか?

SuG(「SuG TOUR 2010『TOKYO MUZiCAL HOTEL』」より)

2009年の9月1日からです。ちょうど前のドラムが抜けて、ポニーキャニオンさんとメジャー移籍の話が進みつつあった頃、インディーズ時代から付いていたマネージャーが外れてしまって、そこに自分が突然ポンと入った感じですね。で、ドラムのshinpeiが9月3日の高田馬場AREA公演で加入を発表して。だから僕のほうが2日間くらい先輩なんですよね(笑)。とはいいつつ、shinpeiはサポートもしてたし、ボーカルの武瑠と10年くらいの付き合いなんで、彼のほうがバンドにいち早くなじんでましたけど。

──マネージャーになって4カ月後にはメジャーデビューだったんですね。マネージャーになった頃、メンバーの皆さんはメジャーデビューすることは知っていたんですか?

まだぜんぜん知らせてなかったんですよ。しかも本人たちが知ったのは事務所からじゃなくて、ネットを通じてファンや別の関係者から得た情報がもとで。「なんかファンからいろいろメールが来るんだけど」とか言って(笑)。

──えっ、そうだったんですか!?

その頃は水面下でメジャーデビューに向けて動いてた頃で、メンバーは「まあ来年くらいにはデビューできるかな?」くらいにしか思ってなかったんじゃないですかね。で、実際に本人たちに知らせたのが10月下旬。そこからレコーディングをして、PVを撮影してとバタバタでした。公式には11月30日にメンバーが発表したんですよ(参照:SuG、主催イベントでメジャーデビュー決定を報告)。

──そんなエピソードがあったんですね。

メジャーデビューシングル「gr8 story」のPVでの、自分たちがメジャーデビューすることを新聞で知るっていう最後のオチは実体験がもとになってるんです。

曲作りは武瑠の企画書をもとにメンバーでコンペ

──SuGはメジャーデビューから活動休止までの3年間、ビジュアルもサウンドも常に変化を繰り返してましたよね。

SuGはジャンルがよくわからないんですよね、音楽の。いわゆるヴィジュアル系っぽいのもあれば普通にポップスとして通用する曲、ヒップホップみたいな曲もある。メンバーがそのときそのときハマッてるジャンルからの影響が強いんです。

──SuGの曲ってめちゃめちゃツーバス踏んでる激しいアレンジなのにメロディはポップだったり、メタルやソウル、ヒップホップ、ダブステップなど、1曲の中にいろんな要素が詰め込まれていて「こういうジャンルです」と一概には言いにくい。今回のベストアルバムを聴いて改めて「SuGの音楽」としか言えないなと思いました。

シングルを何月くらいに出しましょうって話が上がったら、それに対して武瑠が企画書を作るところから始まり、メンバー全員がそこに向けて曲作りをするんです。そこがバンドとしてはまず不思議なところなんですけど。実はこの曲が何カ月後かに出るアルバムの中身の一部で、最初から流れを全部作ってあって、それに対してこういう物語の曲を作ってきてくださいってメンバーに発注するんですよ。とにかく第一前提として「メロディがいい」というのがあって、基本的にシングルの表題曲はキャッチーなものにするのがルールなんです。

武瑠(「SuG TOUR 2010『TOKYO MUZiCAL HOTEL』」より)

──メンバー全員が持ち寄った曲の中から、一番ストーリーにピッタリなものを選ぶと。

そうです。だから常に楽曲コンペをしてる感じでしたね。シングル表題曲に対して、各メンバーが5曲くらい用意してくるので。ギターのyujiに関してはその倍くらい持ってきますし。で、そこから漏れた曲がアルバムに入ったりすることもある。「gr8 story」を出す時点で「小悪魔Sparkling」と「R.P.G.~Rockin' Playing Game」はできてましたから。ほぼ同時期にレコーディングしてたかな。

──「小悪魔Sparkling」は2010年6月発売、「R.P.G.~Rockin' Playing Game」は9月発売ですから、かなり先に発表する作品ができてた感じなんですね。で、これらの曲が次のアルバムにつながっていくわけですが。

「小悪魔Sparkling」のときには、メジャーデビューした翌年の2011年3月に次のアルバム(メジャー2ndアルバム「Thrill Ride Pirates」)を出すことまでほぼ決まってました。海賊船がテーマのストーリーを作るって。そのアルバムに向けてシングルを2、3枚出そうかなっていう話も上がってましたよ。

ベストアルバム「BEST 2010-2012」 / 2013年3月6日発売 / ポニーキャニオン
完全限定生産盤/3939BOX [2CD+2DVD+ブックレット] / 8800円 / PCCA-03805
完全限定生産盤/3939BOX
通常盤 [CD] / 3000円 /PCCA-03806
通常盤
DISC 1収録曲(通常盤、3939BOX共通)
  1. LOVE SCREAM PARTY (Rebirth Version)
  2. R.P.G. ~Rockin' Playing Game
  3. gr8 story
  4. ☆ギミギミ☆
  5. Crazy Bunny Coaster
  6. Vi-Vi-Vi (Rebirth Version)
  7. 無条件幸福論
  8. 美空
  9. Howling Magic
  10. Pastel Horror Yum Yum Show
  11. sweeToxic
  12. mad$hip
  13. Toy Soldier
  14. 小悪魔Sparkling
  15. 不完全Beautyfool Days
  16. dot. 0
  17. 39GalaxyZ (album mix)
DISC 2収録曲(3939BOXのみ)
  1. don't stop da music
  2. #9 garbage
  3. ID fudge factor
  4. fat inside horror
  5. SWEET COUNT DOWN
  6. きらきら
  7. 夏音 -kanon-
  8. milk tune.
  9. 契約彼女、生贄彼氏
  10. Five Starz ~五枚目俳優~
  11. 16bit HERO3
  12. G☆E☆T☆G
  13. Boom Boom Neat
  14. キニシィヤンキーズ
  15. NO OUT NO LIFE
  16. ときどきすてきなこのせかい
3939BOX付属DVD収録内容
「SuG公式ブートレグ!?」
  • 過去ツアー時の記録用に収録したライブ映像
  • 未発表ドキュメント映像
「ミュージッククリップ集」全16曲(約60分)
SuG(さぐ)

2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。同年4月にメジャー3rdアルバム「Lollipop Kingdom」を発売。同作に伴う全国ツアーではアルバムを曲順通りに演奏し、ファンを驚かせた。9月にニューシングル「sweeToxic」をリリースするも、翌10月に突然の活動休止を発表。同年12月末の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止したほか、所属事務所PS COMPANYから離籍した。2013年3月に初のベストアルバム「BEST 2010-2013」をリリース。