菅田将暉×Creepy Nuts|ANNで仲深めた2組が初対談、“COLLAGE”された菅田将暉の歌声の魅力とは (3/3)

今からでも入れたほうがいいっすよ!

R-指定 「COLLAGE」というアルバムタイトルは、言い得て妙ですよね。収録曲にいろいろなドラマや映画、アニメのタイアップが付いていて、1曲ごとにそれぞれ違うストーリーがある。普通に考えたら1人のアーティストがいろんな曲を歌っているということだけど、菅田さんの場合はまるで違う人が違うストーリーについて話をしているような感じがしたんですよ。全部菅田さんではあるんですけど、違う役柄になって歌っているというか。それが1つになっているからこそ「COLLAGE」というタイトルなんだなと。俺はずっとヒップホップのアルバムを聴いてきたので、1人の人間がそのときどきの話をしている曲がズラッと並んでいるものに親しみがあったんですけど、「COLLAGE」はいろんな物語で形になっている感じがすごくある。今までこういう作品は世の中にあったんですかね?

DJ 松永 作ろうと思って作れる感じではないですよね。あんまり聴いたことがないタイプのアルバムだと思いますよ。

DJ 松永

DJ 松永

菅田 コロナ禍だったというのも大きいと思うんです。2年間で作った曲をまとめたけど、1日の出来事くらいの凝縮感があると自分では思っています。

R-指定 現代のコロナ禍においての菅田将暉やからできるというか、1曲1曲に違う髪型、違う姿の菅田さんが主人公として浮かんでくる。今まさに活躍してる菅田さんだからこその雰囲気をまとったアルバムになったんじゃないかと思いますね。

菅田 俺らの関係がラジオ発信だったのもよかったですよね。

DJ 松永 それはそう。すごく気持ちいい流れでここまで来た感じがある。振り返れば必然的だったとも思うし。

菅田 振り返ると、一緒に曲を作ることになったあとに松永さんがDJで世界1位になったのもよく覚えてます(参照:DJ 松永「DMC」優勝で世界一のDJに)。

DJ 松永 確かに一緒に曲作ってるタイミングだったわ!

菅田 松永さんがDJとして世界的に認められて、日本でもCreepy Nutsがバーン!と売れていくのを見て、俺は「ほれ見たことか」という気持ちに勝手になってましたよ。うちのおばあちゃんがオリンピックの閉会式に出ていた松永さんを指差して「この人はなんの人なの?」って聞いてきたんですよ。だから「世界1位になった人で、一緒に作った曲があるんだよ」って説明して。「あんた世界1位の人とやったの!?」って驚いてましたよ。

DJ 松永 うれしいっすね。おばあちゃんに言われるなんて! でもやっぱりこのアルバムを聴いてもっと菅田さんと一緒にやりたいなと思っちゃいましたよ。例えばワンルームのダンスミュージックはまだないから一緒にやってみたいなとか、もっとバキバキの打ち込み系とか……。このアルバムを聴いたら、菅田将暉というボーカリストをもっと魅せたいと思った。「虹」がよすぎるのよ! だから悔しい!

R-指定 俺は菅田さんにラップを1人でやってみてもらいたい。菅田さんが家で録った「サントラ」で、俺のパートもやってたじゃないですか。あれがよかったんですよ。

DJ 松永 あれ、今からでも入れたほうがいいっすよ! さすがに遅いか?

R-指定 もう遅い(笑)。

菅田 「サントラ」をギター弾き語りでやってみたやつですよね? ライブで1人でどうやれるかなと試している中で、単純にBPMを落とせば歌いやすくなるかなと思ったけど、そんなことはなくて。ラップの技術は計り知れないなと思いました。

R-指定 あれはモノにしてましたよ。パッと夜中に送られてきて、よすぎて引いたわ(笑)。

DJ 松永 お世辞抜きで超よかった! あれ絶対今回のアルバムに入れたほうがいいと思いますよ。

菅田 いや、もう入れられないんだって(笑)。

DJ 松永 マジでもったいないよ。弾き語りのバージョンは、メロディを付けてくれたのがよかったんだよね。解釈として100点だった。俺とRしか聴いてないなんてもったいない。

R-指定 俺、あれ聴いて、菅田さんにがっつりラップしてほしいと思ったんですよ。レコーディングで「速くてムズい」って言いながらラップも挑戦してましたけど、あのあと何回かやって普通に乗りこなしてたし。そんなにすぐにモノにできるなら、ぜひ難しいラップにも挑戦してもらいたいですね。普段ラップをやってない人がラップをすると、なんか変になっちゃうことが多いんです。

DJ 松永 ラップに慣れてない人がラップをカバーすると、自分の引き出しにない発声とか言葉を出すからどこかに照れがあって、“ザ・ラップ”って感じのやり方をしちゃうんですよね。

R-指定 ラップはある意味でエゴというか、自分勝手な方法なんですよ。ラップはするやつの生き様が出るとよく言いますけど、例えば体調や喉の具合、音楽に対する解釈……それが不調だったり違っていたりしても、それはそれでカッコよさになり得るんです。その逆もあって、ハマらないと本当にうまくいかない。菅田さんは「サントラ」のラップパートを歌いやすいメロディにアレンジしていて、それが素晴らしかったんです。菅田さんにしかできないラップというか。

菅田 ありがとうございます。そういえば昔、飲料製品のCMでPUNPEEさんがラップを作ってくれてレコーディングしたんですけど、鬼ムズくて。「カブーンと果汁」って始まるんですけど、「カブーンって何?」ってところから「カブーン」だけでも3、4時間かかっちゃって。レコーディングブースの中にPUNPEEさんも一緒に入って教えてくれてたんですけど、全然できなかったんです。

DJ 松永 あの人の言葉の崩し方は独特ですよね。

R-指定 そうそう。PUNPEEさんのラップのムズさは特にエグい。彼の口の中の作り的にやりやすいようにしてるはずだし。

DJ 松永 だからラップの「歌ってみた」はなかなかスッと入ってこないんですよ。

菅田 歌の「歌ってみた」は自分の気持ちいいところで歌うけど、ラップにおいてはその方法を知らないでやっている人が多いということですね。オリジナルの節回しが強烈に残ってるから引っ張られるんでしょうね。歌よりもニュアンス的な部分が細かくあるし。

DJ 松永 それを再現しないとってなりますもんね。

R-指定 そう。ラップも本来は自分がやりやすいようにやったほうがいいんですけどね。

DJ 松永 まあでもとにかく! 「サントラ」の菅田さん弾き語りバージョンは世に出したほうがいいよ!

菅田 練習してうまくいったらライブでやってみますね(笑)。

菅田将暉とCreepy Nuts。

菅田将暉とCreepy Nuts。

菅田将暉とCreepy Nuts。

菅田将暉とCreepy Nuts。

20年後くらいにCreepy Nutsを題材にしたサブカル映画ができるかも

──このアルバムは1つの集大成的な作品だと思うんですけど、菅田さんがここから新しく挑戦したいことはありますか?

菅田 アルバムの取材でそう言っていただくことが多くて、確かに集大成のようだなと思ったところですね(笑)。さっき重たい曲が多いと話しましたが、自分のやりたいこと、歌いたいことを歌ってきて、ようやくちょっとだけ踊れたり、聴いていて気分がよくなれたりするような、軽い雰囲気の曲を歌う準備ができたと自分では思っています。

DJ 松永 その流れ、Rと似てない?

R-指定 めっちゃ一緒! 俺らも自分たちからから見えた世界についてずっと歌ってきて、やっと自分たち以外の人の目を通した世界というか、自分らとは関係ないことや意味を持たないような曲も歌えるようになってきたんですよ。

菅田 わかるー!

DJ 松永 菅田さんの感覚と同じようなことを、俺らも年末くらいからずっと話していて。けっこう深刻にそういう話をしたよね。

R-指定 身を削って生み出した作品は、破壊力があるんですけどね。もっと軽やかな曲もぜひ聴きたいです。

菅田 俺、「今夜はブギー・バック」みたいな、あれくらいの軽やかさがある曲をやってみたいんですよ。めっちゃよくて、あれを聴くと悔しくなります。

R-指定 すべてのラッパーが悔しがっている“ブギー・バック問題”ね。遊びのノリで書いてできた曲があれだけの名曲になったという。

DJ 松永 あれは完全に“ノリ”の曲だもんね。「ブギー・バック」と言えば、4、5年前に菅田さんの奥さんが出てたBEAMSの広告(参照:森高、野宮、戸川純、しゃち、YONCEら17組が歌う「今夜はブギー・バック」)がめちゃくちゃよかったなって。

菅田 あれも嫉妬するタイプのよさですよね。ああいう理屈抜きでカッコいいやつを俺もやってみたい。

R-指定 あの企画に「今夜はブギー・バック」が採用されたのは、この曲がいわゆるサブカル好きな人間たちのテーマソングになっていたからだと思うんですよ。それも各世代の。だからこそ当時のサブカル界隈のド先端を集めて作った集大成的な映画「モテキ」(2011年公開)のエンディングでも流れるわけで。

DJ 松永 あれってナタリー編集部がモデルなんですよ。

菅田 松永さん、さすが(笑)。

R-指定 当時のサブカル最先端が「モテキ」だったとして、それの現代版が「花束みたいな恋をした」(2021年にヒットした菅田将暉と有村架純のダブル主演映画)だと思っていて。ちょっと方向性は違いますけど、広い世代のサブカル好きに刺さる要素が菅田さんと有村さんが演じるカップルの会話から次々と出てきて、わかる人にはたまらん、みたいな。2人のストーリーももちろん素敵なんですけど、そこで派生したサブカル的な要素も話題になってジワジワ広がっていく感じは「モテキ」がヒットしたときとすごく似ていたと思う。

DJ 松永 確かにそうだね。

菅田 サブカルとの距離感は確かに似てるかも。

R-指定 そうそう。

菅田 俺、テレビCMとか番組のタイアップ曲で最近一番よく聴くのがCreepy Nutsだと思ってるんですけど、最近はやっぱり忙しいですか?

DJ 松永 今、タイアップ曲を5曲同時進行で作ってる(笑)。

菅田 ということは、20年後くらいにCreepy Nutsを題材にしたサブカル映画ができるかも(笑)。

DJ 松永 それちょっと今思ったわ(笑)。もしそんな映画ができたら「サントラ」をサントラとして使いたい。というか、菅田さんが出演する映画の主題歌やサントラを作りたいですね。そのときはお互いの持ち場を全力でやれたら。それができたら超アツいと思いません?

菅田 うん。それは超アツい。実現させたいですね。

菅田将暉とCreepy Nuts。

菅田将暉とCreepy Nuts。

菅田将暉イベント情報

菅田将暉 LIVE STREAMING VOL.2

  • 2022年3月20日(日)20:00~

プロフィール

菅田将暉(スダマサキ)

1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に「仮面ライダーW」で連続テレビドラマ初出演にして初主演を飾る。主演を務めた2017年公開作「あゝ、荒野」では第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめとする数々の映画賞に輝いた。主な映画出演作は「溺れるナイフ」「キセキ ーあの日のソビトー」「銀魂」シリーズ、「火花」「帝一の國」「生きてるだけで、愛。」「アルキメデスの大戦」「花束みたいな恋をした」など。2017年6月に「見たこともない景色」でCDデビュー。2018年3月にアルバム「PLAY」を発表した。2019年7月には、盟友の米津玄師が作詞・作曲・プロデュースを手がけた楽曲「まちがいさがし」やあいみょんとのコラボ曲「キスだけで feat. あいみょん」を収録した2ndアルバム「LOVE」をリリース。2020年11月に発表した映画「STAND BY ME ドラえもん 2」の主題歌「虹」は、ストリーミング再生2億回を突破するなど大ヒット曲となった。2022年3月にアルバム「COLLAGE」をリリース。同年3月20日には自身2回目となるオンラインライブ「菅田将暉 LIVE STREAMING VOL.2」を開催する。またフジテレビ系ドラマ「ミステリと言う勿れ」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演中。

Creepy Nuts(クリーピーナッツ)

MCバトル「ULTIMATE MC BATTLE」大阪大会で5連覇、「UMB GRAND CHAMPIONSHIP」で3連覇を成し遂げた経歴を持つ大阪出身のラッパー・R-指定と、DJの世界大会「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP FINALS 2019」バトル部門で優勝した新潟出身のDJ 松永によるユニット。2017年11月にソニー・ミュージックエンタテインメントよりメジャーデビューシングル「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」をリリース。2020年8月にアルバム「かつて天才だった俺たちへ」を発表し、11月には初の東京・日本武道館公演を2日間にわたって行いチケットは両日即日ソールドアウトとなった。2021年3月に「顔役」「バレる!」、4月に映画「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」の主題歌「Who am I」を配信リリース。9月に2ndフルアルバム「Case」を発表した。メディアミックス作品「ヒプノシスマイク」や菅田将暉、木村拓哉といったアーティストへの楽曲提供も行っているほか、CMやバラエティ、ドラマ、ラジオに執筆業など、多方面に活動の幅を拡大中。2022年3月に兵庫・阪神甲子園球場で行われる「第94回選抜高校野球大会」の毎日放送公式テーマソングを書き下ろし提供する。