菅田将暉のニューアルバム「菅田将暉 2020-21 SONGS『COLLAGE』」が3月9日にリリースされた。
「COLLAGE」は2020年から2021年までに発表された8曲が収録されたアルバム。ストリーミング2億回再生を突破した大ヒット曲「虹」をはじめ、日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ「君と世界が終わる日に」の主題歌「星を仰ぐ」、TBS系日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」の主題歌「ラストシーン」、OKAMOTO'Sとのコラボ曲「Keep On Running」、中村倫也と歌った「サンキュー神様」、RADWIMPSとのコラボ曲「うたかた歌」、石崎ひゅーいとのコラボ曲「糸」、そしてCreepy Nutsとのコラボ曲「サントラ」が収められている。
本作のリリースを記念して音楽ナタリーでは、ニッポン放送「オールナイトニッポン」でそれぞれ番組を持つ菅田とCreepy Nutsの対談を企画した。2019年8月放送の「菅田将暉のオールナイトニッポン」にCreepy Nutsがゲスト出演したことをきっかけにコラボ曲を発表した2組。「ANN」で同世代の表現者として意気投合した彼らは、コラボ曲制作のみならず、テレビ朝日系音楽番組「ミュージックステーション」への出演も果たした。そんな2組はラジオやイベントでの共演はあったものの、腰を据えて対談を行うのはこれが初めて。「COLLAGE」を聴いたCreepy Nutsが菅田のボーカリストとしての魅力に迫る。
取材・文 / 清本千尋撮影 / YURIE PEPE
“いい声”はそれだけで道筋になるんです
菅田将暉 2人ともお忙しい中来ていただいてすみません。Creepy Nutsは、よしもとの芸人さんみたいなスケジュールで動いてますよね。
DJ 松永(Creepy Nuts) よしもとの方って分刻みのスケジュールで動いてますよね。
R-指定(Creepy Nuts) すごいよな。
DJ 松永 僕らはそんなことないですよ(笑)。実は俺、菅田さんと話したいことがたくさんあったんです。
菅田 何かあれば連絡を取り合うけど、こうしてゆっくり話す機会もなかったですもんね。
DJ 松永 そうそう。で、さっそくですけど、アルバムに入っている8曲のうち、共作曲は俺らとの「サントラ」が一番古い曲ですよね? トラックリストを見たときに「収録されてるコラボ曲の中で俺らが一番早く曲を完成させたー!」と思ったんですよ。
菅田 確かに!
DJ 松永 このアルバムを聴いて菅田さんは、人から提供された曲を歌うだけの人じゃないなと改めて思ったんですよ。シチュエーションや登場人物……その曲の物語を菅田さんが自分の中に降ろして歌っているのが伝わってくるんです。それってもしかすると菅田さんの俳優の技量と通じてるところもあるんじゃないかなと。しっかり感情を込めて歌ってくれるからシチュエーションがすごく伝わってくるし、有機的なんですよ。
菅田 それはいいことなんですかね? 俺の曲には、何も考えずに気持ちよく聴けるものがないなと思って。
DJ 松永 あー、言われてみれば重たい曲が多いかも。「COLLAGE」の中で一番軽快な感じがするのはOKAMOTO'Sとの「Keep On Running」ですかね。若者視点というか、一番青臭い感じで、さわやかに聴ける曲。
菅田 軽快な感じの曲も、俺が歌うとなんか重くなっちゃって。技術的なものなんですかね?
DJ 松永 いやいや、それは強みだからそのままのほうが絶対いいと思う。菅田さんの俳優としての技量がリンクしてそうなっているし、菅田さんの曲の魅力は唯一無二な声だと思うし。マジでいい声してますよ。
菅田 松永さん的に、声の良し悪しってどういうものですか?
DJ 松永 モノづくり全般に言えることなんですけど、いいものを作るためには技術を磨いたり、試行錯誤をしたり、いろいろな道筋がある。でも“いい声”はそれだけで道筋になるんです。菅田さんの持っている声は理屈抜きでいい声。華のある声なんですよ。
菅田 梅田サイファーの皆さんの「THE FIRST TAKE」を観たときに、人数がこれだけいてもRさんの声は前に出ているなと思ったんですけど、いい声ってそういうことなんですかね? KOPERUさんの声もいいなと思って、いろいろ検索しちゃいました。
DJ 松永 そうそう。まさにそういうこと。俺がアーティストをプロデュースするとしたら、絶対に技量よりも声を重視して考えます。技術は学べるし練習である程度は向上する。それにパソコンで補正もできるけれど、ベースとなる声はやっぱり変えられない。だからこそボーカリストにとって一番大事なものは声なんです。最近木村拓哉さんに楽曲提供させていただいて、デモに声を乗せてもらったものを聴いたら、もうね、声が発光してた。声だけで持っていけちゃうんですよ。華がすごい! マジで木村さんの声発光してたじゃん?
R-指定 してた(笑)。俺は菅田さんの歌声を初めて聴いたときに、映画やドラマに出ているときとも、ラジオでしゃべってるときともリンクしていると思ったんです。お芝居やラジオでの菅田さんの声は親近感があるのに華がある声で、それは歌声に感じる魅力ともリンクしているなって。雲の上の神様のような歌声というよりかは、近くにいる感じ。松永が言っているように、いい声って光っている感じがホンマにするんですよ。菅田さんの場合は、人懐っこさと、とんでもないオーラが共存している。それが菅田さんの声の特別なところだと思います。
未完成のプロレスが芸術になっているみたいに感じる
DJ 松永 「COLLAGE」をバーっと聴くと、知っている曲がどんどん出てくるんですけど、中でも「虹」が本当にいい曲だなと改めて思いました。
菅田 俺もそう思いました。「虹」は、なんかすごいなって。
DJ 松永 俺、「虹」を聴いて「菅田将暉主演で映画撮りてえ」と思う監督の気持ちがわかりました(笑)。
菅田 どういうこと?(笑)
DJ 松永 「俺らだってもっといい菅田さんを引き出せますよ。やれますけど?」ってマジで嫉妬した(笑)。「クッソー! 石崎ひゅーい、いいな!」と思いましたね。
菅田 ひゅーいくんと会ったことありますか?
DJ 松永 まったく面識はないです。
菅田 ははは。会わせたら面白いことになりそう(笑)。
DJ 松永 石崎ひゅーい自身もめちゃくちゃすごいし、菅田さんとの相性もやっぱり抜群にいい。あと「うたかた歌」を聴いて「野田洋次郎マジでいい歌詞書くよな! クソ!」と思った(笑)。「人生跨ぎ」なんて言葉、普通は出てこないでしょ。みんなが知っている言葉を組み合わせた新しい言葉。
菅田 それはRさんも得意じゃないですか? よく聴かないと気付かないような面白い歌詞を入れてくる。
DJ 松永 そうそう、みんなが知っている言葉でね。俺は作詞においてそれが一番高度な技術だと思ってるんですよ。
菅田 この前、Rさんが(OKAMOTO'Sのオカモト)レイジくんと即興で曲を作って録る番組を観たんですよ。Rさんが手を震わせながらなんとかリリックを完成させてるのを見て、ものを生み出すつらさがヒシヒシと伝わってきました(笑)。
DJ 松永 そんなことやってたの?
R-指定 ABEMAの「The NIGHT」という番組で、レイジさんとおかもとえみさんが作ったビートに、サイプレス上野さんと一緒に半分フリースタイルみたいな感じでラップを乗せるという企画をやって。
DJ 松永 へえ。Rが手を震わせてがんばっているような姿、俺はあんまり見たことがない。菅田さんは俺らのそんな活動までチェックしてくれてるんですか?
菅田 それはたまたま観たんですよ。で、俺はそれの松永さんバージョンが見たくなった(笑)。Creepy Nutsが出演していた「情熱大陸」にもそういうシーンはあんまりなかったし(参照:「情熱大陸」がヒップホップ愛あふれるCreepy Nutsの魅力に迫る)。
DJ 松永 制作風景は恥ずかしいから人に見せたくないんですよ(笑)。「情熱大陸」のときもパソコンの画面を見せてるシーンは使わないでくれって言いましたから。プライドがあるというか、ある程度できあがった状態のものだけをみんなに聴かせたい。
菅田 アーティストの方はたぶん松永さんみたいな考えの人が多いじゃないですか。でもCreepy Nutsのラジオを聴くと、未完成のプロレスが芸術になっているみたいな、そんなふうに感じるんです。
DJ 松永 制作過程は見せないけど、人間としてダメなところは見せてますね(笑)。
菅田 そうそう(笑)。だからこその人懐っこさというか、それがみんなに愛される理由の1つだと思う。でもダメなところを見せるのって、ヒップホップのありのままを見せる文化とも違う気もして。
DJ 松永 従来のヒップホップだったらここまでのありのままは見せたくないってなるでしょうね。360°全部見せるんじゃなくて、見せる角度を決めている。“ありのまま”を選んでいるんですよ。
菅田 ありのままを選んでるって、いい言葉ですね。それで言うと、ラジオ関連の取材で「けっこう素ですよね?」って質問されるのめっちゃ困りません?
DJ 松永 わかる(笑)。素だけど、素をエンタテインメントに昇華してるから本当の素ではないんですよね。より素っぽく見せようとはしているけど。特に俺は自分のヤバい部分をラジオで出すじゃないですか。
菅田 それは“ヤバい”って自覚してないとできないからねっていう。
DJ 松永 そうそうそう! 一旦デフォルメしたものをもう1回自分に降ろしてやってる。でも、そういう前提でラジオを聴かれたら困るな(笑)。
R-指定 「そうやってんねや」って(笑)。
DJ 松永 完全に素だと思われると困る部分と言えば、ギャグでキレる流れがあってそれを真に受けられたときかな。「あの、これは深夜ラジオなんですけど……」って。本当に伝えたいことを伝えているときもあるけど、基本は1秒1秒楽しいラジオをやろうという思いで頭を回転させてしゃべってるから、ガチではキレてねえからって思うときもあるし、本当に素だったらきっと何もしゃべらない。
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